クリームシチュー
「思った以上に旨いなこれ」
トロっとしていたからどうなのかと思ったが、口にしてみたら信じられないくらいに旨かった。
「確かに旨いけど、ちょっと塩っ気が足りない気がする」
「ならば、塩を少し足して調整をしよう」
シオンが物足りなさを感じたのでジョルジュが塩を少し加えて味の調整をするのだった。
それを再び俺達は口に入れてみるのだった。
「あ、より良い感じになった、まろやかって感じなのかな」
俺が言うと皆も同じ感じなのか頷くのだった。
それにしても。
「これ、何の料理なんだ?」
俺は素直な疑問を口にする。
旨いけどこんな料理見た事もないんだが。
「確かに、何なのでしょうか」
「スープ、とは違うような気がするんだが」
「スープとは比べ物にならないでしょ、これに比べたらあたし達が作っているスープって水煮みたいな物でしょ?」
「「確かに」」
ラキムがそう言うとジョルジュとシオンが納得する。
自分の料理を水煮って、と思うが確かにこの白いのを口にしたらいつものスープが水煮に思えてくるのも無理はない。
「なあ、失われたもの図鑑を見れば何かわかるんじゃないのか?」
エドウィンがそう言った瞬間、俺達はそれだと一斉に思うのだった。
それから失われたもの図鑑を持って来て俺達は料理の項目のページをめくって見ていく。
「あ、これじゃね?」
俺達はあるページに載っている料理と目の前にある料理が似ていたのでこれじゃないかと思った。
「クリームシチュー?」
載っている料理はクリームシチューと言う名前だった。
説明を見るとミルクを使って作るスープの一種であり、まろやかな味がして寒い冬には持って来いの料理と書かれていた。
「クリームシチューって料理らしいな」
「スープみたいな作り方だなとは思ってましたが、スープの一種でしたか」
「寒い冬には持って来いの料理か、確かに寒い冬に良いかも」
「味もどこか優しい感じがするし、子供ならきっと好きな味だと思うよ」
ジョルジュ達も絶賛しているとエドウィンはシェフィーネ王女の描いたクリームシチューの作り方の絵を見ていた。
「エドウィン、どうした?」
「確かに旨いんだが、これを見てくれ」
エドウィンに言われて見ると完成したクリームシチューと思われる絵にパンが描かれていた。
「これってさ、パンにつけて食べるって意味じゃないのか?」
『・・・・・・』
エドウィンの言うように俺達は白パンにつけて食べてみる事にした。
『おお!!』
パンにクリームシチューをつけて食べたが、言うまでもなくパンが旨かった。
「貴族がパンをスープにつけて食べるなんてはしたないって怒られそうだけど、このクリームシチューなら怒られても良いからパンにつけて食べたいな」
『確かに』
俺が言うと皆も同意する。
「これって黒パンでも美味しく食べられるんじゃない?」
シオンが言う。
「黒パンか、柔らかい白パンと違って物凄く硬いパンだっけ?」
「そう、白パンに比べたら石でも食べてるんじゃないのかって思うくらい硬い」
「そんなに硬いのか?」
俺が聞くとシオンは頷く。
「そのままだとちぎるのも一苦労だし結構噛み応えがあって慣れてない奴なら顎が痛くなるかもしれない、でもこのクリームシチューにつけて食べればいくらか柔らかくなって食べやすくなるかも」
「なるほど、試してみる価値はありそうだな、今から黒パンも用意できないか?」
「貴族の家だからねぇ、白パンならたくさんあるけど、黒パンは買って来ないとねぇ」
「確か近くの村にパン屋があったな、ちょっくら買いに行って来るわ、エドウィン、お前も付き合え」
「私も行くのか!?」
「いってらっしゃいませ、我々は準備をして待っております」
「いってらっしゃい」
「お金を忘れないようにね」
「貴族の令息が付き添いもなしに買い物に行くのか!?」
それから俺達は近くの村に行き黒パンをいくつか買うのだった。
「ケイネス、お前護衛もなしに一人で買い物するのか? 辺境でも領主の息子だからパン屋の夫婦がお前が黒パン買った事に驚いてたぞ、貴族が白パンじゃなくて黒パン買うのって何があったって顔してたぞ」
黒パンの入った袋を持ちながらエドウィンが俺に聞いてくる。
確かにパン屋の夫婦、俺が黒パン買ってて驚いた顔してたな。
何かあったのかって聞かれたけど、もしかして黒パンしか買えないくらい金がないのかと心配されたみたいだが、ちゃんと説明したら安心してくれて良かったよ。
「ああ、近くだしわざわざ馬車や護衛をつける必要もないしな」
「貴族令息なら狙われるものだろ?」
「あー、まあ問題ないだろ、何度か狙われた事があるけど普通に撃退して兵士達に差し出したしな」
「狙われた事あるんじゃないか!!」
エドウィンとそんな話をしながら家に帰るとちょうど夕飯の時間になるのだった。
さて、他の皆のクリームシチューへの評価はいかがなものだろうか。
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