騎士団長の息子で見てしまった事
「な、何を言ってるんだ!! 適当な事を言うな!!」
騎士団長の息子カルロスが高圧的に言ってくるが俺は構わずに続ける。
「いや普通に言ってましたよ? 何だったらその時の事話しますよ、あれは数か月くらい前の事でしたね、俺は学園の中を歩いていると声が聞こえて何かと思ったら教室の扉が少し開いていてそこから声がしたので何かと思って覗いたらカルロス様が二人の令息と話していたんですよね、俺は気にせずその場から移動しようとしたらカルロス様がとんでもない事を言い出したんですよ」
俺はその時の会話を覚えていたので聞いた内容をそのまま話すのだった。
『カルロス様、最近アリンス嬢と一緒にいますけど、婚約者をほったらかしにして良いんですか?』
『良いんだよ、あいつは俺には何も言えないんだから』
『何も言えないって、一応婚約者ですよ? 何か注意すると思いますよ?』
『ああ、最初は言ってきたな、だから俺は思い切り怒鳴りつけて黙らせたんだよ、あいつは元々気弱な女だからちょっと強く言うだけで何も言えなくなるんだよ、おまけに俺が壁を殴ったりして脅せばあいつは自分が殴られるんじゃないのかって恐怖して何も言えなくなるのさ』
『す、凄いですね』
『お前らもやってみればいいぞ、お前らの婚約者だって気弱なんだからちょっと強く怒鳴れば簡単に黙るんだからよ、やっぱ男は女に舐められるわけにはいかねえんだよ』
『なるほど、確かに男が女に舐められるわけにはいきませんよね』
『そうだ、大体女が男に意見するなんて生意気なんだよ、女は黙って男の言いなりになってれば良いんだよ』
『そうですね、よし、俺もそうしてみようと思います』
『おう、そうしろ、女は結婚して子供を産む以外に価値がない、男に捨てられれば終わりなんだからよ』
「って言ってましたよ」
俺がその時の事を言うと周り、特に女性達はカルロスに厳しい目を向けていた。
「な、何を適当な事を言ってるんだ!!」
カルロスは当然否定するが厳しい目は一向に消えない。
「適当じゃないですよ、何だったらその時一緒に話していた令息達もいますよ」
そう言って俺はその時カルロスと話していた令息達に向かって行く。
「あなた達ですよね? その時一緒にいた令息は、そう言えばあなた達が婚約者に高圧的な態度を取っていたのを何度か目撃した事がありますが、思えばその時期はあの時カルロス様と話していた後だったような」
さらに追い打ちにでもなったのかその時カルロスと話していた二人の令息は青褪めた顔をする。
その顔を見て周りも何となく察した顔をしていた。
「リカード様、その話は本当でしょうか?」
ここで黙っていたウィスト嬢が事実確認のために俺に聞いてきたので俺は頷いて答えるのだった。
「ええ、全部本当ですよ、俺の話を信じるのならですが」
「いえ、疑いはしません、カルロス様の婚約者のご令嬢から相談を受けていましたし、その二人の令息の婚約者からも相談を受けていました、急に婚約者の態度が変わってしまったと、そうですか、カルロス様と話していて」
「間違った影響を受けてしまったんでしょうね、カルロス様の言い分だと女は奴隷か自分の操り人形だと思ってるんでしょう、国や民を守る騎士がましてや騎士団長の息子がこんな考えを持っているとは驚きましたよ、おそらく女性の騎士も見下してると思いますね、こんな考えを持っているなら」
「ふざけるな!! そんな事思っていない!!」
カルロスは大声を上げて言うがそれも焦ってるように聞こえて周囲は厳しい目をカルロスに向けていた。
「この大バカ者!!」
すると女性がカルロスの頬を思い切りひっぱたく。
良い音が響いたのかとても痛そうだな。
「は、母上!?」
「あなたという人はそんな事を思っていたのですか!! あなたのお父様は私に高圧的な態度を取っていましたか!! ましてや壁を殴ったりして脅す? 女性に手を上げるとは、あなたは騎士以前に男として最低です!!」
カルロスの母上はカルロスを叱りながら何度も頬をひっぱたいていく。
何度もひっぱたかれたのかカルロスの頬は真っ赤に腫れあがっていたよ。
もう一度言うが、本当に痛そうだ。
「ごめんなさい、まさかこの子がこんなバカな事をしていたなんて、もうじき陛下もここに来ますし、その時に一緒に同行している夫に今聞いた事を話しますので婚約について改めて話し合いましょう、場合によってはこちらの有責で慰謝料も支払います」
「わかりました、正直こちらとしましても娘にこのような扱いをする殿方に娘を嫁がせるのはどうかと思っていたところです、私の夫も一緒に来ると思いますのでその時にまた」
カルロスの母上と婚約者の母上の二人が話し合っている。
ほぼ間違いなくカルロスの婚約は解消されるだろうな。
むしろそうならないとマズい状況だろうなこれは。
「全く、何をしているのですか」
そう言うのは殿下の側近で宰相の息子である、ファルス・モンデールだった。
「いやいや、ファルス様、あなたも人の事言えないと思いますよ」
俺は彼にも思った事を言うのだった。
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