エドウィン、勉強を教える
エドウィン視点になります。
私はエドウィン。
ただのエドウィンとしてもらっていい。
私に家名を名乗る資格などないからだ。
ある日の出来事で私は家に泥を塗る恥晒しな事をした。
あのまま私は何もなせずにただ愚かな男として終わっていくのかと思っていたが。
ケイネス・リカード。
彼と関わってから色々な事が解決していき、私の中にあった嫌なものが少しずつ減っていった。
そして現在私は。
「シェフィーネ王女、この問題はわかるか?」
「ん、こう?」
「正解だ」
ケイネスの故国であるバハムス王国で彼の婚約者である、バハムス王国第二王女、シルフィスタ・バハムスの妹である第三王女、シェフィーネ・バハムスに勉強を教えていた。
勉強を教えている今でも思う。
何故こうなった?
ケイネスやシルフィスタ殿から信頼のおける者と言うから来たが、正直私で良いのかと今でも思う。
信頼してくれるのは嬉しいが、私にこんな大役ができるとはとても思えないのだが。
まあ、頼まれたからには最後までやるが。
それでも私で良いのかと思っている。
「シェフィーネ王女、一応勉強を教えているが、私の教え方はどうだろうか? 何かわからないとかないだろうか?」
「? 特にない、エド様教えるの上手、わかりやすい」
「そ、そうか、なら良いのだが、わからなかったら遠慮なく言ってくれ、後で言われるより良いからな」
「ん、わかった」
一応シェフィーネ王女は私の教え方でわからないところはないらしいので一安心と言ったところだろうか。
それにしても。
(バハムス王国の学園の授業はガルドム王国よりも進んでいるな)
私が今教えている範囲は一年生である彼女が習っている範囲だそうだが、この範囲はガルドムでは二年生で習っていた範囲だ。
ケイネスが先程この学園の教師と話していた時にガルドムでの授業は既に習っていたところで復習のようなものだったと言っていたが、まさかこれほど進み具合が違うとは思わなかった。
(離宮で自主的に勉強をしていて良かったな)
私は内心そう思った。
離宮でやる事が何もなかった私は暇つぶしに学園で習うはずだった範囲の勉強を進めていた。
おかげで三年生までに習う範囲の勉強を全て終わらせていたから彼女の習っている範囲の勉強も難なく教える事ができている。
まさか離宮で自主勉強をしていたのがこんなところで生かされるとは思わなかったな。
私のしていた事も案外無駄じゃなかったのかもしれない。
そう思いながら私はシェフィーネ王女に勉強を教えているのだが。
(今頃になって思ったが、よくよく考えたら、部屋に男女が二人きりってマズいのではないか!?)
そう、今私はシェフィーネ王女と二人きり、しかも部屋のような場所に二人きりだぞ!?
どう考えてもこの状況はマズいのではないか!?
ましてや相手が王女なら尚更マズいのではないか!?
「? エド様どうしたの?」
私がそんな事を思っているとシェフィーネ王女が私に話し掛けてきた。
そもそもシェフィーネ王女はこの状況をどう思っているんだ?
私は彼女の顔を見るが。
「・・・・・・?」
うん、無表情だから全然わからん。
しかし、不思議と同じ無表情だった私のかつての婚約者、アンリエッタ・ウィスト公爵令嬢に対しては表情が変わらない人形みたいで気味が悪いと感じていたのに、目の前にいる彼女。
シェフィーネ王女からは気味が悪いとかそう言ったものは何も感じない。
そう言えばシルフィスタ殿が言っていたな。
元から感情をあまり表に出さない性格だと。
だからなのか?
ウィスト嬢は本心を隠してあんな表情の変わらない人形のようになっていた、つまり演じていたから気味が悪いと感じたが、シェフィーネ王女は元から表情が変わらない。
つまり、偽りのない自分を出しているから同じ無表情でもシェフィーネ王女に対しては何も嫌な感じがしない。
そう言う事なのだろうか。
(って、そんな事ではないだろ問題は!!)
そうだ、今の問題は彼女と二人きりになっているというこの状況だ。
(・・・・・・これは聞くしかないか)
彼女の表情から読み取れないなら、直接聞くしかないだろう。
女性にこんな事を聞くのは失礼だと思われるが、ハッキリしとかないといけないしな、今後のためにも。
「シェフィーネ王女、今更な事を聞くが、どうか気を悪くしないで聞いてもらいたいんだが」
「何?」
「その、だな、あなたは私とこの部屋で一緒にいる事をどう思っているのだろうか?」
「・・・・・・? どう言う事?」
「いや、だからな、男女が二人きりで一緒にいる事だよ、シェフィーネ王女からしたら今日会ったばかりの初対面の男と二人きりだ、その、嫌な感じとかはしないだろうか?」
「嫌な感じ? どうして?」
「え?」
「どうして、私がエド様を嫌だと感じるの?」
シェフィーネ王女が首を傾げながら聞いてくる。
「いや、男女と二人きりだぞ? 相手は初対面で歳が近い男だぞ? 普通に警戒するものじゃないのか?」
「警戒? 何を警戒するの? エド様は悪い人じゃないでしょ?」
シェフィーネ王女が当然とでも言った感じに言う。
嘘だろ、おい。
「いやいや、何故私が悪人じゃないと言い切れる? 会って間もない初対面の男だぞ?」
「だって、シル姉様とケイ兄様が連れて来た人だし、それに」
「それに?」
「本当に悪い人なら、この国に入る事すらできないんじゃないの?」
「あ」
そうだった、この国あの水晶の魔道具で他国から入国する人が悪人かどうかがわかるんだった。
だったら良いのか。
いやいや、私が悪人じゃなかったとしても男女が二人きりなのはどうなんだ。
それとも何か、これは私が深く考え過ぎなだけなのか?
そもそも、こんな事を思いつく私はヤバい男なんじゃないのか!?
「エド様? 大丈夫?」
シェフィーネ王女が心配して声を掛けてくる。
無表情のままだが、彼女が優しい人だなというのは伝わってくる。
こんな愚かな私にはその優しさが眩しいよ。
「何でもない、続きをしようか」
「? うん」
それからは何事もなくシェフィーネ王女への勉強初日を終わらせるのだった。
そう言えば、二人から聞いていた状態は起きなかったな。
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