とんでもない物を作ったらしい
「落ち着けよ、そんなに興奮してどうした?」
俺が言うと興奮していたユーリは冷静になる。
「あら、私とした事がごめんなさい、これが化粧水かもしれないと思ったらつい」
「化粧水って、その作った液体の事か?」
「ええそうよ、ちょっと待っててちょうだい」
そう言ってユーリは厨房から出て行き少ししてから戻って来るがその手には何かの本を持っていた。
「これを見てくれるかしら?」
ユーリは俺達に見えるようにその本を見せる。
タイトルには失われたもの図鑑と書かれていた。
「失われたもの図鑑って、子供が読みそうなタイトルの本だな」
「この本はタイトルの通り昔確かに存在したけど今は失われている様々なものが載っている本なのよ」
「おー、その本なら小さい頃に何度か見た事があるな、旨そうな料理とかお菓子がたくさん載っていた覚えがあるぞ」
「そう言えば俺も見た事あるな、確かに料理類が多かったな」
シルフィスタの言葉で俺も昔その図鑑を見た事があるのを思い出した。
確かにシルフィスタの言う通り、ページの半分以上が料理やお菓子だった記憶がある。
「そう、確かにこの図鑑には料理やお菓子が半分以上を占めているけど、それ以外もあるのよ、ここを見て」
ユーリが本をめくっていきあるページを俺達に見せる。
「化粧水?」
そのページにはさっきユーリが言っていた化粧水という物が載っていた。
「そうよ、そしてこの化粧水の説明と使い方を読んでみて」
ユーリに言われて俺は化粧水の説明と使い方を読む。
「乾燥肌が潤い美肌へと変わる魔法の液体、使い方は手のひらに出して優しく肌に塗って馴染ませるようにする、これって」
「そう、あなた達が作ったこの液体と似ていないかしら?」
確かにユーリの言う通り肌につける液体と言うのは間違っていない気がする。
「乾燥肌が潤う、だから手の肌に物凄く馴染んだのね」
「確かに仕事で手が荒れたりするから、だから肌が喜んでいたんだ」
ルティとレティも化粧水の説明を読んで納得している様子だ。
「そう、これはおそらく化粧水で間違いないと思うわ、シェフィーネ王女の描いた絵の通りにして作ったと言ったわね? どうやって作ったか覚えてる?」
「ああ、作り方なら覚えてるぞ、多分同じようにやれば作れると思う」
「だとすれば若、これはとんでもない事になるわよ」
「とんでもない事?」
「ええ、この失われたもの図鑑は説明や使い方などが書かれているけど、肝心の作り方は書かれていないのよ、だから今までこれを作りたくても作れなかったのよ」
「そう言えば作り方が書かれていないな、何故作り方は書かれてないんだ?」
「それはこの図鑑を読んだ誰もが思っていたわ、何故作り方だけが書かれていないのか、調べてみたら過去の文献とかに載っていたわ、この本に載っているものは全部大きな争いを生み出してしまった危険なものだったそうなのよ」
「危険なもの? 何でだ? 武器とか兵器とかじゃないだろ?」
そう、この本に書かれているのは料理とかだ。
とても大きな争いが起きるとは思えなかった。
「そうね、確かに武器とか兵器ではないわ、でもね、自分勝手な考えを持った者の欲望によって争いに発展してしまったのよ、例えばこの化粧水や他にも様々な化粧品が載っているけど、この化粧品を生み出した時代にとんでもなく自分勝手な女王がいたのよ、その女王は自分だけが世界で一番美しいとかわけがわからない頭をしていた女でね、自分以外の女が美しくなるのが赦せないという考えの持ち主で化粧水をはじめ多くの化粧品を独占していたのよ、それだけじゃなくてこの化粧品を作った人物を自分のためだけに作らせようと奴隷にしようとしていたのよ、でも化粧水とか様々な化粧品を一度使ってしまった女性達はその凄さがわかっていてね、今まではその女王の自分勝手さに何も言わなかったけど、この事を機に革命が起きて多くの犠牲者が出るほどの内戦になってしまったそうよ」
「化粧品が原因で革命が起きるって、何故そうなる」
本当に何故それで革命なんて大きな事態になってしまうんだ。
そんな事を思ってるとユーリが続きを話す。
「簡単な事よ、女性はね、美しくありたいって思う者が多くいるのよ、そんな美しさを保てる物が目の前にあったら欲しくなるわ、ましてやそれを一度でも使って確かな効果が出るとわかっているなら尚更よ、それなのにその品を一人が独占なんてしたら女性達は我慢できなくなるわ、文献には当時のこの革命は女性が指揮を執り革命軍の多くが女性だったと書かれていたわ」
「化粧水一つで多くの犠牲が出る革命が起きるなんてな」
「様々な化粧品を作った当人も自分が作った物が原因で多くの犠牲を出してしまった事を憂いてその国を去ってその後の消息は不明になってね、それから今に至るまでどこかの国でこの図鑑に載っている化粧品が作られたって記録はないから失われたもの図鑑に載ったのよ、この図鑑に載っているものはそんな理由で二度と作られる事がなかったものが多いのよ」
「なるほど、だからどう言ったものでどう使うのかは書かれているけど、作り方だけは書かれていなかったのか」
作り方を知っているのはその時の当人だけだからな、その当人がいなくなったのなら作り方なんてわかるわけないか。
「でも、今日その失われたものの一つがこうして復活したわ、これがもし本物の化粧水なら間違いなく商品として出せるわ、商品として出すなら絶対に売れるわ、むしろ売るべきよ!!」
「そ、そうなんだ、それと顔が近いぞ」
ユーリが物凄く興奮して顔を近づけて来るので俺は手を前に出して少し引いてしまった。
「ちょっと、あなた達やけに反応が薄いわね、失われたものを生み出したのよ?」
「まあ、凄いんだなってのはわかるんだが、正直化粧とかそう言うのに興味ないから、売れるものなのかと思ってな」
そう、俺は化粧とかしないから化粧水が売れると言われてもよくわからなかった。
「良い? これは本当に売れる品よ、何だったら奥様に聞いてみると良いわ、奥様ならこの化粧水がいかに凄いのかがわかるから、少し日にちをちょうだい、何日か試さないと本当に化粧水としての効果があるのかわからないわ、これ奥様に渡して良いかしら?」
「俺は良いが、皆は?」
俺が問うと皆も構わないのか頷く。
「それじゃ、さっそく奥様に渡して来るわね、効果が確かなものだったら間違いなく商品として出せると思うから」
そう言ってユーリは出来上がった化粧水だと思われる物を持って厨房から出る。
どうやらとんでもない物を作ったらしいがどうにもよくわからないのだった。
そして俺達はそのまま学園に戻るのだった。
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