告白の返事
「あ、いや、その」
いきなり私は何を言い出すんだ。
湖でたくさんのホタルが出て来て、その幻想的な場面を見て私は自然とシェフィーネ王女に告白してしまった。
いくら何でもなんの前触れもなくいきなり告白するのはマズいだろ。
あー、私は何てバカな事をしてしまったんだ。
完全にタイミングを間違えた。
「だ、だから、その、だな」
「ん、全部聞くから大丈夫だよ」
シェフィーネ王女に気を遣わせてしまった。
本当に情けない限りだ。
私はこんなだからウィスト嬢ともアリンス嬢とも上手くいかなかったんだろう。
「シェフィーネ王女、私はシルフィスタ殿に頼まれてあなたに勉強を教える、最初はただそれだけだと思っていたんだ」
「ん」
「それなのに、あなたに対して私は何故か心臓が高鳴る瞬間がいくつも感じるようになってしまって、それが好きだと言う感情だとわかったんだ、その好きは人としての好きじゃなくて、恋としての好き、つまりあなたに恋をしたんだ」
「私に?」
「ああ、私はあなたに恋をしている、どうか私と付き合ってほしい」
言った瞬間、いくら何でも直球過ぎないだろうかと思ってしまった。
だって仕方ないだろ。
今まで告白なんてした事ないんだから。
ウィスト嬢の時は父上が決めたから告白する事なんてなかったし。
アリンス嬢の時は話してる内に一緒になるってなって特に告白せずにあんなバカな事をしたんだもんな。
ロマンチックも何もない。
こんなの上手くいくわけがない。
「エド様、私もあなたの事が好き」
「え?」
え? 今何て言った?
好きと聞こえたんだが。
「今、私の事が好きと言ったのか?」
「ん、人としての好きじゃなくて、恋としての」
「な!?」
シェフィーネ王女の言葉に思わず声を上げてしまった。
だって絶対フラれると思っていたのだから。
「シェフィーネ王女、一体私のどこが好きになったんだ? 私なんか好きになる部分なんて何もないのに、それに、私はろくでもない人間なんだ」
「ろくでもない?」
「ああそうだ、私は」
私はシェフィーネ王女に自分のした過ちを話した。
本当は話さなくても良い事だ。
けど彼女には隠し事をしたくなかった。
「私は愚かな事をしてしまったんだ、だから、あなたに好かれるところなんて」
「ん、知ってる」
「え?」
「シル姉様がエド様に頼みに行く前の日に私に教えてくれたの、私に勉強を教えてくれる人に心当たりがあってその人がどんな人なのかを」
「え!?」
何て事だ。
まさか私に頼みに来たあの日より前には既にシェフィーネ王女に私がどんな人物か教えていたのか。
「私に勉強を教えてくれる人だし、歳の近い男の人と二人きりで勉強をする事になるから、私を不安にさせないようにシル姉様が教えてくれた」
「あー」
なるほど、確かにそうだ。
歳の近い男と二人きりだ、何も知らされなければ不安になるのは当然の事だ。
「どこが好きになったのかって言われるとわからない、だって一緒にいて楽しいって感じて、それが当たり前のようになって気づいたら、あなたの事が好きになってた」
シェフィーネ王女は顔を背けて言うが、そんな彼女の顔は赤くなっていた。
それを見て私は一気に心臓の音が跳ね上がった気がした。
「だ、だが、私で良いのだろうか、私はどうしようもない人間だし、あなたを幸せにできる保証なんてないし、あなたを傷つけて悲しませてしまうかもしれない」
「ん、良いよ、だって私は今までのエド様を見て好きになったんだから」
「っ!!」
「逆にエド様は私で良いの?」
「え?」
「だって私、表情が変わらないし、感情だって表に出ないし、人形みたいに気味が悪いって思わない?」
「思わないさ」
私はシェフィーネ王女に言う。
「確かに、私の婚約者だった彼女は表情も変わらない人形みたいで気味が悪いと感じていた、けどあなたに対してはそう感じなかったんだ、婚約者だった彼女はあえてそのようにしていたから気味が悪いと感じていたが、シェフィーネ王女の場合そのままの自分だった、だから気味が悪いなんて思わなかったんだ、だからわかったんだ、私は表情が変わらない事が嫌なんじゃなくて自分自身を隠しているのが嫌だったんだと」
そうだ。
ウィスト嬢が表情が変わったりしないのが嫌だと思ってた。
だから表情が変わるアリンス嬢が良いと思ってたが、今思えばそうじゃなかったんだ。
私は生涯共になるのなら、自分を隠さずに見せてほしかったんだ。
私の前でだけは本当の自分を見せてほしかったんだ。
「あなたは出会った時からそのままの自分を私に見せてくれた、だから気味が悪いだなんて感じなかった、だから私はあなたを好きになったんだ、だからもう一度言う、私と付き合ってくれ」
「ん、私もあなたが好き、だから、よろしくお願いします」
「シェフィーネ王女、ありがとう」
「違う」
「え?」
「王女はいらない、シェフィーネって呼んで」
「えっ!?」
シェフィーネ王女は言うが、いきなり呼び捨てとは。
だ、だが確かにいずれはそうしないといけないんだよな。
よ、よし、こうなったらもうどうにでもなれ。
「シェ、シェフィーネ」
「ん、よろしい」
そう言うシェフィーネは顔を赤くしながらも笑っていた。
ちょっと待て、それはいくら何でも反則じゃないのか。
顔を赤くしながら笑うなんてそんな顔反則以外の何者でもないだろ。
かわいいとしか思えないじゃないか。
「・・・・・・」
ヤバイ、心臓が激しく鼓動しているのがわかる。
シェフィーネも顔を赤くしながら私を見ている。
この雰囲気は間違いなくそう言う事だよな?
それしかないよな?
私はシェフィーネの肩に手を置く。
するとシェフィーネは一瞬ビクッとするが目を閉じる。
これは、良いって事だよな?
私はシェフィーネに顔を近づける。
「おい、もっとしゃがめよ、見えねえだろ」
ん?
「ちょっと押すんじゃないわよ、今良いところなんだから」
何だ?
「ってそんなに押したら」
『うあーっ!!』
私とシェフィーネは気になって後ろを向くとそこには森の茂みからケイネス達が倒れていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・まあ、何だ、付き合う事になったみたいで良かったじゃないか、おめでとう、俺達の事はそこら辺に転がっている石ころのようなものだと思って続けてくれ」
「できるかぁー!!!」
私は大声を上げるのだった。
できたら逆に凄いわ!!
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