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ブラッドプリンセスと言われた理由

「ブラッドプリンセスだけどさ、間違いがある、シルは人を切っていないし、敵国と戦争すらしていないぞ」


「そうなのか? じゃあ、何故?」


「スタンピードって知ってるか?」


「ああ、確かモンスター達が種類問わずに大量発生する事態だよな?」


 エドウィンの言葉に俺は頷いて続きを話す。


「そうだ、数年前だったか、その時にこの森でスタンピードが発生してさ、リカード家だけじゃ対処しきれない数だから王国の騎士団や魔導士団、さらに冒険者達と共に対処したんだよ」


「魔導士団って魔法使いの集団か? そんなにたくさんいるのか?」


「ああ、魔法使いは希少な存在だが、バハムスには騎士団と同じくらいの魔法使いがいる、ある事をして魔法使いの適性がある者が多く出るようになったのさ、まあ、そのある事は今は説明する時じゃないからその時が来たら説明するよ」


「良いのか? 一応私は他国の人間だぞ?」


「ああ、別に隠すほどの事でもないしな、そんな事よりブラッドプリンセスについてだが、そのスタンピードの時に俺とシルも参加したんだよ、当然俺はシルと一緒に行動してルート達も俺達の護衛で一緒に戦ったんだけどさ、その時のシル、凄い暴れまくったんだよ」


「暴れまくった?」


「ああ、ほらシルって王女だからさ、王女としての勉強をたくさんしないといけなくてさ、相当なストレスが溜まってたんだろうな、同じ王族のお前なら何となくわかるだろ?」


「ああ、確かにやる事はたくさんあったな」


 同じ王族だからかエドウィンは頷く。


「でさ、そのストレスが溜まっていた時にちょうどスタンピードなんて起きたからさ、それを発散させるためにもう思いのままにモンスター達を切りまくっていったんだよ、あの時のシルの顔は凄かったなぁ、王族の勉強のストレスを全部ぶつけるかのようにモンスター達を笑って切っていたんだぜ」


「笑って」


 その時の事を想像したのかエドウィンは冷や汗をかく。


「もう凄かったよ、弱いモンスター達なんかシルのそんな姿を見て恐怖で逃げだしたくらいなんだから、まあ、王女が笑いながら切るなんて、普通に恐怖を感じてもおかしくないな」


「確かに」


「スタンピードが終わった時に俺はシルに声を掛けたんだよ、満足したかって、そしたら」


『うん』


「って満面の笑みを浮かべて言ったんだよ、もうスッキリしたって言うくらいにさ」


「お、おお」


「けどさ、軍服や顔にモンスター達の返り血がつきまくってシルの全身が真っ赤に染まってたからさ、すぐにフレイアが指示を出してカリーナ達がシルを連れてそのまま我が家の風呂に直行だよ、念入りに身体を洗われたってシルが言ってたな、そりゃそうだよ、だって全身モンスターの返り血だらけの姿のまま陛下達の元に帰せるわけないしさ」


「確かに」


「で、ここからなんだけどさ、その時のシルの姿を見ていた吟遊詩人がいたそうでさ、シルの姿に心を打たれたのか各国を旅しながらシルの事を歌にしたから、それでブラッドプリンセスなんて他国で言われるようになったんだよ」


「なるほど、それがシルフィスタ殿がブラッドプリンセスと言われるようになった理由か」


「ブラッドプリンセスだなんて、人の婚約者に何て言い方してんだと当時はその吟遊詩人に怒りを覚えたが、シル自身は気に入ってさ、本人が気に入ったのなら仕方ないかと思う事にしたんだよ、全く運の良い吟遊詩人だよ」


「そうか」


 俺の言葉にエドウィンは苦笑いを浮かべている。


「つまり、シルは人を切っていないんだよ、ブラッドプリンセスと言うのは本当だけど切った相手が違うんだよ、人じゃなくてモンスターを切ってその返り血でそうなっただけなんだ、考えてもみろ、いくら王女でも人を何人も切った者が普通に学園に通えると思うか? 同じクラスになった者からしたら恐怖で授業どころじゃないぞ、一応他国の留学生もいるんだから」


「た、確かにそんな人物が普通に学園に通ったらこの国に恐怖を感じるな」


「だろ? シルは人を切っていないのに吟遊詩人が変に誇張したから他国で勝手に話が盛り上がってシルが人を切るとんでもない王女だと言う国も出て来ちゃったほどだからな、ガルドムへの留学も本来はシルが行く予定だったんだが、俺が代わりに行く事になったんだ」


「そうなのか?」


「ああ、最初はシルが行く予定だったんだが、ブラッドプリンセスの話が変に誇張されているからこのままシルを留学させるのはマズいと判断したんだよ」


「なるほど、その判断は正解かもしれない」


「まあ、ブラッドプリンセスの事もそうだが、シルは曲がった事が嫌いだから、カルロスやファルスみたいな奴を見かけたら注意してそれでも向こうが掴みかかって来たら正当防衛で手を出すだろうな、それでケガでもさせたら国同士の問題にもなりかねない、だから冷静に物事を判断できるって理由で婚約者の俺が代わりに選ばれたってわけ」


「なるほど、確かにお前は物事を冷静に見て判断できるからな」


 エドウィンは納得する。


「これがシルがブラッドプリンセスと言われた理由さ、まあ、ルート達に比べたらシルなんてまだかわいいものだよ、ほら」


 俺がルート達を指差すとエドウィンもそれを見るのだった。



読んでいただきありがとうございます。


面白かったらブクマと評価をよろしくお願いします。

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モンスターには、今でも恐れられてそうですねw生き残りがいればだけど! ちょうどストレス発散が出来て良かった!モンスターを倒して安全にもなったし、一石二鳥!
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