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絵の通りにしてみた

「おい、ちょっと待て」


 我が家に着くとケイネスが俺に言う。


「お前の家に着いてから言うのも何だが、授業中なのに学園を出て良いのか?」


「外出許可は貰っているから問題ない」


「だが学園では他の生徒達は普通に授業をしているんだろ? それなのにこんな早い時間に外出できるのか?」


「前に特別クラスについての話をしたのは覚えてるか?」


「ああ、確か何かしらの事情で授業が受けられない生徒達のために用意したクラスだったか?」


 エドウィンの答えに俺は頷いて続きを話す。


「特別クラスの中には特に酷い状態の生徒もいるんだ、シェフィーネ王女みたいに勉強は普通にできるけど大勢の人と一緒にいる空間で何かをするのが苦痛だったり、長時間部屋の中にいるのが苦痛に感じたりする生徒もいる、そういう生徒達のために特別クラスでは誰かと一緒なら授業中でも気分転換に外出するのが許可されるんだ、ただし、その日の放課後の時間になる前に帰って来ないとその日は欠席扱いになって一ヶ月は外出できずその一ヶ月の間に十回ぐらいはテストを受ける事になる」


「なるほど、約束を守らなかった時のための罰もちゃんと用意してるんだな」


「ああ、特別クラスだからって何でも特別扱いするわけじゃない、ちゃんと相応の罰も用意しないと普通に授業を受けている生徒達からの反感を買うからな、まあ説明はこれぐらいにして放課後になる前に帰らなければならないから早く行こう」


 そう、学園への馬車での移動時間も考えるとのんびりしているわけにもいかない。


「若様、どうなさいましたか?」


「お早いお帰りですね?」


 家の扉を開けると双子メイドのルティとレティがいた。

 ちょうどいいな。


「二人も一緒に来てくれ、人数が多い方が意見も多いからな」


 ルティとレティは頭に?マークを浮かべながらも俺達について来るのだった。


「さてと、二人共これを見てくれ」


 俺はルティとレティにシェフィーネ王女の描いたラクガキ、ではなく絵を見せる。


「何ですか、このラクガキは?」


「子供でももう少し上手く描けるくらい下手くそなラクガキですね」


 率直な感想を言う二人。

 まあ、これが普通の反応だよな。


「それ描いたの私の妹だぞ」


 シルフィスタが親指でシェフィーネ王女を差して言う。


「よく見ると独特な感じがあって良いわね、ルティ」


「ええ、他の誰にも真似できない芸術性が出てると思うわ、姉様」

 

 わかりやすいくらいの手の平返しだな。


「お前達、謝っときな」


「申し訳ありませんでした、シェフィーネ王女、どうかお赦しを」


「何でも致しますので、どうか無礼をお赦しください、シェフィーネ王女」


 ルティとレティはその場で土下座して謝罪をする。

 女性の土下座を見るのこれで三人目だぞ。


「大丈夫、二人共メイド服が汚れちゃうから立って、私は気にしてないから」


「シェフィーネ王女、あなた様の寛大なお心に感謝します」


「あなた様のお心の広さに感服しました、シェフィーネ王女」


 二人は手を合わせながらシェフィーネ王女を崇めている。


「当然だ、シェフィーネは良い子だからな」


 そしてシルフィスタが何故か自慢げに言うのだった。

 それから俺は二人にもこの絵についての事を説明するのだった。


「なるほど、何かの作り方ですか」


「確かにそう言われると何かの順番にも見えますね」


「そうなんだ、それで皆でこの絵を解読してこの順番通りにしたいと思う」


「と言われましても、まずこれは何ですか?」


 ルティが最初と思われる絵を指差す。


「これは、草ですか?」


 レティが絵を見て言う。


「ああ、俺達もこれは見た感じ草なんじゃないのかと思うんだ」


「問題はこの草が何かだ、そう言えばシェフィーネ、確か絵を描き終わった時流れて来た記憶は断片的に覚えていると言ったな、この草について何か覚えていないか?」


「うん、草にトゲトゲみたいなものがついていた気がする、サボテンとは違うものだった」


「サボテンとは違ったトゲトゲした草・・・・・・あ、レティ、もしかしてあれじゃない?」


「あれって・・・・・・姉様もしかしてあれの事?」


「ええ、あれよ」


「確かに、あれはトゲトゲした草かも」


「二人共何か心当たりがあるのか?」


 俺が聞くと二人は頷く。


「庭にそのような草が生えていました」


「確かにトゲトゲしたような草でした」


「案内してくれ」


 俺が言うと二人はトゲトゲした草がある場所に案内するのだった。


「これです」


「これがそのトゲトゲした草です」


 二人が案内した場所にはその例の草が生えていた。


「確かに、サボテンとは違うトゲトゲした草だな」


「あ、ケイ兄様、この草だったよ」


 シェフィーネ王女がトゲトゲした草を指差して言う。


「本当ですか? その絵に描いてある草がこれなんですか?」


「うん、間違いない、この草だよ」


 俺の問いにシェフィーネ王女が頷く。


「どうやらこれが例の草のようだが、普通に取れば良いのか」


「普通に取ると言うが、トゲトゲしていて生え方も何か気味が悪いな、普通の草よりも大きいし」


 シルフィスタは気味が悪いと思い、トゲトゲした草を取る事に抵抗があるようだ。 


「まあ、念のために手袋をして取るか、ルティ、レティ、手袋とナイフを持って来てくれ」


「「かしこまりました」」


「エドウィン、俺達はこのトゲトゲした草を取るぞ」


「ああ、わかった」


 それからルティとレティに手袋とナイフを持って来てもらい、俺とエドウィンでトゲトゲした草を切り取るのだった。

 トゲトゲした草を採取した俺達は絵に描いてある次の通りにしてみる事にした。


「これは、包丁で皮の部分を切って中身をさらに細かく切っている感じか?」


「確かに包丁に見えなくもないが切るのか? この得体の知れない草をか?」

 

 シルフィスタが言うと全員がトゲトゲした草を見る。


「ここは私達がやります、一応手袋をさせてもらいます」


「皮と言う事はこの緑色の部分ですね、確かに草にしては分厚いですね」


 ルティとレティは包丁でトゲトゲした草の皮の部分を切っていくと中身は白かった。


「何、この白い塊」


「何だかヌルヌルしている」


「得体の知れない草がますます得体の知れないものになったわね」


「これを細かく切ってと」


 二人は白い塊を細かく切っていくのだった。

 白い塊を細かく切り終えたところで次の手順に進む。


「これは鍋の絵か?」


「と言う事は、この下に描かれているのは火か?」


「つまり、煮込むのか? この得体の知れないものを?」


 俺とシルフィスタとエドウィンは、えー、とでも言いたそうな顔をしていた。

 え? 煮込むって事はこの草食べられるの?


「煮込むのですか? この得体の知れない草を?」


「この草、食べられるんですか? その辺に生えていた草なのに?」

 

 ルティとレティも疑いの目を向けていた。

 そりゃそうだ、どこにでも生えている場所にあった草が食べられるなんて誰が信じられる。

 

「とにかく順番通りにするためにもやってみてくれ」


「かしこまりました」


「煮込んでみます」


「なあ、ちょっといいか?」


「どうした?」


「この火の絵だけど、小さく描かれているって事は弱火で煮込めって事じゃないのか?」


 エドウィンがそう言って見てみると確かに鍋に比べて火は小さく描かれていた。


「弱火で煮込まなければならないって事か? ルティ、レティ、弱火で煮込んでくれ」


 俺が言うと二人は鍋に細かく切った白い塊を入れて弱火で煮込むのだった。

 ここまでの手順で何かを作っているって事はわかるが、正直何ができるのか全く想像できない。

 まだまだ手順はあるが俺達はとりあえずこのまま続ける事にするのだった。

 本当に何ができるんだ?




  

 




 


 



読んでいただきありがとうございます。


面白かったらブクマと評価をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
アロエから薬でも作ろうとしているのだろうか?
魔法陣ならぬ錬金陣みたいなのがおりてきた感じがしてワクワク!
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