鑑定について
「まず、最初に私の鑑定について改めて説明をしてもよろしいでしょうか?」
リンシア様の言葉に俺達が頷くのを見て続きを話す。
「私の鑑定は生まれ持ったものです、魔法使いの魔法とはまた違った力、スキルですね」
この世界には魔法使いと呼ばれる者達が存在する。
魔力と呼ばれる力があり、それは誰もが持っている力であるがさらに適性がある者が魔法使いと呼ばれる存在であり、火や水などの自然の力を生み出したりする事ができる。
その力を普通に生活の中で使う事もできれば冒険者になって魔物と戦うための武器として使う事もできる。
魔法使いの適性があるかどうかは運のようなものなのでとても希少な存在なのである。
そして魔法使いと同じ希少な存在がもう一つある。
それがリンシア様のように鑑定と言った力を持つスキルである。
この力は魔法使いとはまた違う力なので区別をつけるためにスキルホルダーと呼ばれている。
このスキルも持って生まれた力なので魔法使いと同じように希少な存在であり、貴族ならぜひ我が家にと婚約を申し込む者達がたくさんいるのである。
ちなみに魔力は誰もが持っている力と言ったがほとんどの人がその力の存在に気づいていない事が多いらしい。
現に俺もガルドムの学園に通っていた時に剣の授業を受けたがほとんどの生徒が魔力を扱っていなかったし、教師達も同じだったな。
「私のスキル、鑑定は見たものが何なのかを知る事ができるスキルです、例えばこのカップに入っている紅茶を鑑定した場合、この辺りに紅茶という文字が現れてどのようなものなのかの説明も書かれているのです」
リンシア様は紅茶の入ったカップより少し上の方を指差して説明をする。
俺達には見えないがリンシア様には鑑定をしたらあの辺りに説明文とかが現れるんだろう。
「さらに集中すればその紅茶に使われている茶葉が何の味なのかさらにはその茶葉がどのような場所で作られた物なのかも知る事ができますが、細かく知ろうとすればするほど疲労感が大きくなってしまい子供の頃に気を失った事もありまして、それ以来鑑定は必要な時以外は使うなと言われました」
「その話を彼女から聞いた時は私もそうした方が良いと思った、王族の婚約者になれば当然やる事も多くなるからな、彼女に余計な疲労は与えたくない」
シグフィス殿下の言う事はもっともだ。
リンシア様の鑑定は物だけでなく人も鑑定できる。
その人の名前や性別や年齢を知る事ができるし、詳しく知ろうとすればその人の得意な事や家族構成や今までの人生、さらにはその人が何かを企んでいる事さえも知る事ができるらしい。
だがそれは知らない情報を無理に知ろうとしている事。
普通ならありえない力を何のリスクもなく使えるほど便利なものではない。
大きな疲労感が現れるのが鑑定の性能を上げるうえでのリスクなのだろう。
ちなみに大きな疲労感が出るのはあくまでも詳しく知ろうとする時に鑑定の力を強める時だけで、普通に見るだけなら何ともないらしい。
現に化粧水の時も名前と説明文だけを見てもらったそうだが特に疲労感はなかったそうだ。
「それでシェフィーネ王女の描いた絵を鑑定した時の説明に戻りますが、見た時には鑑定不能と出ていましたが、何の絵かはわからないが、捨てない方が良いかもしれないと言う説明文が出ていたのです」
「捨てない方が良いかもしれない? 鑑定不能なのにですか?」
俺は思わずリンシア様に問うとリンシア様は頷いて答える。
「はい、私も鑑定不能なのに何故捨てない方が良いのかと言う説明文が出たのかは不思議でした、しかし鑑定不能なのに捨てない方が良いとおっしゃっても、その、何と申しますか」
リンシア様は言葉に詰まっている様子だ。
うん、何となく言いたい事はわかる。
「どう見てもラクガキにしか見えない絵を捨てない方が良いと言っても誰も信じないと思ったからでしょ? リン姉様」
シェフィーネ王女がリンシア様の言いたい事を代わりに言う。
「シェフィーネ王女、申し訳ありません」
「私自身絵が下手なのはわかってるから大丈夫」
「私の時と随分態度が違うな」
「シグ兄様はわかってる事なのにハッキリ言うから」
「これは手厳しい」
シェフィーネ王女の言葉にシグフィス殿下は困っている。
自分が理解している事なのに他人にハッキリ言われると頭に来るっていうあの感じだろうな。
「まあ、話を戻すけど、リンシアからその事を聞かされてね、とても信じられなかったが、彼女の言葉を信じてシェフィーネが描いた絵を私が取って置く事にしたんだ」
「あ、だからか」
シルが納得したかのように声を上げる。
「兄上からシェフィーネが絵を描いたら自分に渡してくれと言われて、それ以来シェフィーネの描いた絵を私が回収しては兄上に渡していたんだが、あれはリンシア姉上に言われたからか、私はてっきりかわいい妹が描いた絵を捨てるのは勿体ないとかそんな事なのかと思っていたんだが」
「妹がかわいいと言うのは認めるが、父上ほど手遅れではないぞ」
「おい、シグフィス、手遅れとは何だ手遅れとは」
まさか自分が出て来るとは思っていなかったのか陛下がシグフィス殿下に物申す。
「父上の方が私より酷いじゃないですか、現に他国の王子に嫁いだ姉上の事を最初はこれでもかと言うくらい心配してたじゃないですか、私はあの時程こんなのが王で大丈夫なのかと思いましたよ」
「仕方ないだろ、他国に娘を嫁がせるんだぞ? 酷い扱いをされていないかと心配になるだろ?」
陛下は当然とでも言った感じに言う。
シグフィス殿下の姉上、つまりシルやシェフィーネ王女の姉でもあるバハムス王国の第一王女であり、現在はガルドムとは別に関係を築いている国の王子の元に嫁いでいるお方である。
娘を大切にしている陛下からすれば他国に嫁がせた娘がどんな扱いを受けているか心配になるのはわかるが年に何度か顔を見せに夫の王子と一緒に帰って来てるんだよな。
この前子供が生まれたから今度帰る時には子供も一緒だろうな。
そんな事を考えているとシグフィス殿下が話す。
「とにかく、シェフィーネが今まで描いた絵は私の部屋にあるので持って来てもらおう」
そう言ってシグフィス殿下はメイド達に頼んで部屋からシェフィーネ王女が今まで描いた絵を持って来てもらうのだった。
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