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気づいたらそうなっているものだ

「とまあ、こんな感じで今の俺達みたいな関係になったと言うわけです」


 俺はシェフィーネ王女とアニスにシルとの馴れ初めを話し終えるのだった。


「そう言えばシル姉様が誘拐されたって聞いたけど、あの時の事だったんだ」


「ああ、あの時の事だ」


「お父様が凄く怒ってお母様が宥めたって聞いた」


「ああ、今にも殺しに行く勢いだったらしいな」


「そのバンダ侯爵と言う人、赦せないのです、自分の領地の領民の子供を攫うなんて」


 アニスがバンダ侯爵の悪事に怒っている。

 確かにあの男のした事は赦せないがな。


「まあ、攫った理由も息子が俺に負けて恥をかかされた上にあいつらにとって田舎貴族の家の子が王族と婚約なんて気に入らないからシルを攫う事でその責任を俺や親父に負わせるつもりだったんだろうな」


「頭の悪い連中が考えそうな事だな、全く」


 シルは呆れながら言う。

 確かに頭が良い奴の考えだとは思えないな。


「鉱山送りになった三人の領主が納めてた領地はそれぞれの夫人が領主として経営してるのはわかったけど、その家の子達はどうなったの? ゲドって名前の生徒は学園にいなかったけど」


 シェフィーネ王女がゲド達の事が気になる様子。


「あいつらですが、ちょっと特殊な孤児院へと入る事になりました」


「特殊な孤児院?」


「貴族専用の孤児院ですね、簡単に言うと貴族としての教育がなっていない者達を更生させるための施設みたいなものですね、ゲドとその取り巻き二人は貴族としての教育ができていなかったので、家で貴族としての教育が身につかないようないわゆる聞き分けのない子達を代わりに教育させる施設です、孤児院の院長や職員達は元その孤児院にいた貴族の子達なのでそれはもう厳しく指導したそうですよ」


「そうか、同じ貴族ならちゃんと話を聞いてくれると思うし」


 シェフィーネ王女の言う事に俺は頷く。

 そう、孤児院は平民が多いがその孤児院だけは貴族が働いている。

 ゲド達のような者達は平民から教わるなんてプライドが赦さないから絶対聞いてくれるわけがないが同じ貴族なら話は聞いてくれるし大人から厳しく教育されれば嫌でも更生せざるを得ないだろう。


「それでゲド達なんですが、見事に心を入れ替えて今では彼らもその孤児院で働いていますよ」


「良い子になったのです?」


 アニスの問いに俺は頷く。


「ああ、様子を見に行ったら物凄く性格が変わっていたんだ」


 あれにはさすがに俺も驚いたな。

 正直誰だお前ってなったもん。

 

「自分達のした事がどれだけ愚かで赦されない事だったのかを反省して他人を思いやる性格になっていたな、今では自分達も孤児院で働いていてそこに来た貴族の教育がなっていない子達に自分達の経験を話したりしているらしい、自分達みたいにろくでもない人間にならないようにと」


「環境が変われば人も変わるって事?」


「そうかもしれません」


 シェフィーネ王女の問いに俺はそう答える。

 あいつらは環境が良ければ良い方に変われたって事だ。


「シル姉様は最初ケイ兄様に勝てたら婚約を破棄するって事になってたけど、いつの間にかそれもなくなったの?」


「ああ、最初はそうだったがケイネスと一緒にいる事が多くなって過ごしているうちにケイネスの良いところがたくさん見つかってな、正直攫われるよりずっと前からケイネスの事が好きになってた」


「そうだったんだ」


「ああ、だがあんな事を言った手前、今さら自分から言うのも何だか恥ずかしくなってな、何かきっかけがないかと思っていたんだ、そしたら攫われてケイネスに助けられたんだ、あの時のケイネスは物語に出て来る王子様のように見えたな、そしたらなんやかんやで正式に婚約する事になったんだ」


「うん、正式に婚約してから陛下がリカード家が何故辺境の地にいてどんな役割を果たしているのかを他の貴族達に説明して俺達の婚約は何の反対もなく決まったんだ」


 普通なら男爵の息子がって思われるがリカード家は国にとって重要な役割を持っている。

 それはこの領地には森がありそこには凶暴なモンスター達がいる。

 そのモンスター達が国に侵入しないためにも森に一番近い場所にいるリカード家がその森でモンスターを討伐しているのだ。

 だがその役割を知っているのはあまりいなかったので俺とシルの婚約を機に陛下が他の貴族達にリカード家の役割を話す事にしたそうだ。

 それを聞いた他の貴族達は俺の強さに納得したそうだ。


「まあ、そんなわけだからシェフィーネ、お前がエドウィンともっと仲を深めたいと言うが、そんなものは一緒にいれば気づかぬうちに勝手に深まっているものなんだ」


「勝手に深まる?」


「そうだ、お前がエドウィンの事を気づいたら好きになっていたのと同じように仲が深まるのも気づいたらそうなっているものだ、だからそんなに意識しなくても大丈夫だ、お前はお前のペースでエドウィンと仲を深めていけば良い」


「ん、わかった」


 シルの言葉にシェフィーネ王女も納得したようだ。


「ところで兄上様」


「ん? どうした?」


「兄上様はシル様の事をいつシルって呼ぶようになったのです? 話を聞く限り最初はシルフィスタ王女と呼んでいたのです」


「あー、それは婚約が正式に決まってすぐだったな」


「ああ、私だけに対する呼び名が欲しいと言ったらケイネスがそう呼んでくれたんだ」


「なるほど、あれ? 私シル様って呼んでるのです」


「私もシル姉様って呼んでる」


「二人は様をつけているがケイネスは呼び捨てだから良いんだ、もしケイネス以外で私をシルと呼び捨てする者がいたら、まあ、ここから先は言わなくても良いだろ」


 二人の前でそこから先は言わないが明らかにそう言う事だよな。

 こうして俺はシルとの馴れ初めを話し終えるのだった。

 そろそろエドウィンの特訓も終わる頃だろうな。

 そうなったらシェフィーネ王女と二人だけにさせてやろう。

 


 

読んでいただきありがとうございます。


これからも過去話を書こうかと思っています。

会話で少し出て来たケイネスの冒険者時代の話とかケイネスがガルドムに行く前の話とか。


面白かったらブクマと評価をよろしくお願いします。

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