ジョルジュの奥さん
シェフィーネ王女の描いた絵を新たに解読した俺達。
それは海を越えた東の国、東国にある和食と呼ばれる料理の一つであった。
ジョルジュは奥さんに和食の一つである玉子焼きを食べさせたいと希望したのであった。
ジョルジュの奥さんは東国の生まれなので故郷の料理を食べさせたいと思ったのだろう。
東国の生まれの奥さんなら玉子焼きについてより具体的な意見も聞けると思うのでちょうど良いと思うし、俺はジョルジュの希望を叶えるために現在ジョルジュの家に来ていたのだった。
そしてジョルジュの家には俺とジョルジュ。
「そして、エドウィンとシルにも来ていただきました」
「誰に向かって言ってるんだ? ん? シル? シルって誰だ?」
「ああ、今まで言ってなかったが、二人きりの時に俺はシルフィスタの事をシルと呼んでるんだ」
「そうだったのか」
「ああ、でも俺がシルと言ってるのは陛下達も親父達もジョルジュ達も知ってるけどな」
「そうか」
「お前がいたから今までシルフィスタって呼んでたけど、何かもう色々疲れちゃってさ、お前一人だけだし別にお前なら知られても問題ないかなって思ってさ、今後お前の前でもシルフィスタの事をシルって呼ぶ事に決めたんだよ」
そう、色々疲れちゃったんだよ。
もうシルで良いだろ?
そっちの方が良いと思うんだよ、色々と。
そう、色々と。
「そんなわけでエドウィン、俺は今後お前がいてもシルって呼ぶ事にしたからそのつもりで」
「あ、ああ、まあ、婚約者だからな」
エドウィンはすんなりと受け入れてくれるのだった。
「それより、早く入らないのか?」
「そうでした、では皆様、我が家にお入りください」
シルに言われてジョルジュが家に招く。
「何だこれは? 随分変わった家だな」
エドウィンがジョルジュの家を見て言う。
「ああ、これはジョルジュの奥さんの生まれである東国の家を元に建てたんだ、東国だとこんな感じの家らしいんだ」
ジョルジュの家は普通の家とは違う。
ジョルジュの奥さんの生まれである東国の家を元に建てられた家である。
故郷には帰る事がない奥さんのためにせめて家は故郷の形にしようとジョルジュが希望した事で奥さんから聞いたり見てもらったりして家を建ててもらったんだが、東国の家がどんな感じなのかは当時は東国生まれのジョルジュの奥さんしか知らなかったし、それに材料も東国にはあった物がバハムスにはない物も多かったので何とか代わりになる材料を使って何とか東国の家っぽく作れたそうだ。
「皆様、こちらへ」
ジョルジュが家の扉を横に開ける。
「な、何だこの扉は」
エドウィンが横に開ける扉に驚く。
「東国の家ってこうやって横に開ける扉があるらしいんだ、俺達が知っている扉の家もあるけどな」
「私も最初この扉を見た時は驚いたものだ、掴む部分がどこにもないからどうやって開けるのかと思ったらまさか横に開けるなんて発想すらなかったな」
俺もシルと同じだよ。
まさか横に開ける扉がある家なんて考えた事もなかったな。
俺達は家に入るとジョルジュが靴を脱いで中に入る。
「東国の家は靴を脱いで入るのが基本なんだ、靴についた泥とかで床を汚さないようにだとか、神聖な場所として外からの穢れなどを持って来ないようにだとか色々言われてるらしいんだ、まあ実際この木でできた綺麗な床を見ると靴についた泥で汚すわけにもいかない気持ちになるかもな」
「なるほど、靴を脱いで家に上がるなんて初めてだな」
エドウィンは恐る恐る靴を脱いで家に上がる。
ジョルジュに案内された場所に俺達は座る。
「床に座るのか?」
またもやエドウィンは驚いている。
「ああ、東国だと椅子がある家もあるけど、こうやって床に座る家も多いんだ、この座布団とか言う柔らかいクッションを床に置いてそこに座るんだよ」
「東国って何か凄いな」
「こうやって、正座をして座るのが正しいらしいが、長時間していると足が痺れてしまうから、楽な状態で良いぞ、まあ、私も最初は痺れたりしていたが今では何時間でも正座など余裕だがな」
ふふーん、とでも言いたそうな顔でいるシル。
めちゃくちゃかわいいな。
シルは正座で座布団に座るが俺とエドウィンは正座ではなく足を崩して座るのだった。
「まさか、床に座る家があるなんてな」
「何なら寝るのも床だぞ、東国では布団と言うらしい、俺も床で寝た事があるがベッドとは違った新鮮な感じがして、意外と悪くなかったぞ」
「なるほど、東国はこっちとはまるで違う国なんだな」
そう、海を一つ越えただけで習慣も何もかも違う国がある。
世界は広いとはよく言ったものだ。
「皆様、お待たせしました」
「いらっしゃいなのじゃ」
ジョルジュの隣にいる女性が挨拶をする。
「カホさん、来たよ」
「おや、ケイ坊」
「カホさん、私もいるぞ」
「シルフィスタ姫も来ておったのか、久しぶりじゃのう」
俺とシルはジョルジュの奥さん、カホさんに挨拶をする。
「おや? お前さんは初めましてじゃな?」
「え、あ、はい」
「エドウィン、この人はジョルジュの奥さんのカホさんだ」
「え?」
「見た事ない服を着てるけど、あれは着物と言って東国の人が着ている和服って言うものらしい」
俺はカホさんの紹介とカホさんの着ている服の説明をする。
「いや、そうじゃなくて」
「東国の服って落ち着いた感じがして私は良いと思うんだよな、少し着るのが難しいが」
「いや、服よりももっとだな」
「で、カホさん、こっちがエドウィンで今俺の家に住んでいるんだ」
「おお、ジョルジュが言っておった子じゃな? 初めまして、ジョルジュの妻のカホじゃ」
「あ、ご丁寧に、エドウィンです、ってそうじゃない!!」
「どうしたエドウィン? そんな大声出して?」
「大声を出したくもなるわ!! その人が奥さんだと!? どう見ても子供じゃないか!?」
エドウィンはそう大声で言うのだった。
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