出来上がった物
ここにシェフィーネ王女の描いた絵の通りにしたら出来上がった物があるのだが。
正直何だこれ?
それが俺の感想だ。
「出来上がったけど、これ何なんだろうな?」
俺が言っても誰も答えない。
うん、皆もこれが何なのかわからないから何も答えられないんだよな。
「ケイネス、そもそもこれは何に使うんだ?」
「そうだな、ん? この絵まだ続きがあるぞ」
絵に続きがある事に気づいた俺は皆にも見えるように絵を見せる。
「これって、手と顔か?」
「なあ、まさかとは思うが、これ、手や顔につけるのか?」
シルフィスタの言葉にその場の全員がこの出来上がった物を見る。
「顔や手って肌につけるんですか? これを?」
「得体の知れない草で作った液体と身体を壊してしまうくらい綺麗にした水と食べられるハチミツを混ぜてできたこれをですか?」
ルティとレティが疑いの目を向けて言う。
確かにこんな得体の知れない物を肌につけるなんて普通に考えたくないよな。
「しかし、この絵の通りなら肌につけて使う物らしいんだよな、これ」
「とは言ってもケイネス、実際にそれが正しい使い方なのかわからないだろ? 実際にそうしてみた方が早いが、しかしな」
そう言ってシルフィスタも出来上がったこれに疑いの目を向ける。
「じゃあ、私が使ってみる」
シェフィーネ王女が手を上げて言う。
「シェフィーネ!?」
「元々私の描いたこのラクガキを皆が解読してくれて作ってくれた、だったら出来上がった物は私が試す責任があると思うから」
「それはならんぞ、こんな得体の知れない物をお前に使わせるわけにはいかん」
シルフィスタはシェフィーネ王女が使うのには反対する。
「仕方ない、ここは俺が使ってみるか」
「「若様、お待ちください」」
俺が使おうとするとルティとレティが止めに入る。
「若様はこのリカード家の次期当主となるお方、もしもの事があってはなりません」
「シルフィスタ王女とシェフィーネ王女も同じです、これを使って王女方の身に何かあっては」
そう言ってルティとレティはエドウィンを見ると一瞬の間が空いた。
「エドウィン様は、お客様ですし」
「そうですね、お客様の身に何かあってはいけませんし」
「おい、今の間は何だ? お前達私なら別に良いだろって一瞬思ったんじゃないのか?」
「別にそんな事、思ってませんよ」
「そうですよ、お客様にそんな事、思うわけないじゃないですか」
「だったら私の目を見て言え!! 反らすな!!」
エドウィンが言うがルティとレティは顔を反らすのだった。
こいつら本当にエドウィンで試せば良いって一瞬思ってたな。
「わかりました、私達が使います、レティ、覚悟を決めるわよ」
「若様、私と姉様にもしもの事があったら、リカード家を見渡せる場所に私達の墓を建ててください」
「お前ら大げさだと思うぞ」
いくら何でも死にはしないだろ。
得体の知れない物だからってそんな最悪の結果にはならないだろ。
「いくわよ、レティ」
「ええ、姉様」
二人はビンの蓋を外して手の上に垂らす。
「見た目は液体のままね」
「でも、水とは何か違うような」
二人はそのまま手に塗り始める。
すると二人は何かに気づいたかのような顔をしていた。
「二人共どうした?」
「何て言えば良いのか、凄く肌に馴染んでいる気がします」
「まるで肌がこの液体を喜んで受け入れているかのようなそんな感じです」
俺が問うと二人はそのように答える。
よくわからないが、とりあえず身体に害はないものだと言う事がわかった。
「あら、あなた達何をしているの?」
すると通り掛かったユーリが気づいたのか厨房に入って来る。
「今の時間、料理長達はいないわよ、と言ってもお腹が空く時間でもなさそうだし、あら? シルフィスタ王女にシェフィーネ王女、王女様二人が何故ここにいるのかしら?」
「ああ、シェフィーネ王女が書いたこの絵の通りにしたらこれができたんだ」
「絵? あら、随分と独特な芸術を感じさせるような絵ね」
「ああ、その絵を解読してたら、鍋で煮込んだりとか材料を切ったりとかするみたいなんだ」
「それで厨房にいたのね、まあ、ルティとレティがいるから調理器具とか使うのは別に良いけど、それでそのビンの中の液体ができた物って事?」
「ああ、できたのは良いが、これが何なのかがわからないんだ」
「なるほどね」
ユーリがビンを手に取ってまじまじと見つめる。
「それで、これ使ってみたの?」
「ああ、さっきルティとレティが使ってみたんだ、この絵を見ると手や顔などの肌につけるみたいで手に塗ってみたところ、物凄く肌に馴染むそうなんだ」
「肌に物凄く馴染む? ちょっと使ってみて良いかしら?」
「ああ、良いぞ」
俺が許可を出すとユーリは手に付けて塗っていく。
「あら、本当に肌に物凄く馴染むわね、ん? 肌に馴染む液体? え? ちょっと待って、もしかしてこれって」
「どうした?」
出来上がった物を使ったユーリはやけに身体が震えていた。
本当にどうしたんだ?
「これって、もしかして化粧水じゃないの!?」
ユーリは興奮して言うのだった。
読んでいただきありがとうございます。
気づいたら十万文字超えてました。
面白かったらブクマと評価をよろしくお願いします。




