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過去話 そんなこんなで

「はあ」


 シルフィスタ王女との婚約が決まったがこれからどうなるのかと思うとため息が出る。


「ケイネス様、またシルフィスタ王女の事を考えておられたのですか?」


「ああ、向こうは俺を婚約者と認める気はないって言うからさぁ、婚約破棄すれば良いって言うのに負けた気がするから嫌だって言うんだよ」


「負けず嫌いなのでしょうね」


 俺の言葉にルートは苦笑いを浮かべる。

 

「けど、普通に考えれば王女様と婚約なんて凄い事じゃねえかよ」


「普通に勝ち組じゃない?」


 そうリック、シオンが言う。

 確かに普通に考えれば凄い事だし勝ち組人生だよ。

 辺境の男爵の息子が一国の王女と婚約なんて。


「でもなぁ、向こうは全く納得してないしさ」


「一応婚約するって形になったんでしょ?」


「まあ、そうだけどさ」


 ユーリの言うように一応婚約するって事にはなったが。

 すると部屋のドアがノックされてフレイアが入って来る。


「ケイネス様、シルフィスタ王女が来られました」


「ああ、わかった」


 婚約した日からシルフィスタ王女は毎日のようにうちに来るようになった。


「ケイネス、今日も私と勝負しろ」


「あ、はい」

 

 それから訓練場に行ってシルフィスタ王女との剣の模擬戦が始まる。

 シルフィスタ王女が婚約を納得しないと言っても自分から破棄するのはなんか嫌だとか言うから話し合った結果、シルフィスタ王女が俺と戦って勝てたら婚約破棄するって話になった。

 だからこそシルフィスタ王女は俺に勝つために毎日のようにうちに来るようになったのだ。 

 そして毎日のように剣の模擬戦をするが結果から言うと俺が普通にシルフィスタ王女に勝ってしまっている。


「くっ、何なんだお前、余裕そうな顔して」


 シルフィスタ王女が悔しそうに俺を睨んで言う。


「いや、別に余裕ってわけじゃ」


「嘘をつくな、全然汗もかいていなければ息切れもしていないじゃないか」


「あー」


 シルフィスタ王女は意外と相手をよく見ているから誤魔化しが効かないな。


「ケイネス様、そろそろ昼食のお時間です、シルフィスタ様もご一緒に食べていかれますか?」


 ここでカリーナが昼食を伝えに来る。

 シルフィスタ王女がうちに来てからカリーナがよく相手をしてくれたからか使用人の中では最初にカリーナと仲良くなり彼女だけはシルフィスタ王女をシルフィスタ様と呼んでいるのだ。


「食べる」


 剣の模擬戦を終えてからシルフィスタ王女はうちで昼食を食べるのもお決まりになっていた。

 うちは昼食は使用人も一緒に皆で食べるからシルフィスタ王女はそう言うの受け入れないのかと思ったが意外とシルフィスタ王女はうちの食事形式も受け入れて一緒に食べている。

 

「今更だけど、シルフィスタ王女って使用人の私達と一緒に食事をするのって嫌じゃないの? 平民と一緒に食事したくないとか言う貴族とかもいるし」


 ミスチーが気になったのかシルフィスタ王女に問う。


「? ここでは皆一緒に食事をするんだろ? だったら私もそれに倣うだけだ」


 ミスチーの問いにシルフィスタ王女はそう答える。


「へえ、良いじゃん」


「結構融通が利く王女様ね」

 

 シルフィスタ王女の答えにリックとユーリは感心している。

 シルフィスタ王女は融通が利く性格だがそれだけではなかった。 


「ケイネス、勝負だ」


「これから勉強だからその後で良いですか?」


「なら私も勉強する」


 俺はフレイアとルートに勉強を教えてもらってるがうちに来るようになってからはシルフィスタ王女も時々一緒に勉強を受けたりしている。

 シルフィスタ王女曰く王城では教わらない事を教われて勉強になるらしい。


「なるほど、平民は色々と大変なんだな」


「ええ、王族貴族と違い、あまり恵まれていないと言えるでしょう」


「だから私達王族貴族がちゃんとしないといけないんだな」


「その通りです」


「王城では教わらない事ばかりだな、ケイネス、お前は一人だけこんな授業を受けてずるいぞ」


「別にずるくはないと思うんですけど」


「仲がよろしいですね」


 俺とシルフィスタ王女の様子を見てフレイアは笑みを浮かべる。

 うーん、これは仲が良いと言えるのだろうか。

 

「黒パンと言うのはそんなに固いのか?」


「ええ、白パンと全然違うってくらい固いわよ」


 シルフィスタ王女の問いにラキムが答える。

 厨房で料理をしている姿が気になったのか遠目から見てたらこっちに手招きされたので俺達は厨房にいて料理人達と話をしている。

 王城じゃ料理している姿を見る機会がないから珍しく見えたんだろうな。


「これがその黒パンだけど食べてみる?」


「うん、食べてみる」


 シルフィスタ王女はシオンから黒パンを受け取りかじってみる。


「む、本当に固いな、石でも食べてるんじゃないかって思う」


 シルフィスタ王女はそれでも何とかかみちぎって食べるが固くて食べにくそうな顔をしている。

 

「固いだけじゃなくて味も白パンと比べたら美味しくないな」


「その固くて美味しくない黒パンを平民は毎日食べているんだ」


「食べやすくはできないのか?」


「大体はスープにつけて柔らかくさせて食べてるけどそれでも固いな」


 シルフィスタ王女の問いにシオンは答える。


「だとしたら私が毎日食べてる物は平民からしたら豪華な物だったんだな」


「確かに平民からすれば王族貴族の料理は豪華と言えるでしょう」


 シルフィスタ王女の言葉にジョルジュが答える。

 確かに貴族の料理は平民からしたら豪華な物だろうな。


「うーん、貴族の中には味が薄いとか不味いとか言って料理を捨てるような事をする者もいるが、この話を聞いたらとんでもなく贅沢でわがままな事を言ってる気がして恥ずかしくなってくるな」


 シルフィスタ王女の言う通りだな。

 平民からしたら贅沢でわがままで豪華な料理を捨てるなんてしたら怒りを露にするだろうな。


「これからは出された料理はちゃんと食べるようにしないとな、でも嫌いな物はどうしても無理かもしれないな」


「嫌いな物なら無理に食べなくても良いと思うぞ」


「そうね、ただ料理を粗末に扱ってくれなければ良いんだから」


「そうか、なら料理は粗末にしないようにしよう、せっかく作ってくれたんだからな」


 シオンとラキムの言葉にシルフィスタ王女はそう答える。


「シルフィスタ王女を見ていると王族の教育はしっかりしている事が窺えますな」


「そうだな」


 ジョルジュの言う事に俺も素直に頷けるのだった。 

 ここまででもわかるようにシルフィスタ王女は身分で人を見下したりしないと言うのがわかる。

 その証拠に。


「シルフィスタ王女は誰に対しても分け隔てなく話をされるな、平民どころかそれよりさらに下のスラム出身の私にも普通に話をしてくれるし」


「スラム出身でも今は使用人として働いているんだから立派な事じゃないか」


「あっはっは、器の大きい王女様だ」


 シルフィスタ王女の言葉にネロナは笑い声をあげる。


「あー、うー」


「おお、アニス、お前はかわいいなぁー」

 

 シルフィスタ王女がアニスに指を差し出すとアニスの小さな手がシルフィスタ王女の指を握る。


「アイシャ夫人、アニスは何歳なんだ?」 

 

「一歳になったばかりです」


「一歳か、ケイネス、お前アニスの事かわいいと思ってるだろ?」


「ええ、かわいいと思ってますよ」


「そうだろうな、私にも一つ下の妹がいるんだ」


「ほお、シェフィーネ王女の事ですな」


「ああ、性格なのか表情があまり変わらないんだが私にとってはかわいい妹だ」


 親父の言葉にシルフィスタ王女はそう答える。

 そう言えば第三王女はシルフィスタ王女の一つ下だと聞いた事があるな。


「ケイネス、妹がかわいいのはわかるが程々にしとくように気をつけた方が良いぞ、いき過ぎると嫌われるからな」


「あー、善処します」


「本当に大丈夫か?」

 

 そうシルフィスタ王女は笑顔で言う。

 そんなこんなでシルフィスタ王女は毎日のようにうちに来ては夕方くらいまでいる事が多いのだった。


「それじゃ、ケイネス、また来るぞ」


「ええ、お待ちしています」


「次は絶対に私が勝つ」


「あはは」


 そしてシルフィスタ王女は迎えの馬車に乗って王城に帰るのだった。


「おい若、シルフィスタ王女結構良い子じゃねえか」


「そうよね、周りの状況に臨機応変に対応できるし」


「平民の私達とも不通に嫌な顔しないで食事してくれるしね」

 

「平民の私が勉強を教えても質問したりしてくれますね」


 リック、ユーリ、ミスチー、フレイアが言う。

 うん、シルフィスタ王女は良い子だと思うよ。


「若、本当にシルフィスタ王女に負けたら婚約破棄するのか?」


 シオンが問う。

 そう言えばそうだったな。


「婚約破棄か、本人がそう言うならそうするけど」


「ケイネス様自身はどうなのですか?」


「俺か? 正直婚約破棄はしたくないかな」


 ルートの問いに俺はそう答えると皆が驚いた顔をする。


「何だよ、皆して驚いた顔して」


「驚くわよ、だって若全然そんな素振りなかったじゃないの」


 ラキムの言葉に他の皆も頷いている。


「んー、まあシルフィスタ王女の前ではあまりそんな素振りはしなかったか」


「つまり、ケイネス様はシルフィスタ様の事がお好きなのです?」


「ん? 好きだよ」


 カリーナの問いに俺は迷いなく答える。

 うん、シルフィスタ王女の事は好きだけど。


「若、一体いつからシルフィスタ王女の事を?」


「いつからって言われるとわからないけど、うちに毎日のように来てからシルフィスタ王女の魅力が見つかって、気づいたら何となく好きになってた」


「ふむ、まあ、そのようなものでしょうな、一緒にいて気づいたら好きになっていた、恋愛ではよくある事です」


 ネロナの問いにそう答えるとジョルジュが納得する。

 今度来たら言ってみようかな。

 必死に頼めば婚約者として認めてくれるだろうか。

 まあ、次に会った時に言うだけ言ってみるか。

 そう思っていたんだが、この数十分後に事件は起こった。


「おい!! 誰か来てくれ!! 大変だ!!」


 買い出しに行ったはずのリックが大声で叫ぶ。

 一体何があったんだ?


 

読んでいただきありがとうございます。


面白かったらブクマと評価をよろしくお願いします。

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