味噌汁
「味噌汁の作り方はそんなに難しくないのじゃ、スープを作る時と同じように鍋に水を入れるのじゃ」
カホさんに言われて鍋に水を入れる。
「まずは具材を入れて煮込むのじゃよ、おお、ちょうど良いのがあるのじゃ」
カホさんは東国の品を二つ手に取る。
「何だこれ?」
「こんなの見た事ないな」
俺とシルはカホさんの手に取った二つの品を見るが何の品なのか全く知らない。
「これはわかめと豆腐じゃよ」
「わかめ?」
「とうふ?」
「わかめは海にある海藻、まあ海にある食べられる草みたいなものじゃな、そしてこっちの豆腐は豆から作られた食べ物じゃな」
「海にある食べられる草か」
まあ、陸にも食べられる草が自然に生えているから海にもそう言うのがあってもおかしくないか。
「これが豆から作られるのか? こんな白くて柔らかいものがあの小さい豆から」
シルが驚くのも無理はない。
なんせこの豆腐は見た目は白くて四角いが柔らかい。
それが小さくて丸くて固い豆から作られるなんて言われても信じられないだろう。
「儂も詳しい作り方は知らぬが、この豆腐は豆から作られるんじゃよ、ちなみにこの豆腐はこのまま食べる事もできるのじゃ、豆腐自体は味はしないからこれに醤油をかけたりして食べるのじゃ」
なるほど、醤油をかけてそのまま食べられるのか。
醤油って凄いな。
「味噌汁には他にも色々な具材を使うが今回はわかめと豆腐で作るのじゃ、まずはわかめと豆腐を入れて煮立たせるのじゃ」
「ふむ、作り方は本当にスープに近いな」
そう言ってジョルジュはカホさんの言う通りにわかめと豆腐を入れて煮込む。
それからしばらくして鍋が沸騰してくる。
「沸騰したら火を止めて味噌を入れるのじゃ」
ここで味噌の出番か。
味噌の見た目は茶色くて柔らかい塊だった。
「お玉に適量分入れてそのまま鍋に入れるのではなく箸などでかき混ぜてお湯に溶かしていくのじゃ」
「なるほど」
ジョルジュはお玉の味噌をお湯につけて箸でかき混ぜて溶かすようにすると沸騰したお湯は味噌の色に染まっていく。
「それからしばらくして今度は出汁を入れるのじゃ」
カホさんが手に取った品の中には砂糖や塩みたいに小さな粒がたくさん入っていた。
「出汁は食材を煮込んでその味が染み込んだ汁でのう、素材の味が染み込んで美味しいのじゃが時間が掛かるからこういう砂糖や塩みたいな感じにして作られた事でこっちの方が簡単にできるから人気になったそうじゃ、これは塩みたいにそのまま入れてよくかき混ぜると良いのじゃ」
出汁を入れてかき混ぜる。
すると味噌汁から香りがしてきた。
「初めての香りだから何だか不思議な感じだな」
「ああ、だが嫌な感じはしないな、何だか不思議と落ち着くような感じがする」
確かにシルの言う通りどことなく落ち着くような香りがするな。
そして味噌汁が完成するのだった。
「味噌汁も米と同じでお椀に入れて食べるのじゃよ、まずは汁を飲んでみると良いのじゃ」
全員がお椀に味噌汁を入れて俺達は味噌汁を飲んだ。
『はあー』
味噌汁を飲んで俺達はほっこりした気分になった。
「初めて飲んだはずなのにすんなりと受け入れられる」
「凄く心が落ち着くような感じがしますね」
ルート、フレイアが味噌汁を飲んでほっこりしている。
普段堅物な感じのフレイアがあんなにもほっこりするなんてな。
「独特な香りだけど癖になってしまいそう」
「心が落ち着くと言うのも何となくわかる気がする」
カリーナ、シオンも味噌汁を飲んでほっこりしている。
確かに心が落ち着くな。
「図鑑の説明にはお母さんが作ってくれた味噌汁をまた飲みたいと書かれていたけど、何となくわかる気がする」
「確かに朝起きてお母さんがこれを作ってくれたらなんか良いかも、お母さんの顔すら知らないけど」
ルティ、レティが味噌汁を飲んでほっこりしている。
うん、俺もよくわからないけど母親の味噌汁がまた飲みたいと言っていた図鑑の作者の気持ちが何となくわかる気がする。
本当に何でかわからないけど何となくわかる気がするんだ。
「はあー、味噌汁のスープも良いけどこのわかめや豆腐も良いわね」
「どっちも美味しいねー」
ユーリ、ミスチーが味噌汁を飲んでほっこりしている。
確かにスープだけじゃなくて具材のわかめや豆腐も旨くて良いな。
「この味噌汁ってご飯と合いそうだな」
「ああ、さっきの醤油をかけた目玉焼きと一緒に出されたら良いって思える」
リック、ネロナが味噌汁を飲んでほっこりている。
あー、確かにご飯と合いそうだし醤油をかけた目玉焼きと一緒に出されると良いかも。
「これが東国のスープか」
「悪くないねぇ」
ジョルジュ、ラキムが味噌汁を飲んでほっこりしている。
うん、味噌汁悪くないな。
むしろ良い。
「おおー、これぞまさに故郷の味じゃ、感動じゃなー」
カホさんが味噌汁を飲んで涙を流している。
カホさん良かったね。
味噌汁は心を落ち着かせてくれる味でした。
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