皆に喜んでほしいから
「おお、本当に旨いなこのクリームシチューと言う料理は」
そう言ってシルはクリームシチューを美味しそうに食べる。
クリームシチューを作った次の日、俺は王城に行きシルにクリームシチューを持って行き、シルの感想を聞くために食べてもらっていた。
と言うのは建前で俺がシルと二人きりになりたいと言うのもあるがな。
「パンをクリームシチューにつけて食べるとパンがさらに旨くなるぞ」
「そうか」
言ってシルは白パンをちぎりクリームシチューにつけて食べる。
「おお!! こんなに旨いとは驚いた、凄いなこの料理」
あまりの旨さにシルは白パンをちぎってクリームシチューにつけて旨そうに食べる。
何の躊躇もなくパンをクリームシチューにつけて食べるのは王女としてはどうなんだろうか。
まあ、俺はそんなシルも好きなんだけどな。
「パンをスープにつけて食べるなんてはしたないなと思ったけど、確かにこれはつけて食べたくなる旨さだな」
「その割には躊躇なくつけて食べてたな」
「お前しかいないからだ、お前だけには見せても良いかと思っただけだ」
そう言ってシルは顔を赤くしながら顔を反らす。
何このかわいい生き物、俺の婚約者かわいいかよ。
「それよりもだ、このクリームシチューも同じように店に出すのか?」
「ああ、飲食店もそうだが、家庭でも作れるようにレシピを公開してもらおうかと思ってるんだ」
「家庭でもか?」
「ああ、失われたもの図鑑に家庭的な味って書いてあったからな、もしかしたら店だけじゃなくて家庭でも食べられるように作られたのかもしれないと思ってな」
「なるほど、しかし貴族だけでなく平民にもこの料理を教えて良いのか?」
「ああ、失われたもの図鑑のあとがきに書かれてたんだ、ただ皆に喜んでほしかったって」
「皆に喜んでほしかった」
「ああ、きっとこの図鑑に載っているものを作った当時の人達は貴族や平民など身分に関係なく皆に喜んでもらいたくて作った可能性が高いと思うんだ、だけど化粧水のように欲にまみれた者達によって戦争が起きて多くの犠牲者を出してしまった」
「皆に喜んでほしいと思って作ったのにそれが原因で多くの犠牲を出す結果になってしまった、これらを生み出してくれた当人達の無念は計り知れないだろうな」
「そうだな、多分当時はこれらのものを生み出すには時期が早過ぎたのかもしれないな」
「確かに、周りの環境や時期やタイミングなどが原因で本来なら評価されていたものが評価されなかったなんて事もたくさんあるしな」
そう、シルの言う通り、失われたもの図鑑に載っているものは生み出す環境や時期やタイミングが悪過ぎたのかもしれない。
その結果たくさんの犠牲を出してしまう不幸な事になってしまったんだろう。
「当時は生み出すにはあまりにも状況は悪かったのかもしれないが、今なら問題ないと思うんだ、現に化粧水もちゃんと平民用と貴族用に分けて販売されていて大きな揉め事も起こっていないみたいだしな」
「確かにそうだな」
「図鑑に載っているものを生み出した者達が望んでいたのが身分に関係なく皆に喜んでほしかったのなら、それを再び生み出した俺達はその人達の願いを代わりに叶えてあげたいと思うんだ」
「なるほど、確かにそうかもしれないな、うむ、私もケイネスに賛成だ」
「ただ、陛下達がどう思うかだな」
陛下達がダメだと言えばさすがにそれ以上は何も言えなくなってしまうんだよな。
「そこは問題ない、私がお願いすれば父上も無下にはしないだろう、もしダメなら父上を無理にでも説得する方法などいくらでもあるしな」
そう言ってシルは凄く悪い顔をしていた。
彼女は絶対敵に回したくないね。
「それはそうと、ケイネス」
「ん?」
「今回のクリームシチューもシェフィーネの描いた絵だったんだよな?」
「ああ、そうだよ」
「これで二回目、偶然と言えば偶然だが、私にはそうは思えなくてな」
「そうだな、俺もそう思うよ」
そう、まだ二回だから偶然だと言う人はたくさんいるだろう。
だが俺もシルも偶然とは思えなかった。
「偶然だと言う者やシェフィーネの言っていた頭の中に記憶が流れて来ると言うのが嘘だと言う者もいるかもしれないが、仮にそうだったとしてもだ、適当に描いた絵が偶然失われたもの図鑑に載っていたものの作り方だった、それが二回も連続で起きるなど偶然でも無理がある確率じゃないのかと思うんだが」
確かにシルの言う通りだ。
シェフィーネ王女が適当に描いた絵だとしてもそれが二回も連続で失われたもの図鑑に載っていたものの作り方など、偶然でもほぼ0に近い確率だ。
「もしも、三回目があった時その絵も失ったもの図鑑に載っている何かの作り方だったとしたら、いよいよ確信が持てると思うんだが」
「俺もシルと同意見だ、三回も続いたらさすがにそう言う事だと考えられるだろうな」
「次にシェフィーネが描いた絵で全てが決まるな」
「ああ」
次にシェフィーネ王女が描いた絵の内容で俺達は確信するだろう。
俺達はその時が来るのを待つ事にした。
そしてその時はすぐに訪れるのだった。
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