油で揚げる
「失われたもの図鑑に黒い鍋の使い方も書かれてるな、この通りにすれば良いって事か」
シオンは失われたもの図鑑に載っている黒い鍋の使い方を見ながら使っていく。
「説明文通りならこうなるんだが」
その通りにしてみると黒い鍋の半分以上に油が入っている。
こんなに油を使うって事なのか?
「入れ過ぎじゃないか?」
「そうだが、説明文にはそう書かれてるし、これで火をつけて適切な温度に調整するみたいだな」
火をつけて油を温める。
適切な温度になったらこのエビを入れるみたいだ。
「そろそろか、とりあえず入れてみるぞ」
そう言ってシオンは細かくしたパンを全体につけたエビを黒い鍋の中に入れる。
すると油が大きな音を立てて泡がたくさん出て来る。
「びっくりした」
「そうですね、まさかこんなに大きな音が出るとは」
油の大きな音にミスチーとフレイアは驚く。
俺も正直驚いてるよ。
こんなに大きな音が出るとは。
「あ、でもエビが浮かんで来たよ」
ミスチーが言うと確かに油の中に沈んだエビは浮かんでいた。
しかも細かくしたパンで包んでいたから白かったのに油に入れた瞬間大きな音と共に浮かんで来たら全体が白から茶色に変化していた。
これが油で揚げると言う事だろうか。
「そろそろか、出すのはこいつを使ってと」
シオンが手に持っているのは大きな箸だった。
黒い鍋と一緒についていた箸みたいで油で煮込んだ料理を掴んで取り出す時に使う道具のようだ。
「周りの油を取らないといけないな」
「じゃあ、これ使えるか?」
俺は水とかを拭き取るあの便利な紙を出す。
「ああ、使えるな、頼む」
「ああ」
俺は便利な紙を敷いてシオンが箸で掴んだエビを置くとエビに残った油を便利な紙が吸い取っている。
本当に便利な紙だな、何度も言うけど。
「残りも入れるか、この感じからして油が跳ねないように注意しないとな」
シオンは油が跳ねたりしないように気をつけながら残りの細かくしたパンで包んだエビを入れていく。
熱した油なんて飛んで来たら危険だもんな。
そして残りのエビも油で揚げていき便利な紙の上に置いて油を吸い取ってから皿に乗せる。
「これで完成だな」
皿の上には茶色く焼けたエビの料理が五本くらいある。
「これが新しいエビの料理か」
「早速食べてみよー」
「そうですね、食べない事には美味しいのかどうかもわかりませんし」
ミスチーとフレイアの言う通り、食べてみないと油で揚げる料理が旨いかどうかはわからない。
俺達はそれぞれ皿に乗せた油で揚げたエビの料理をナイフとフォークを手に持って切っていく。
切っていくと茶色いパンの中にエビの白い色が見える。
見た目は中々美しくて悪くないな。
俺はそれを口に入れる。
「うん」
エビは大抵焼いて塩で味付けしてそのまま食べるかスープの具材で使われるだけだったが、油で揚げたエビはそれ以上に旨かった。
「この細かくしたパンがサクサクとした食感で中のエビはそれとは違い弾力があって歯ごたえがとても良いですね」
フレイアの言う通り外はサクッとして柔らかく中はエビの弾力がありちょうど良い歯ごたえとなってそれが旨さをより引き立たせている。
「確かにサクッとして弾力があるけど、なんか物足りない気がする」
「そう言われればそうですね、何かもう一つ欲しい気がしますね」
ミスチーとフレイアが言う。
確かにそう言われればそんな気もするな。
旨くはあるんだけど。
「これ、普通にソースをかけて食べれば旨いんじゃない?」
「「「ああ」」」
シオンの言葉で俺達は納得する。
そうだよ、濃い味のソースをかけて食べたらもっと旨くなるはずだ。
ソースをかけて食べると思った通りより旨かった。
エビを細かくしたパンで包んだだけなのに意外とソースと合うんだな。
それから失われたもの図鑑からこの料理がないか探してみるとやはり載っていた。
そこに載っていたのはエビフライと言う料理だった。
読んでいただきありがとうございます。
本日二話目の投稿です。
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