王妃になる事
「アリンス嬢、あなたは王妃がどんな生活を送っていると思っているのですか?」
「え? 毎日美味しいものを食べて好きに買い物をしたり好きな事を好きな時にできるんじゃないの?」
アリンス嬢の言葉を聞いて周りの人達は彼女は何を言っているんだとでも言いそうな顔をしている。
うん、俺も何を言ってるんだと思うよ、でもこれで彼女がとんでもない勘違いをしているという事がわかったので俺は彼女に言うのだった。
「王妃が好きな時に好きな事ができるわけないじゃないですか、ちゃんと仕事もしてますよ、おそらくアリンス嬢の母上がしている仕事量なんかと比べ物にならないくらいの量の仕事をしていますよ」
「え? お母様以上? だって王妃なんでしょ?」
アリンス嬢がそう言うと周りの人達もウィスト嬢も固まってるよ。
よほど理解できない何かを見ているって感じだな。
と言うよりアリンス嬢の喋り方が変わってるな、これってもしかして。
俺は気になったがそれよりもまずはアリンス嬢に王妃について話した方が良いと思い気になった部分は一旦置いて話す事にした。
「アリンス嬢、王妃の仕事量はかなりのものですよ、毎日毎日山のような書類を確認して的確な判断をしなければならないのですから、そうですね、例えるなら毎日寝る時間と食事の時間以外は勉強しているようなものですね」
「え?」
「さらにその寝る時間と食事の時間もただするだけではありません、食事一つでも常にマナーを覚えなければなりませんから、食事が運ばれる前はどのような姿勢で待てば良いのか、食事が運ばれて来た時にどのようにすれば良いのか、食事が配り終えられた後にどのようにして食事をすれば良いのか、食事前からでも王妃としての所作を求められます」
「え? え?」
「そして実際に食事をする時にもマナーが求められます、例えばどれから食べるのか、その料理はどれくらい食べたら次の料理を食べるのか、飲み物を飲むタイミングはどこなのか、話を振られた時食べている途中だった料理をどうするべきか、そして料理の食べ方も求められます、例えばスープを飲む時スプーンはどのように持ってどのようにスープを掬って口に入れれば良いのか、パンならどのような持ち方をしてどのような食べ方をすれば良いのか、肉料理は、魚料理は、サラダは、飲み物は、デザートはどのように食べれば良いのか、料理一つ一つにも王妃としてするべき所作が求められます」
「え? え? え?」
「さらに料理だけではなく日常生活にも王妃としての所作が求められます、例えば朝、目が覚めた時にはどのように起き上がるか、侍女達に着替えなど身だしなみを整えてもらっている時にどのようにしているのか、出会った者達に対してどのように挨拶をするのか、すれ違う者達にどう声を掛けるのか、移動する時にはどのような動きをするのかなど、他にもありますがこれらにも王妃としての所作が求められます、他にも他国の方との交流でも王妃としての所作が求められ、ってアリンス嬢、大丈夫ですか?」
あまりにもたくさんの事を聞いたのかアリンス嬢が頭をクラクラさせていた。
そこまでだとは思わなかったんだろうな。
「そもそも、アリンス嬢が王妃になるには圧倒的に学園での成績がダメじゃないですか?」
「え?」
「アリンス嬢って学園での成績下から数えた方が早いくらい悪いじゃないですか、王妃になるなら今から猛勉強して学園一位になるくらいの頭がなければ王妃なんて務まりませんよ? 王妃になるってそう言う事ですから」
「そうなの? そんなにしないといけないの? じゃあ、私には無理だよ」
アリンス嬢はがっくりと項垂れている。
さすがにここまで説明すれば少なくとも自分には王妃は無理だと言う事が理解できたみたいだ。
「アリンス嬢、さすがにご理解いただけたみたいですが、それで終わりってわけにはいかないんですよ」
「え?」
そう、ここから彼女はもっと大変な思いをする事になるんだよな。
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本日二話目の投稿です。
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