冷静になって考えてみて
「き、貴様!!」
殿下が怒りで何か言いそうになったが俺はすかさず続きを話すのだった。
「だってそうじゃないですか、こんな場所で婚約破棄だなんてする意味がわかりませんよ、普通婚約破棄ってお互いの家が話し合って内密に決める事じゃないですか、少なくともこんなパーティーの時にたくさんの人がいる所で大々的に発表するべき事じゃないですよね? そもそも殿下にそんな権利ありませんからね、二人の婚約を解消するかどうかを決めるのは陛下なんですから、それにおかしいのはそれだけじゃないですよ」
「何だと!!」
「まず、ウィスト嬢がアリンス嬢をいじめていたという事ですが、証拠とかもちゃんとあるんですよね? ならその証拠を見せてくださいよ」
「ふん、そんなのリリンがそう言ってるのだからそうに決まっている」
「いや、それ証言であって証拠じゃないですよね? 証拠を見せてくださいよ、ウィスト嬢がアリンス嬢をいじめたって言う物的証拠を」
「だからリリンがそう言っていると言っているだろ!!」
殿下は何を言ってるんだろうか?
まるで話が通じていない気がする。
「証言なんていくらでも嘘がつけるじゃないですか、その点証拠は嘘をつきませんよ、だから証拠を用意してくださいよ」
「リリンが嘘をついているとでも言うのか!!」
おいおい、マジかよ。
「殿下、あなた本気でそう言うのですか? もしそうなら、あなたにこの国の王は務まらないと思いますが」
俺がそう言うと殿下は怒りで顔を歪めていた。
「貴様!! 私を愚弄するのか!!」
「いや、だってアリンス嬢が言うから間違いないって、それってもしこの国に忠誠を誓う有能な人達をアリンス嬢が気にいらなくてありもしない嘘を言ったら殿下はそれを信じて何の罪もない有能な人達を処分する危険性があるって事ですよ? そんな人に国の王になってもらいたいなんて思う人がいますか?」
「貴様!!」
「それに、そこのアリンス嬢が仮に殿下との婚約を認められて王妃になったとしたら、間違いなくこの国に忠誠を誓っていた多くの人達が確実に革命を起こしますよ」
「はっ!! 何をバカな事を!!」
「いや、本当にそうなりますよ、だってアリンス嬢じゃ無理ですから、間違いなく無理ですから、絶対に無理ですから」
「え~、酷いです~」
俺がそう言うとアリンス嬢が泣き出したよ、わざとらしいな。
殿下が慰めてるけど俺は構わずに話し続ける。
「いやだって、アリンス嬢のこの喋り方を見れば一目瞭然じゃないですか」
「私の喋り方~?」
「皆さんも何だか真実の愛だとかウィスト嬢がアリンス嬢をいじめてたとか言いますけど、よく考えてみてくださいよ、彼女のこの喋り方、こんな喋り方する人が王妃になるって想像してみてくださいよ、さらにわかりやすく言うなら、現王妃様がアリンス嬢みたいな感じに喋ってたらどう思いますか? アリンス嬢みたいに話し掛けて来たらどう思いますか? そんな王妃様に忠誠を誓いたいと思いますか?」
俺がそう言うと周りの人達が現王妃がアリンス嬢みたいな感じに話していたらを想像したのか嫌な顔をしたり持っていた扇子で顔を隠して背けたり、中には両腕で肩を押さえて全身に寒気が来たようなポーズをする人もいた。
「殿下だって自分の母親がアリンス嬢みたいな感じで殿下に話し掛けて来るんですよ? それを想像してみてくださいよ」
俺に言われて殿下も想像してしまったのか青褪めた顔をしていた。
「嫌そうな顔をしているって事はアリンス嬢みたいな喋り方はマズいと感じているって事じゃないですか」
「母上とリリンを一緒にするな!!」
「そりゃ現王妃はアリンス嬢みたいな感じに話さないからこの国の王妃として他国になめられる事がないから良いんですよ、でもアリンス嬢が王妃になったら明らかに他国の者になめられますよ、そう考えるとウィスト嬢の方が王妃としては完璧と言っても良いですよ、皆さんも冷静になって考えればわかりますでしょう? アリンス嬢とウィスト嬢、どちらが王妃になった時に忠誠を誓えるかが」
するとさっきまで殿下の真実の愛とかウィスト嬢がアリンス嬢をいじめたとかそんな事に気を取られていた人達が俺が言った事で皆どっちが王妃となるべきなのか明確になってきているようだった。
「殿下がウィスト嬢の事をあまり好いてないのは何となくそうじゃないかなと思ってましたけど、婚約を破棄してアリンス嬢を新たに婚約者とするのはどうかと思いますよ、そんな殿下がこの国の王になったら正直この国は二、三年以内に終わりそうな気がしますね」
「お前、さっきから聞いていれば何なんだ!!」
すると殿下の後ろでずっと待機していた人物、騎士団長の息子で殿下の側近、カルロス・グランチェが怒声を上げて言ってきた。
「何なんだって、殿下が言いたい事があるなら言えとおっしゃったので思った事を言ったまでですが?」
「だからって殿下に対して無礼な事を言って良いってわけじゃねえだろ!!」
「そんな高圧的に怒らないでくださいよ、ていうか俺はあなたにも言いたい事があったんですよね、あなた婚約者を愛してすらいない最低な男じゃないですか」
俺の言葉に会場の人達はざわざわし出すのだった。
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