東国のスープ
「カホさん、これも調味料か?」
俺は東国の品で目の前に入った物を手に取りカホさんに見せる。
「おお、そうじゃ、それは味噌と言う調味料じゃ」
「みそ?」
「基本は味噌汁を作る時に使う調味料じゃな、味噌汁とは簡単に言うと東国のスープみたいなものじゃな、失われたもの図鑑にも載っておるんじゃないか?」
「えーっと、味噌汁って名前だったな」
俺は味噌汁のページを探す。
「あ、卵かけご飯が載ってた」
味噌汁を探していると先に卵かけご飯のページを見つけた。
さっき食べたからどんな風に書かれているのか気になったので見てみる。
「卵かけご飯、ご飯にかき混ぜた卵をかけた簡単な料理、まさにTKG、めちゃくちゃ旨いぞTKG、これだけで十分なTKG、朝はこれだTKG、けどもう食べられないTKG、恋しいよTKG、もう一度食べたいTKG、けどこの世界にはないTKG、ああ懐かしきTKG、ちなみにTKGとは卵かけご飯の略だ」
俺は卵かけご飯の説明を読み終える。
「何を言ってるのかわからないが、この本を書いた作者は卵かけご飯が好きなんだなと言うのは何となく伝わって来たな」
うん、シルの言う通り、何を言ってるのかは全くわからないが卵かけご飯が好きなんだなと言うのは何となくわかる。
「この、ティーケージーだっけ? 卵かけご飯の略ってどう言う意味だ?」
「それにこの世界と言う言葉も気になるな、この図鑑には似たような言葉が所々書いてあるし、この図鑑を作った者は何者なんだ?」
「気にはなるが、この図鑑はもう随分昔の物だし、作った者もとっくに亡くなってるからこの図鑑を作った者が何者なのかはわからないままだろうな」
「確かにそうだな、気になるが考えても仕方ないか」
「ああ、それより味噌汁のページだな」
失われたもの図鑑を作ったと思われる人物はもういないから知る方法なんてどこにもないしそんな事よりも今は味噌汁のページを見つけて味噌汁を作る方が優先だ。
そうして俺は味噌汁が載っているページを見つけた。
「あった、味噌汁、味噌を使ったスープ、日本人の朝食に欠かせない料理、朝味噌汁の匂いで目が覚めるともう朝かと思ってまだ眠いのに起きたりしたあの日が懐かしい、故郷の味、日本の味、母ちゃんの作った味噌汁がもう一度飲みたいよ、なんかこっちもこっちで気になる事が書かれてるな」
「日本人と言う言葉は確か米の説明の時にも書いてあったな、と言っても日本なんて名前の国は聞いた事もないしどこの文献にも載っていなかったぞ、あくまでこっちでは知らないだけで東国とかそっち方面では知っている可能性もあるが」
シルの言う通り、俺達もこの世界の全てを知っているわけじゃないからな、海を渡った先にある国は東国以外は知らない。
東国以外の国にもしかしたら日本と言う国がある可能性も否定できない。
「いや、確かに東国の周辺にも東国以外の国は存在するが日本なんて名前の国はなかったはずじゃ」
そうカホさんが言う。
じゃあ日本って何なんだ?
「けど懐かしき故郷の味って事は日本と言う国は東国と似ている可能性はあるな」
「確かに日本と言う言葉は東国でも古くから伝わっておる言葉じゃからのう、その可能性も否定できんのう、まあ、今考えたところでどうにもならんし、味噌汁を作る方を優先したらどうじゃ?」
カホさんの言う通りだな。
日本について考えても仕方ないしこの味噌汁を作る事にしよう。
こうして東国のスープと言われている味噌汁を作るのだった。
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