この世界にあるお菓子
今日もエドウィンはシェフィーネ王女に勉強を教えていた。
俺とシルフィスタはその様子を眺めていたがエドウィンがこちらを向いて話し掛けてくる。
「なあ、いつも以上にじっと見ているが、どうしたんだ?」
「ん? ああ、別に気にしないでくれ、ちょっと考え事をしていただけだからさ」
「そうか」
俺がそう答えるがエドウィンはどうも怪しいとでも言いたそうな顔をしていた。
するとシルフィスタが小声で俺に話し掛けてくる。
「どうやら見過ぎてしまったようだな」
「だな」
「クリームシチュー以来、絵を描く状態になっていないから、どうも集中してシェフィーネを見てしまうな」
「慌てず焦らずだ」
そうシルフィスタに言うが俺自身も結構焦っていたのかもしれないな。
「そうだ、シェフィーネ、勉強のし過ぎで疲れてないか? ここいらで一息ついたらどうかと思うんだが、エドウィン、どうだろうか?」
シルフィスタがそうエドウィンに提案する。
「確かにそうかもしれないな、勉強のし過ぎは良くないし、シェフィーネ王女、続きは一息してからにしよう」
「うん」
そしてカリーナにお茶とお菓子を用意してもらって一息つくのだった。
「そう言えば、お茶会に出されるお菓子って大体クッキーかケーキだけだよな?」
シルフィスタがクッキーを一つ手に持ちながら言う。
「失われたもの図鑑にはクッキーでもこの砂糖とバターを使っただけのクッキーじゃなくて色々な種類のクッキーがあったし」
「確かに、ケーキもクリームと上にイチゴを乗せたショートケーキだけしかなかったな」
俺達が知っているお菓子はクッキーとケーキしかない。
と言ってもクッキーは砂糖とバターを使っただけのクッキーしかなく、ケーキもクリームを塗ってその上にイチゴを乗せたショートケーキと言うケーキしかない。
いや、ケーキはイチゴ以外の果物を乗せている物もあるが、ぶっちゃけ果物が違うだけで大して変わりないと言う者が多いのだ。
失われたもの図鑑には確かにクッキーとショートケーキ以外のお菓子もあったが、この世界に残っているお菓子はこの二つだけである。
「令嬢達のお茶会とか婚約者とのお茶会ではいつもこの二つのどちらかしか出ないから、飽きてしまったと言う者もいるみたいでな」
「確かに、二つしかお菓子がないなら飽きてしまうのも当然か」
クッキーもショートケーキも決して不味いわけじゃない。
だがこの二つしか出ないとわかってるのなら飽きてしまうのは当然だ。
失われたもの図鑑のように色々なお菓子があるのならどれが出るのかと楽しみができるのだが。
「お菓子、あ」
するとシェフィーネ王女が頭に手を当てている。
これはもしかして。
「シェフィーネ、また来たのか?」
「うん」
「シェフィーネ王女、紙とペンだ」
エドウィンがタイミングよく紙とペンをシェフィーネ王女に渡すとシェフィーネ王女はペンを持って紙に描き始める。
「お前、気が利くな」
「さすがに二回も間近で見たからな、とりあえず紙とペンはいつでも出せるように用意していたんだ」
俺が言うとエドウィンはそう答える。
意外と本来の彼はこういう気遣いができるのかもな。
それからしばらくしてシェフィーネ王女の手が止まる。
時間は一時間どころか三十分も掛かっていないだろう。
俺達はシェフィーネ王女の描いた絵を見る。
「これは卵で、こっちはミルクの絵だな」
シルフィスタが指差した絵は確かに卵とミルクで間違いないだろう。
卵とミルクと言う事は。
「何かのお菓子の作り方か?」
「多分、お菓子の話をしていたからお菓子の作り方が頭に流れて来た?」
俺の言葉にシェフィーネ王女は首を傾げて答える。
都合の良い展開だな。
「これがお菓子なら、どんなお菓子なんだろうな」
シルフィスタがキラキラした目でシェフィーネ王女の描いた絵を見ている。
「じゃあ、いつものように行くか」
そして俺達は学園から外出するのだった。
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