ご挨拶
シェフィーネと付き合ってから数日が経ち現在。
私は、バハムス王国の王城へと行き、謁見の間で私はこの国の王と対面している。
その理由はシェフィーネとお付き合いする事になった報告とご挨拶のためだ。
だが。
「・・・・・・」
バハムス王国の王、名はシルバ・バハムス。
私はその人に今物凄く睨まれている。
正直に言おう、今にも気を失いそうだ。
(とんでもない威厳を感じる)
その放たれている威厳はとんでもないものだ。
父上と一緒にいた時にも威厳は感じられたが、それとは比べ物にならないほどのものだ。
一目見ただけで強者だとわかる。
『とりあえず、無事に帰って来いよ』
行く時にケイネスがそう言った理由がわかった。
本当に無事に帰れる気がしない。
叶うなら今すぐ帰りたいと思う。
正直私はここにいてはいけない気がする。
陛下は玉座に座って隣には王妃様が座っている。
最初は跪くようにしていたが陛下から立って良いと言われたので私は立ったまま陛下方と対面している形だ。
私の隣にはシェフィーネがいてその隣にシルフィスタ殿、そして私の付き添いとしてケイネスの両親、リカード男爵と夫人がいてさらには周りにもこの国の貴族と思われる方達が立っていた。
そしてその中で私はシェフィーネとお付き合いさせてもらうと言う報告をして陛下から物凄く睨まれて威圧を放たれている。
もう一度言う、今にも気を失いそうだ。
「エドウィン・ガルドム」
「は、はい」
陛下に声を掛けられて返事をする。
変に上ずってなくて良かった。
「他国の王子でありながら、娘のシェフィーネのためにこの国まで来てくれて勉強を教えてくれたそうだな?」
「はい」
「そのおかげでシェフィーネの成績が良くなったと聞く、本来ならこちらから出向くべきだが、中々その機会が訪れずに挨拶が遅れてすまなかった、国王としてではなく一人の父親として礼を言うぞ」
「もったいなきお言葉です」
いつの間にか陛下から放たれていた威圧がなくなっていてシェフィーネに勉強を教えた事を感謝された。
(まさか他国の王から感謝されるとは思わなかったな)
そんな事を思っていると陛下が再び話し出す。
「シェフィーネに勉強を教えてくれた事には感謝するが、シェフィーネと付き合う事になったとは、どう言う事だ?」
すると再び陛下から威圧が放たれて鋭い目で睨まれる。
やはりそこか。
「シェフィーネが久しぶりに帰って来たと思ったら男を連れて来てお付き合いする事になっただと? 貴様はただシェフィーネに勉強を教える先生として来ただけなのにシェフィーネとお付き合いだと? それでぬけぬけと俺の前に顔を出すとは良い度胸だな、その度胸は褒めてやるよ」
陛下は笑いながら言うが明らかに本心で笑っていない事はわかる。
「いや、その、私は確かにシェフィーネ王女と、その、お付き合いさせていただいております」
「エド様、王女はつけなくても良いんだよ」
「いや、ご家族とは初対面なんだから、いつもみたいにシェフィーネと呼ぶわけには」
「シェフィーネ、だと? いつもみたいに、だと? ほう、貴様付き合ってもう娘を呼び捨てで言うくらいにまで進んだのか?」
「いや、あの」
マズい、何を言っても無事じゃすまない気がする。
「がっはっは!! 陛下、威圧を放つのはその辺にしておいたらいかがですか? これだとエドウィンもまともに話せなくなりますぞ」
ここで陛下にリカード男爵が声を掛ける。
「ライザス、随分とこの男の肩を持つんだな」
「エドウィンは今我が家で暮らしていますからな、私にとってはもう我が子のようなものですよ、なあ、アイシャ?」
「ええ、エドウィンはもう私達の息子のようなものですわ」
いつの間に私はこの二人の息子になっていたんだ?
「それに陛下、今まで恋愛と全く無縁だったシェフィーネ王女が恋愛をしたなんて喜ばしい事ではありませんか」
「お前なぁ、他人事だと思って」
「陛下、男爵の言う通り、シェフィーネ王女に恋人ができた事は喜ばしい事だと私も思います」
「レグル、お前もか」
さらに陛下に声を掛けたのはこの国の宰相であり公爵のレグル・フェリクス。
ケイネスの話では確か彼の娘がバハムス王国の王子の婚約者だったな。
「シェフィーネ王女にも婚約者になりえるかもしれない者が現れたのは喜ばしい事ではないですか」
「そうですぞ陛下、素直に二人の仲を認めてはいかがですかな?」
「お前達簡単に言うが、お前達にもまだ幼い娘がいるだろ、その娘達が大人になって男を紹介して付き合ってるって言ったらどうする?」
「そんなのその男の出自や性格、裏表などありとあらゆるものを調べて相応しくなかったらこの手で葬りますな」
「とりあえずその者の覚悟を見るために地獄を見せますね」
男爵と公爵が言う。
恐ろし過ぎるわ!!
「ほら、お前達だってそうじゃないか、なら俺の気持ちだってわかるだろ?」
「がっはっは!! こりゃ一本取られましたな」
「リカード男爵、ここは公の場で他の貴族もいるのだからあまり陛下に馴れ馴れしく話さないように」
公爵が男爵に言う。
「リカード男爵は相変わらずですね」
「まあ、いつもの事ですし」
「我々もいつの間にかこれがないと始まらないって思うようになりましたしね」
周りにいる貴族達が言う。
そう言えばケイネスが言っていたな。
陛下と男爵と公爵は学園で友人関係だったと。
他の貴族達もこの光景がいつも通りと言う事は今も友人関係が続いているって事なんだな。
私にも大人になっても友人でいられる者が現れるだろうか。
「父上、それに公爵に男爵、そろそろ話を戻したらいかがですか?」
ここで陛下達に話し掛けたのは確か陛下のご子息であるシグフィス・バハムス殿下。
(彼が将来この国の王となるのか、まだ王になっていないのに何て威厳を感じるんだ)
彼からは物凄い威厳を感じる。
何て言うか王となるための覚悟がもうできていると言う感じが。
(私とは大違いだ、つくづく私は王に相応しくなかったな)
あまりの違いに私は絶望よりもむしろ清々しさを感じた。
彼が殿下と言う事はその隣にいるご令嬢が殿下の婚約者なのだろう。
二人共お互いに信頼しあっている感じだ。
私もウィスト嬢とお互い信頼できる関係になれていれば違う未来もあったのだろうか。
おっと、そんな事を考えてはダメだな。
今の私はシェフィーネと付き合っているのだから。
「これは殿下、申し訳ありません」
「申し訳ありません、殿下のおっしゃる通りです、陛下、話を戻しましょう」
「うむ、そうだったな、それでシェフィーネとエドウィンが付き合っている話についてだが、将来的に考えると婚約と言う形にすべきだが、ハッキリ言おう、婚約を認めるわけにはいかん」
陛下はそう発言するのだった。
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