リカード家について
「はあ!!」
ルートが剣を抜き一振りすると一度に五体のゴブリンの首が飛ぶ。
そしてすかさず他のゴブリンの首や急所を切りつけ次々と倒していく。
「ふっ!!」
フレイアは槍でゴブリンの心臓、もしくは頭を突き刺していく。
「グギャアア!!」
ゴブリンが周囲からフレイアに襲い掛かるがフレイアは槍を振り回して周囲のゴブリンを一掃する。
「槍はただ突き刺すだけが攻撃ではありませんよ」
眼鏡を上げながら言うフレイアの周りにはゴブリンの死体が転がっている。
「はっ!!」
「ふっ!!」
ルティとレティが双子ならではのコンビネーションでゴブリン達を剣で切り倒していく。
「はあっ!!」
カリーナが投げナイフを複数投げると全てゴブリン達の頭を貫く。
「ゲギャア!!」
「お前、何カリーナを背後から襲おうとしてるんだ?」
カリーナを背後から襲おうとしたゴブリンをシオンが背後から掴み首をナイフで切る。
「おらおらぁっ!!」
リックが両腕にはめた籠手でゴブリン達を殴り倒す。
「何度見てもこいつらは美しさの欠片もないわね」
ユーリが双剣でゴブリン達を次々と切り刻んでいく。
「若者達は羨ましい限りだ、私はもう老いて昔ほど動けないからな」
「よく言うわね料理長、まだまだ現役でいけそうな動きじゃないか」
ジョルジュが剣でラキムが斧でゴブリン達を倒していく。
「な、何なんだこれは?」
エドウィンが驚いているので俺は説明する。
「リカード家の使用人は全員軍人として鍛えられている」
「軍人?」
「ああ、騎士とは違う者達、それが軍人だ」
「お前もそうなのか?」
「ああ、ちなみにシルも軍人だぞ」
「そう言えば初めて会った時、軍服を着ていたな」
「ああ、シルも最初は騎士として訓練してたが軍人の方がシルには合っていたみたいでな、だからシルは騎士ではなく軍人になったんだ」
「騎士とは違うのか?」
「あー、そうだな、騎士は剣を武器にしたりとか王や国を守ったりするようなイメージがあるだろ?」
「ああ、そうだな」
「軍人は様々な武器や体術などを使い、敵を殲滅する部隊って感じだな、騎士が国を守る者達なら軍人は敵を攻め滅ぼす者達って覚えとけばいいかもな」
「なるほど」
「それで、何故使用人が全員軍人なのか、それはこのリカード家がこの辺境の領地にあるからだ」
「どう言う事だ?」
「この森に入る時、壁を通っただろ?」
「ああ」
「あの壁は辺境であるリカード領を囲んでいる城壁のようなものでな、この森には多くのモンスターが生息していてな、そのモンスターから領地を守るためにあの壁が存在しているんだ」
「モンスター」
エドウィンは冷や汗をかいてその言葉を口にする。
モンスターとは普通の動物とは違う生物。
様々な姿をしていて大人しいのもいれば肉食動物のように人間を襲ったりするのもいる。
「この森にはモンスターが当たり前のようにいるんだよ、弱い奴から強い奴までな、当然ドラゴンも多く生息している」
「ドラゴンが」
「そんなモンスターから領民達を守るために毎日様子を見て討伐する必要があったんだ、その役割を担っているのがリカード家なんだよ」
「そうなのか!?」
エドウィンが驚く。
「そうだ、歴代のリカード家の者達やその使用人達は全員この森にいるモンスターと戦える強さを持っていた、いや、持たざるを得なかったんだ、だって考えてみろ、この森は城壁があるとは言え家から少し歩いた場所にある、つまり近くには凶暴なモンスター達がいると言う状況、そんな中に普通の使用人じゃ恐怖でまともに仕事もできなくなる、だからリカード家で働く使用人にはモンスターと戦える肉体面の強さとモンスターに恐怖しない精神面の強さが必要なんだ、執事やメイドの作法など後で覚えれば良いからな」
「なるほど」
「今の陛下になって実力主義で評価されるようになったから親父にもこの森にいるモンスターを討伐してくれている功績を称えて公爵の地位を与えられる話もあったんだ」
「そうなのか? だがリカード家は男爵のまま」
「親父が断ったんだよ、公爵になればこんな辺境の領地よりもっと広い場所に行く事になるからさ、当時はまだ実力主義の事をよく思わない貴族達もいたからな、親父はここの領民達を見捨てる事ができなかったし、何より親父自身が公爵に興味なかったんだ、まあ、面倒だって思うのもあったんだろうな」
「面倒?」
「親父は自由に動けるなら高い地位には興味ないんだよ、公爵になるとやる事が多くなるからそれが面倒なんだろうな」
「確かに、自由なのが似合う人って感じだったな」
エドウィンが納得した顔をする。
うん、親父ってなんか公爵って感じがしないんだよな。
まあ、面倒ってのもあるけど、ちゃんとした理由もあるしな。
「しかし、リカード家の使用人達がこんなに強かったなんて」
「だろ? あの日、シルが宣戦布告として捉えて成立してたらマズかったかもな」
「思い出させるなよ、陛下と対面した時も同じように思ったんだから」
「だろうな」
「これほどの実力者達がいたなんて、シルフィスタ殿のブラッドプリンセスの話だけが目立っていたんだな」
「あー、そのブラッドプリンセスなんだけどさ、ガルドムだとどんな風に伝わってるんだ?」
「どうって、敵を次々と切り伏せて敵の返り血で全身が真っ赤に染まった事からそう呼ばれていると」
「ちなみにその敵ってどんなのとして伝わってるんだ?」
「敵国の兵士じゃないのか?」
「あー、やっぱそう言う風に伝わってるのか、エドウィン、それには間違いがあるぞ」
俺はエドウィンに言うのだった。
読んでいただきありがとうございます。
この作品の軍人はこんな感じの設定となっています。
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