過去話 依頼主に制裁を
依頼主の名を聞いた俺達はすぐにそこに向かう。
「ここで良いんだっけ?」
「ええ、ここがその依頼主の家で間違いないかと」
俺の問いにルートが答える。
「そうか、ミスチー、中に何人いるかわかるか?」
「はーい」
そう言ってミスチーは地面に手を当てる。
盗賊の時と同じように屋敷の中に何人いるのかがわかる索敵の魔法だ。
「・・・・・・」
「どうした?」
索敵を終えたミスチーが怖い顔をしている。
何かあったのか?
「若ちゃん、この屋敷の人、もしかしたらとんでもない悪事をしてるかもしれない」
「何があった?」
「うん、あのね」
ミスチーの話を聞いた俺達は険しい顔になっていた。
「どうやらこの屋敷では他にも調べなければならない事がありそうですね」
「吹けば埃がたくさん出そうだな」
「こっちには一応王女を攫ったと言う疑いの大義名分があるからそれを口実にできるわね」
「いきなり行くんだから証拠隠滅もされてないと思う」
ルート、リック、ユーリ、シオンが言う。
こうなったらやる事は決まった。
「正面から堂々と行こう」
俺達は正面の入口から行くと当然門番に止められる。
「誰だ!!」
「この屋敷の当主に用があって来ました」
「そんな話は聞いていない、怪しい奴め」
そう言って二人の門番は剣を抜く。
「俺は子供ですよ? 子供に剣を向けるのですか?」
「怪しい奴は子供でも容赦しない、当主からの命令だ」
「ミスチー」
「はーい、あなたは眠くなーる」
ミスチーが両手をかざすと二人の門番はその場で倒れてぐっすりと眠る。
ミスチーの催眠魔法だ。
「さて、入るか」
「若、一発かましてやれ」
「そうか、じゃあそうさせてもらうか」
リックが言うので俺は扉に思いきり蹴りを入れると屋敷の扉は吹っ飛び俺達は堂々と正面から入るのだった。
「な、何だ!?」
「どうも、大会以来ですね、バンダ侯爵」
ドアを開けるとそこには目当ての人物がいた。
そう俺達が入った屋敷はバンダ侯爵の家だ。
「お、お前は!!」
「あ」
侯爵の隣には息子のゲドもいる。
「貴様はリカード男爵の息子、こんな事してただで済むと思ってるのか!!」
「そちらこそただで済むと思ってるのですか?」
「何?」
「シルフィスタ王女を攫うように盗賊達に依頼をしたのはあなたですよね?」
「な、何の事だ?」
しらを切っているつもりだろうが反応で間違いないな。
「既に捉えた盗賊達のボスが全部白状しましたよ」
「あの男!! 簡単に口を割りやがって!!」
「認めましたね」
「あ!!」
バンダ侯爵は慌てて口元を手で押えるがもう遅い。
「随分な事をしましたね、しかもシルフィスタ王女を攫うように盗賊達に金を払って依頼をしたのもそうですが、他にもしてるみたいですし」
「な、何を言って」
「この屋敷の地下にたくさんの人がいるみたいですけど、その人達は何ですか? 使用人にしては随分たくさんいますね」
「なっ!?」
俺の言葉にバンダ侯爵そしてゲドまでもが驚いた顔をしている。
おいおい、まさか息子のゲドも知っているのか。
「どうやら陛下に伝えて強制捜査させた方が良いみたいですね」
「そんな事させるか!! おい!!」
バンダ侯爵が言うと屋敷の周りに何とも屈強で人相の悪そうな男達が武器を持って現れる。
やっぱり平和的に解決は無理か。
「ここに来たのが運の尽きだ!! 無駄な正義感を掲げるからこうなるんだ!! お前達構うは事ない!! 全員殺せ!!」
バンダ侯爵の命令で男達が一斉に襲い掛かる。
「ケイネス様、ここは我々にお任せを、全員敵を殲滅するぞ」
「おう」
「ま、こうなるよな」
「ミスチー、あなたは若を守りなさい」
「はーい」
ミスチーは俺の側にいてルート達が男達の対応をする。
「バカが!! たった四人でこの人数を相手にするのか!!」
「やっちまえ!!」
バンダ侯爵とゲドが言う。
こいつらやっぱ貴族として最低だな。
それから五分も持たずに場は静まるのだった。
「この程度素手で十分だな」
「おいおい、こんだけいて準備運動にもなりゃしねえ」
「武器さえ持てば何とかなるって思ってたのか?」
「戦闘のせの字も知らない素人集団の集まりね、素人がこんな危ない物持って振り回してんじゃないわよ」
「あっと言う間だったねー」
屈強で人相の悪そうな男達はルート達によって全員地面に倒れていた。
その光景を見てバンダ侯爵とゲドは口を開けて驚いている。
「な、バカな、こんな田舎貴族に」
「何でこんな平民の使用人に」
「あ? おいガキ、なんか言ったか?」
「ひっ!!」
シオンが睨んで言うとゲドはその場で腰を抜かして地面に尻もちをつく。
シオン、いくらクソガキだからって子供相手なんだから手加減しな。
「それで、バンダ侯爵」
「ひっ!? な、何だ!!」
俺が声を掛けるとバンダ侯爵は上ずった声を上げる。
「明らかに使用人とは思えない者達がいてしかも殺せと言った、どう考えてもあなた何か後ろめたい事があるって事ですよね?」
「このガキが、おい!! お前達!! 貴族の家で使用人をしていても所詮辺境の田舎貴族の家だ、どうせ安い給料なんだろ? 我が家なら二倍いや三倍の給料を出すから今すぐこのガキを捕らえろ!!」
「そうだぞ!! 平民のお前達からしたらかなりの好待遇だぞ!!」
そうバンダ侯爵とゲドが言う。
「あなた方は何を言っているのですか?」
「確かに金は貰ってるけど、俺達はそれだけで働いているわけじゃねえんだぜ」
「いやーね、私達の事金さえ払えば誰にでもつくと思ってるなんて」
「俺達にだって仕えるべき主を選ぶ権利はある」
「要するに私達若ちゃんの所が好きだからいくら金を積まれても行く気はないって事だよ」
ルート、リック、ユーリ、シオン、ミスチーが言う。
うちはそっちと違って金だけの関係じゃないんだよ。
「バンダ侯爵、俺も親父も別にアンタやアンタの息子から田舎貴族とか馬鹿にされても特に気にしたりはしないさ、だって相手をする意味も価値もないから」
「な、何だと」
「だが、今回はどうしてもアンタを赦すわけにはいかないんだよ、何でだかわかるか?」
俺は問うがバンダ侯爵は何も答えず冷や汗をかいている。
「わからないなら教えるよ、シルフィスタ王女を、俺の婚約者を盗賊達に攫わせて彼女を怖がらせて泣かせた事だよ!!」
「ひいっ!!」
俺が声を上げるとバンダ侯爵はその場で尻もちをつき既に隣で尻もちをついていたゲドは恐怖で口をパクパクして震えている。
「陛下に伝えるまでもない、今すぐこの屋敷の全てを調べてお前の悪事の証拠を見つけてやる、覚悟しておけ、いいな?」
「「・・・・・・」」
二人から返事がない、よく見ると二人は泡を吹いて気絶していた。
似たもの親子とはこういうのを言うのだろうか。
「とりあえず徹底的にこの家を調べるか」
俺が言うとルート達はすぐに行動するのだった。
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本日二話目の投稿です。
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