婚約の条件
「関係ない?」
「そうだ、お前がガルドムでした事など関係ない」
陛下はそう答える。
どう言う事だ?
私がガルドムでした婚約破棄が関係ない?
「お前がガルドムでした事などここにいる者達なら全員知っている」
「え?」
「当然だろ、第三とは言え王女が付き合っている相手だ、どんな人物か把握しておくものだ」
「それでは、あなた達も知っていて、それでもお付き合いする事に賛成してくれるのですか?」
「まあ、ガルドム王国でした事は確かに愚かな事だとは思いますが」
「それはガルドム王国での話であって、ここバハムス王国では関係ありませんしな」
「この国は今では実力主義でありますし、現にあなたはシェフィーネ王女に勉強を教えてシェフィーネ王女の成績を上げたと言う実績がありますし」
「若気の至りとかそんなものだと思っていますよ、まあ、そんな事した者が王族の婚約者になると醜聞だとか言う者もいるかもしれませんが」
「第三王女なら別に相手がそう言う人間でも王家にとっては特に大した弱みにはならないと思いますしね、言い方は悪いですが」
「とりあえず、我々はあなたとシェフィーネ王女の仲を認めていると思っていただいてよろしいですよ」
そう貴族達が言う。
私の事を知っていてそれでもシェフィーネとの仲を認めてくれるとは、この国の者達は寛大な者が多いのかもしれない。
「話を戻すが、お前がした事は関係ない、婚約を認めないのはお前が弱いからだ」
「弱い?」
「そうだ、純粋な力がお前にはない、だから婚約を認められない」
「なるほど、そう言う事ですか」
「がっはっは!! 認めなかった理由はそれですか、なら二人の婚約を認めないのも納得だ」
公爵と男爵はその陛下の言葉を理解しているようだ。
「ああ、そう言う事か」
「父上が認めない理由はこれか」
シルフィスタ殿と殿下も納得している。
すると他の貴族達も納得している様子だ。
一体どう言う事なんだ?
「陛下、それに皆さんがわかっていても肝心のエドウィンさんはわかっていないみたいなので、私が説明しますね」
王妃が説明をする。
「エドウィンさん、例えばの話ですが、シェフィーネの命を狙う凄腕の暗殺者がいたとしてあなたはその暗殺者からシェフィーネを守って撃退する事ができますか?」
「え?」
「陛下が言っている弱いとはそう言う事なのです、あなたがシェフィーネをそう言った者達から必ず守れるほどの純粋な力による強さがあるのかどうか、それを証明してほしいのですよ」
「純粋な力の強さ」
「そうだ、例えば騎士団長に勝てるほどの剣の腕があるのか、盗賊と出くわした時にその盗賊を討伐する強さがあるのか、暗殺者からシェフィーネを守る力があるのか、そう言った純粋な力がお前からは微塵も感じられない、だからシェフィーネとの婚約を認められない、今のお前はあまりにも弱過ぎる、そんな弱い男に大事な娘を任せたくはない」
「・・・・・・」
陛下の言葉に私は何も言い返せなかった。
確かに私はシェフィーネをそんな奴等から守れる力があるのかと言われれば、答えはないだ。
私にはシェフィーネを守れる強さがない。
謁見は終わり。
結局シェフィーネとの婚約は認められなかった。
「エドウィン、シェフィーネ」
二人でいると私に声を掛けたのはシルフィスタ殿、そして隣にはシグフィス殿下がいた。
「こうして直接会って話すのは初めてだな、改めてバハムス王国の王子、シグフィス・バハムスだ」
「初めまして、エドウィン・ガルドムです」
シグフィス殿下が自己紹介と共に手を差し出してきたので私も自己紹介をして手を差し出して握手をする。
こうして近くで見ると威厳が違うな。
こう言う人間こそが将来王になるべき存在なのだろう。
改めて私は王になるべき器ではなかったと認識されたな。
「エドウィン殿、先程の父上の言葉、厳しい事を言っていたが大丈夫だろうか?」
「ええ、大丈夫です、実際に陛下の言う通りだと思っていますので」
「厳しい事を言っていたが、どうか勘違いをしないでほしい」
「勘違い?」
「ああ、父上は婚約を認めなかったが、二人が付き合う事には反対していないんだ」
「え?」
殿下の言葉に私は驚く。
「やはり、婚約を認めないから付き合う事も反対されていると勘違いしていたか」
「ええ、まあ」
「別に父上は二人の関係には反対していないぞ、シェフィーネの相手がやっと見つかったんだからな」
シルフィスタ殿が言う。
「だがやっぱりシェフィーネと婚約するのなら純粋な強さを見せる必要がある、私の婚約者の条件が私より強い男と言った事は覚えているか?」
シルフィスタ殿の問いに私は頷く。
「あれは私自身もそうだったが、父上も私より強い男を婚約者に選びたかったんだ」
「父上は娘達には甘いからな、姉上の時も他国に嫁がせるなら姉上を大事にしかつ守れる強さを持った男を条件にしたからな、そのおかげで姉上は強い男と結婚してしかもお互いに愛し合ってる」
「こっちが引くくらいに溺愛って感じでしたね」
「ああ」
殿下とシルフィスタ殿は苦笑する。
「まあ、そんなわけでシェフィーネも婚約させるならシェフィーネを大事にしかつどんな敵からも守れる強い男が条件となる、シェフィーネを大事にしてくれると言う点は大丈夫だが、問題は強さの方だ、これをクリアしなければ婚約を絶対に認めてくれないだろう、いわばエドウィン殿は仮の婚約者候補と言う立場になる」
「なるほど」
一応婚約者候補としては認めてくれてはいるのか。
つまり後は私がシェフィーネを守れるくらいの強さを証明できれば良いのか。
しかし、どうすれば。
「ケイネスに相談してみろ、ケイネスならどうにかしてくれると思うぞ」
「ケイネスに?」
「確かに、ケイネスなら、いやリカード家ならこの問題をどうにかできるかもしれない」
シルフィスタ殿、そして殿下もケイネスに頼れば良いと言う。
一体どう言う事なんだ?
私はその後シェフィーネを学園に送り届けてから男爵、夫人と共にリカード家に戻り私は陛下との謁見であった事をケイネスに話した。
「ドラゴンを倒せば文句なしで認めてもらえるぞ」
「は?」
そう答えるケイネス。
いや、何を言ってるんだ?
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