ジョルジュの奥さん 2
「あー、やっぱりごまかしきれなかったか」
「ごまかしきれるわけないだろ!! どう見ても十歳かそこらの女の子にしか見えないだろ!!」
エドウィンの言う通り、ジョルジュの奥さんのカホさんは見た目は十歳の女の子にしか見えないのだ。
まあ、これには理由があるけどな。
「エドウィン、ちゃんと説明する、カホさんは確かに見た目は十歳の女の子に見えるが本当にジョルジュの奥さんなんだ」
「そんなわけあるか!! 十歳の女の子だぞ!!」
「エドウィン、信じられないかもしれないが、カホさんは見た目は十歳だが実年齢はジョルジュの一つ下なんだ」
「嘘つくな!!」
「嘘じゃないのじゃ、ほれ、この写真を見てみい」
そう言ってカホさんはエドウィンに写真を見せる。
写真にはジョルジュと一緒に老婆が写っていた。
「ジョルジュの隣にいるこの老婆が儂じゃよ」
「嘘だ!!」
「いえ、エドウィン様、本当なのです」
「そうだぞ、カホさんは本当にジョルジュの奥さんで本当に実年齢はジョルジュの一つ下なんだ」
「え? は?」
絶対に嘘だと思っているエドウィン。
しかし、カホさんもジョルジュもシルも俺と同じ事を言うので混乱している。
まあ、そうなるよな。
「エドウィン、落ち着いたか?」
「ああ、すまない」
少ししてエドウィンは落ち着く。
「さてと、儂が何故十歳の女の子の姿になったのかを説明しようかのう」
カホさんは自分の事についてエドウィンに説明するのだった。
「二年前くらいじゃったかな、儂はその時までは確かにジョルジュと同じくらいに歳を取っておったんじゃ、じゃが二年前身体が悪くなってな、いわゆる寿命というものが来たんじゃ、それから寝たきりでのう、外を歩く元気すら出ずにただ寝てばかりで日々を過ごす事が多くなったのじゃ、ジョルジュにも苦労を掛けてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいじゃった」
カホさんが暗い顔になるとジョルジュが優しくカホさんの肩に手を置くとカホさんもジョルジュの手を優しく掴む。
「特に一番辛かったのは、孫を悲しませている事じゃったな」
「孫?」
「二年前までは孫と一緒に三人でここに暮らしていたのです、孫の両親は幼い頃に事故で亡くなってしまわれまして、私とカホが育てる事にしたのです」
エドウィンの言葉に反応してジョルジュが答える。
「孫も儂がもう長くない事を頭では理解していたのかもしれんがいつも泣いておった」
確か二人の孫は今十二歳くらいだった気がするな。
だとしたら当時は十歳、幼い頃に両親を亡くして祖母であるカホさんまでいなくなってしまうかもしれないんだ、無理もない。
「そんなある日の事じゃ、いよいよ限界が来たんじゃ、儂の身体じゃからな儂自身がよくわかっておる、持って今日か明日までじゃと悟った、その時に孫が儂に薬を作ってくれたんじゃ、この家には薬の調合の仕方の本とかがあってのう、その本を読んで見よう見まねで作ったんじゃろう、孫はこれで元気になれると言ってくれてのう、じゃが素人が作った薬じゃ、効くわけないとわかっておったのじゃが、孫が儂のために作ってくれた薬じゃからな、何も言わずにその薬を飲んだのじゃ、その後孫は心配そうな顔をして儂を見てのう、儂はもう大丈夫、明日には元気になっとると、孫に嘘をついてしまったのじゃ、孫が悲しむ姿をこれ以上見たくないと思って、酷い嘘をついてしまったのじゃ」
そう言ってカホさんはまた暗い顔になる。
嘘をつくのは良くない事かもしれないが、中には誰かのためを思ってつく優しい嘘だってある。
カホさんが孫を思ってついた嘘を責める事なんて誰にもできないさ。
「それからジョルジュに孫の事を任せる事にしたんじゃ、先に行ってしまう事の謝罪とジョルジュを愛していた事と儂は幸せじゃったと感謝を伝えてのう、そしてその日の夜寝ていたんじゃが、妙に身体が熱くてのう、よく眠れなかったんじゃ、そして朝を迎えた時に妙に身体が軽くてのう、起き上がれて動ける事に驚いたのじゃ、そして顔を洗って鏡を見たんじゃ、そしたら、こうなっとったんじゃ」
カホさんは十歳の子供の姿になった自分を指差してそう言うのだった。
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