エドウィンの基礎体力と特訓初日終了
「じゃあ、まずはランニングから始めようか、とりあえずこの訓練場の周りを体力の限界まで走ってくれ」
「ああ、わかった」
そう言ってエドウィンは走り出す。
「エドウィン様は鍛えてるって感じじゃないからなぁ、二、三周くらいが限界だろうな」
「ああ、今のエドウィン様ならそれくらいできれば上出来だ」
リック、ルートが言う。
確かに今はニ、三周できれば十分だろう。
ここから増やしていけばいい。
しかし。
「はあっ、はあっ」
エドウィンは限界を迎えた。
「「・・・・・・」」
リックとルートは口を開けた状態で固まっている。
そりゃそうだ。
だってエドウィンは二、三周どころか一周も走れずに限界を迎えたんだから。
マジかよエドウィン。
「次は腕立てをしようか」
そうだ落ち着け。
たまたま走るのが苦手だったってだけで他がやれるかもしれないだろ。
エドウィンの腕立てが始まり、ルティとレティが見てくれる。
そして。
「腕が、もうダメだ」
「三回」
「十回どころか五回もできてない」
ルティとレティが何て言えば良いのかわからない顔をしている。
いや、まだだ。
まだ二つしかやってないんだから。
「次、腹筋やってみよう」
そして腹筋が始まりユーリがエドウィンの足を抑える。
「はあ、ぐう」
「四回ね」
「えー」
ユーリとミスチーが何とも言えない顔をする。
普段から笑顔なミスチーから笑顔が消えるくらいの結果なのか。
いや、まだあきらめるには早い、はず。
「す、スクワットいこうか」
エドウィンにスクワットをさせる。
「五回ね」
「ううむ」
ラキム、ジョルジュがどうしたものかと言いたそうな顔をしている。
その後もエドウィンに色々な基礎体力テストをやらせた。
その結果。
「これがエドウィン様の現在の基礎体力になります」
「ははは、これは何とも」
フレイアはエドウィンの基礎体力テストの結果をまとめた用紙を見せ、それを見たネロナは乾いた笑い声をあげる。
「これは、何て言いますか、その」
「クソザコ体力じゃん」
カリーナが言葉に戸惑っているとシオンがハッキリと言った。
「ケイネス、これは」
「ああ、そうだな」
シルと俺は互いに何とも言えない顔になっていたと思う。
「エドウィン」
俺はエドウィンに言う。
「残念だけど、シェフィーネ王女との婚約は諦めた方が」
「何となくわかってるけど、そんな諦めの目で私を見るな!!」
エドウィンが必死に叫ぶ。
「冗談だよ、ちゃんと鍛えるから安心しろって、けどなぁ」
正直どうしたものか。
貴族は騎士とかそう言った将来国を守る家系の生まれだったら身体を鍛えたりするが、王族はそんなに鍛えるって事はあまりない。
だから王族のエドウィンもそんなに基礎体力は高くないと思っていたが、まさかこんなに低いとは思わなかった。
「ケイネス、とりあえず基礎体力をつけるところから始めないとダメじゃないか?」
確かにシルの言う通りだな。
なら、やる事は決まったな。
「そうだな、エドウィン、まず最初にお前がする事は基礎体力を徹底的につける事だ」
「基礎体力」
「そうだ、お前の基礎体力はあまりにも低過ぎる、これじゃドラゴンと戦うどころかゴブリン一匹との戦いでも瞬殺されるだけだ」
「そ、そんなにか」
「ああそうだ、今のお前じゃドラゴンと戦うなんて夢のまた夢だと思え、むしろ同じ場に立つ事すら許されないぞ」
「た、確かに、こんな体力で勝てたら誰も苦労しないな」
「そうだ、とりあえずしばらくは基礎体力作りに集中させる、と言うわけでまずはこの訓練場を走るんだ、俺も一緒に付き合ってやるから」
「私も付き合うぞ、一人でやるより誰かとやった方がやる気も出るだろ?」
「あ、ああ」
こうして俺とシルとエドウィンの三人で訓練場を走る。
それを二時間くらい続けた。
「はあっ、はあっ」
「まあ、今日はこんなところだな」
「途中から歩いたりもしたけど、最後までやり遂げたのは上出来だな」
俺とシルは息を切らして地面に倒れているエドウィンに言う。
ちなみに俺とシルは鍛えてる方だからこの程度では息切れはしない、むしろ良い運動程度だな。
「とりあえずエドウィン、これから毎日シェフィーネ王女への勉強を終えたら帰って二時間ほど体力作りをするぞ、まずはそこからだ」
「勉強を教えてからか?」
「そうだ、ドラゴンを倒すと言ってもお前は本来シェフィーネ王女に勉強を教えるためにこの国に来たんだ、それをおろそかにするわけにはいかないだろ?」
「た、確かに」
「それに、お前の基礎体力を考えると下手に長時間鍛えても意味がない」
「意味がない?」
「そうだ、全く基礎体力がなさ過ぎる、そんな素人同然みたいな奴がいきなり長時感運動して鍛えても無駄に身体に負担を掛けるだけだ、下手したら腕や足や肩などが壊れてしまう可能性がある、鍛えて身体を壊したら元も子もないだろ」
「た、確かに」
「そうだ、ドラゴンを早く倒したいと焦る気持ちもあるかもしれないが、お前の場合はゆっくりと少しずつ時間を掛けてやるのが一番の近道なんだ、まあ、それでも特訓時間以外でも鍛えたいのなら、ルート」
「はい」
俺が言うとルートはある物を出す。
「これは?」
「重りだよ、これを両手と両足に巻いてみろ」
「あ、ああ」
俺に言われてエドウィンは両手と両足に重りを巻く。
「お、重い」
「それをつけて日常生活を送るだけでもかなり鍛えられる、風呂と食事と寝る時以外はそれをつけて生活してみると良い、無理なら最初は五分か十分くらいにして少しずつ重りをつける時間を増やしても良い、だがドラゴンを倒すために早く基礎体力をつけるのなら風呂と食事と寝る時以外につける事をおすすめするぞ」
「懐かしいな、小さい頃私もこれをつけて特訓していたな」
「最初の内はこれをつけて日常生活を送るのは大変だけどね」
「けど、重りをつけた状態で普通に日常生活を送れるようになったら、外した時には確実に強くなっていたな」
「ああ、だからエドウィン、重りをつけた状態で日常生活を普通に送れるようになったら基礎体力がついてきた証拠だ、頑張るしかないぞ」
「このくらい頑張れないとシェフィーネとの婚約なんて無理だと思え」
「わかった」
「最初は重りをつけた状態で何とか普通に動けるようになれば良い、慣れてきたら腕立てや腹筋などの筋トレをすれば良いさ、それに、お前が長時間運動しない方が良い理由は他にもあるしな」
「他にも? どんな理由があるんだ?」
「明日になればわかるさ、とにかくお前はしばらく毎日二時間くらいの特訓をするって事で良いな?」
「あ、ああ」
こうしてエドウィンの特訓初日は終わった。
そして次の日。
「エド様、大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
エドウィンはシェフィーネ王女に大丈夫だと言うが、明らかに身体の動きがおかしかった。
「やっぱりこうなったか」
「これは仕方ない事だ、私もなった時は痛くてたまらなかった」
俺とシルはシェフィーネ王女に勉強を教えているエドウィンを見て言う。
エドウィンは今全身に激しい痛みが来てるだろうな。
そう、今まで運動をしなかった者が急に激しい運動をした事により起こる、筋肉痛が。
だが、これもドラゴンを倒しシェフィーネ王女と婚約するためだ。
だからエドウィン、頑張れ。
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