過去話 悪事の証拠
「これは」
ルート達が証拠を集めるために動こうとしたら騒ぎを聞きつけたのかこの屋敷の使用人と思われる人が来る。
「あなたは?」
「私はこの屋敷の執事長をしております、それよりもこの状況は」
「まあ、簡単に言いますと、そこで寝ている侯爵が悪事をしていた可能性があるので今から強制捜査をするところです、本来なら陛下に伝えて騎士団にやらせるべきなのですが個人的にそうしたくない怒りをこの男に抱いているので」
「そうですか、わかりました、どうぞ隅々までお調べください、悪事の証拠もおそらく旦那様の部屋にあるかと」
意外な事に執事長はすんなり認めてくれた。
「意外だな、てっきり主を守るために反対するかと思ったのに」
「それは主がまともなお方ならそうしますが、旦那様は貴族の風上にも置けない男、むしろようやく神が私達に天罰を下す時が来たのかと思いました、どうぞこちらへ、旦那様の部屋にご案内します」
リックの問いにそう答える執事長。
俺達は執事長について行く。
「こちらです」
執事長が部屋を開けてくれたので俺達は中に入る。
「おそらくこの部屋のどこかにあるかと」
「ちなみに屋敷の地下は調べても?」
「どうぞご自由に、あの子達をようやく親元に帰してあげる事ができます」
あの子達、親元って。
「リックとシオンとミスチーは地下に行ってくれ、こっちは俺とルートとユーリで探す」
そう俺が言うとリック、シオン、ミスチーの三人は地下へと向かい俺達は侯爵の部屋で証拠の書類を探すのだった。
「簡単には見つからないと思ってたけど」
「思ったより簡単に出て来ましたね」
「これだけでも証拠としては十分ね、探せばまだまだありそうだけど」
意外にも簡単に見つかってしまった。
「旦那様は自分の部屋には誰も入れないようにしていましたから」
「なるほど、それで安心して適当な場所に隠してたってわけね、当主としてダメダメね」
執事長の言葉にユーリがため息を吐く。
ユーリは無能な上司には嫌な思い出しかないからな。
「おーい若、戻ったぞ」
リック達が地下から戻って来る。
「それで、どうだった?」
「どうもこうも、ここの貴族ヤベー事してるぞ、地下にいたのは子供達だ」
不機嫌そうにリックが言う。
子供か。
「そう言った店で買った、わけじゃなさそうだな」
「ああ、話を聞いたら全員この領地の子供達だったよ」
やはりそうか。
執事長が親元に帰せるって言ったからもしやとは思ったが。
「・・・・・・なあ、俺、今凄くバカなんじゃないのかって思われる事を考えてるんだけど」
「何を考えておられるのですか?」
「いやさ、バンダ侯爵の事なんだけど、あの男もしかしてこの領地の子供を俺達が討伐した盗賊達に依頼して攫わせたんじゃないのかと思ってさ」
ルートの問いに俺は考えていた事を言う。
「それは何故?」
「いやさ、例えばだけど貴族の領地って平民が税をつまり金を納めたりしてるよな?」
「そうですね」
「それでさ、何となくだけど子供達が誘拐されたり行方不明とかになったりしたら当然親達は子供を探すのに必死になるよな?」
「ええ、親なら子供の心配をしますので取り戻すために必死になりますね」
「でも自分達で探すのには限界があるし、そこで頼れるとしたら自分達の領地を治めてくれている領主に頼ったりすると思うんだよ」
「確かにそうですね」
「そう、それで例えば何だけどさ、領主が子供達を探すのにたくさんの金がいるがそれだと領主の家の金がなくなり領地を治める事ができなくなってしまうのでそうなると領民達が納める税を多くしなければならなくなってしまうって言ったら、領民達はどうする?」
「自分達の生活が苦しかろうと子供のために無理をして多くの税を納めるでしょうね」
「そうだよな、だからもしかしてだけど、バンダ侯爵ってさ」
「ケイネス様の言いたい事が何となくわかりました、確かにそんなバカなって思いたくなりますね」
俺の言葉を聞いていたルートも頭を押さえて理解してくれたが、そう、あまりにもそんなバカなって思いたくなるんだよなぁ。
「なあ、ここまで聞くとさ、頭が良くない俺でもわかるんだけど、要するにあの男は自分の懐にある金を増やすために自分の領地にいる盗賊達を金で雇って自分の領地にいる領民の子供を誘拐してそして領民達に表向きは子供達を探すために金をたくさん使うから納める税を増やしてしまい申し訳ないとか何とか言って領民達から必要以上に多くの金を貰ってたって事か? 本当は誘拐した子供達は地下に監禁していたってだけなのに、自分の使える金を増やすためにしていたって言う事か?」
リックの答えに俺とルートは頷く。
だってそんな気がするんだもん。
そんなバカなって思うかもしれないけど。
「普通に考えたらそんなバカなって思うけど、何て言うか、ああいう男ならそんなバカな事を考えてもおかしくないって思えるわね」
ユーリも一応納得はするがそれでも半信半疑と言う感じだ。
うん、俺だって半信半疑だよ。
「あの、皆様信じられないかと思われますが、その通りでございます」
そう執事長が言う。
嘘だろ、本当にそんなバカな事を考えてしかも実行したのかよ。
なんか俺頭がおかしくなりそうだよ。
だって侯爵の爵位を持ちながら私利私欲のためにこんなバカな事してるんだぞ?
どう考えてもバカとしか言えないだろ。
「旦那様は本当に皆様がおっしゃられた通りの事をしておりました」
「なるほど、ちなみにあなたや他の使用人達は反対していたのですか?」
「もちろんでございます、このような事赦されはずがありません、しかし、私や他の使用人達は旦那様に強く逆らえずおまけに皆様が見たあのような用心棒まで雇っておりましたので力のない私や他の使用人達ではどうする事できず、ただ言いなりになる事しかできませんでした」
執事長は悔しさを滲ませて言う。
無理もない。
あんな連中が雇われてるんだ。
強く反対したら自分達の身が危険になる。
自分の身を守るための苦渋の決断だったと思いたい。
「他に助けを呼ぼうとも考えましたが、門番も旦那様に金を握らされたので助けを呼ぶ事ができなかったのです」
あの入り口の門番達もバンダ侯爵の息の掛かった連中だったのか。
道理で子供の俺にも剣を向けたわけだ。
眠らせるだけじゃ足りなかったか。
「しかも旦那様は誘拐した子供達を売ろうとしていたのです」
「まさかとは思いますが、既に売られた子は」
「とんでもありません!! そのような事は奥様が止めに入られましたので、誘拐した子供達は一人も売りに出してはおりません!!」
ルートの問いに執事長は慌てて答える。
売られた子が一人もいないのはひとまず安堵すべきだな。
にしてもそこまでしようとしていたなんて、あいつ人間じゃねえな。
「奥様がって事は、侯爵夫人はまともな考えを持っているって事ね?」
「左様でございます、奥様は心優しいお方です、ですが夫である旦那様には強く逆らえなかったのです、奥様は男爵家の娘ですが貧しい家でありそこでたまたま旦那様に気に入られたので男爵家も後ろ盾を得るために結婚したようなものでございます」
「要するに愛のない結婚ってわけね、まあ、よくある話ね」
ユーリの言う通り貴族の世界ではそう言う理由で結婚する事もある。
仕方ないにしてもできれば愛はあってほしいかもな。
「そう言えば子供達を見つけた時、俺達を敵だと勘違いしたのか一人の女性が必死に前に出て子供達を守ろうとしてたな」
「その方が奥様でございます、奥様は子供達を帰す事ができないのならせめて子供達を安心させようと自ら地下室に行き子供達に寄り添っていたのです」
「なるほど、一応悪い人ではなさそうだな」
「その通りです、ですが旦那様には強く言う事ができず、しかもご子息のゲド様まで旦那様に似てしまいました、奥様はゲド様をちゃんとした子に育てようとしたのですが、ゲド様は聞く耳を持たず」
「あー」
俺は素直に納得した。
だってあいつら似たもの親子だしなぁ。
侯爵夫人も頑張ろうとしたけどダメだったって事か。
だから息子を諦めて攫った子供達に寄り添って守る事にしたのか。
自分の息子をほったらかすのはどうかと思うが、あんな子になってしかも更生の余地がなさそうだと思ったらなぁ。
「ですが、今日あなた方が来たのは我々にとっては救いだと思いました、我々は旦那様の悪事を見ているだけしかできませんでした、私も同罪です、ですが奥様と他の使用人達には温情を掛けてあげてください、どうか」
そう言って執事長は頭を下げる。
個人的には何とかしてあげたいがこればかりは俺が決める事じゃないからな。
とりあえずバンダ侯爵の悪事の証拠とバンダ侯爵が盗賊達に依頼して誘拐したこの領地の子供達を親の元へと帰してから俺達は家へと帰るのだった。
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