お祭り
「・・・・・・」
私は今、凄く緊張している。
何故こんなに緊張しているのか、それは数日前に遡る。
私がシェフィーネ王女の事を好きだと自覚させられてケイネスから告白した方が良いと言われたのだが、どうしたら良いのかわからなかった私にケイネスが言った。
『良い話があるんだ』
『良い話?』
『ああ、実は数日後にこのリカード家の領地で領民達が夜にお祭りを開催するんだ』
『お祭り?』
『ああ、と言っても領民達が集まってたくさんの屋台が出たりして大人も子供も食ったり飲んだり踊ったりして楽しむ祭りさ』
『なるほど』
『その祭りには親父も領主として領民の長達と酒を飲んだりして楽しんだりしているのさ、俺や母さんやアニスも参加しているしルート達も家族と楽しんだりしているんだ、その日は学園も休日だからシルに頼んでシェフィーネ王女を連れて来てもらう』
『う、うむ』
『その時に二人きりにさせるからシェフィーネ王女をお前がエスコートするんだ』
『私がシェフィーネ王女をエスコートするのか!?』
『そうだ、しっかりやれよ』
と言う感じで話が進み私は今日リカード領の領民達が開催しているお祭りにシェフィーネ王女をエスコートする事になった。
シェフィーネ王女の事を好きだと自覚してから数日しか経っていないから心の準備もできていない。
物凄く緊張する。
私なんかにシェフィーネ王女を上手くエスコートする事ができるのだろうか。
「よお、エドウィン待たせたな」
一人でそんな不安な事を思っているとケイネスが来る。
その隣にはシルフィスタ殿とシェフィーネ王女もいた。
「じゃあ、俺とシルは二人で祭りを楽しんでくるから」
「シェフィーネ、エドウィンにしっかりエスコートしてもらえ」
「ん、わかった」
そう言ってケイネスとシルフィスタ殿は二人で去って行った。
その場には私とシェフィーネ王女の二人だけだ。
「その、シェフィーネ王女、その私服とても似合っているよ」
私はシェフィーネ王女の着ている私服を褒めた。
普段は学生服の姿しか見た事ないから私服は新鮮に感じた。
好きだと自覚したからか、私服姿の彼女がかわいいと思ってしまっている。
「ん、ありがとう、エド様の私服もとても似合っているよ」
「そうか」
シェフィーネ王女が私の着ている私服を褒めてくれる。
たったそれだけなのに、こんなにも嬉しいと感じてしまった。
好きな人に褒められると些細な事でも嬉しく感じるなんてな。
思い返してみたら、ウィスト嬢ともアリンス嬢ともこんな気持ちになった事はなかったな。
私はとことん本当の恋と言うものを、誰かを好きになると言う事を理解していなかったんだな。
「とりあえず、屋台を回ろうか」
「ん」
私はシェフィーネ王女に手を差し出すと彼女は私の手を取ってくれた。
手を取っているだけなのにこんなにもドキドキするものなんだな。
私はシェフィーネ王女と共に屋台を回る。
「あ、シェフィーネ王女、あそこにじゃがバターがあるぞ」
「じゃがバター?」
「ああ、ふかしたジャガイモに切れ目を入れてそこにバターを乗せた料理なんだ、単純だがとても美味しいんだ」
これはケイネス達が生み出したマヨネーズをふかしたジャガイモにつけたのが美味しかったので他にも何かマヨネーズ以外に合うものがないかと試した結果、ふかしたジャガイモにバターが合う事がわかり、それが失われたもの図鑑に載っていたじゃがバターと言う料理だったそうだ。
今では祭りとか中央広場の屋台とかにも出ていて貴族や平民にも人気の一品だそうだ。
「ちょうどお腹も空いて来たから食べたいと思うのだが、シェフィーネ王女もどうだろうか?」
「ん、美味しいなら私も食べてみたい」
「わかった、店主、じゃがバターを二ついただきたい」
「はいよ、お兄さんデートかい? 綺麗な彼女さんだね」
「いや、別にそんなんじゃ」
店主に言われて私は慌ててしまった。
照れながらもお金を払い店主からじゃがバターを二つ受け取り、私はシェフィーネ王女と共にどこか座れる場所へと向かう。
「温かい内に食べようか」
「ん、いただきます」
私達はじゃがバターを食べる。
「美味しい、ジャガイモとバターってこんなに合うんだね」
「ああ、私も最初食べた時は驚いた」
本当に驚きだ。
ふかしたジャガイモにただバターを乗せただけなのにこんなに美味しい食べ物になるなんて思いもしなかった。
この国に来てからは驚かされてばかりだ。
それからじゃがバターを食べ終えた私達は少し休むのだった。
「シェフィーネ王女、他に行きたい所はあるだろうか?」
私はシェフィーネ王女に問う。
正直予定も何も考えていなかった。
エスコートするなら予定を事前に建てておくのは男である私の役目なのに、シェフィーネ王女と一緒に行くと言う事から緊張して何も決めていなかった。
「特にない、エド様が行きたい所に行こう」
「そ、そうか、すまないが何も考えていなかったんだ」
「じゃあ、好きなように行こう」
「ああ、そうだな」
シェフィーネ王女に気を遣わせてしまったようだ。
だからと言って落ち込んでいる場合じゃないな。
それから私とシェフィーネ王女は好きなように祭りを回って行くのだった。
読んでいただきありがとうございます。
面白かったらブクマと評価をよろしくお願いします。