ドキッとした瞬間
「それで、どんな時にドキッとしたんだ?」
「ああ、最初にドキッとしたのは化粧水を作った後の事なんだが」
「あー、あの時か」
思えばあの時にその片鱗みたいなものが出てたな。
「その時シェフィーネ王女からお礼を言われた時、彼女の笑った顔を見てこう心臓がドクンとしたんだ」
『笑った顔!?』
俺達は全員驚く。
「お前、シェフィーネ王女の笑った顔を見たのか?」
マジで見たのかよ。
シルや陛下達ですらあまり見た事ないって言われているくらいの幻の表情とも言われている、シェフィーネ王女の笑った顔を見たのかよ。
「いや、ハッキリと覚えてないんだ、そういう風に見えただけかもしれないし、とにかくその時の彼女の笑った顔を見たら心臓の音が激しく鳴っていたような気がしたんだ」
「それは、好きなんじゃないのか?」
「そうなのか?」
「そうだろ、じゃあ聞くけど、お前ウィスト嬢に対して心臓が激しく鳴った事があるか?」
「いや、ない」
「じゃあ、アリンス嬢の時は?」
「今思い返せば、なかったな」
「つまり、シェフィーネ王女に対して初めてそうなったって事だろ? それってシェフィーネ王女に対して好きって感情が出始めているって事じゃないのか?」
「そ、そんな、私がシェフィーネ王女の事を?」
「まあ、これだけじゃまだ何とも言えないし、他にドキッとしたりとかなんか心臓がドキドキしたりとかはなかったのか?」
「ああ、おにぎりを作った時偶然シェフィーネ王女と手を触れてしまった時やシェフィーネ王女が私のためにおにぎりを作った時とかも感じたな」
「あの時の事か」
「あの時だな」
「あの時ね」
「ああ、あの時か」
「思えばあの時から我々も薄々気づいていたな」
ルート、リック、ユーリ、シオン、ジョルジュがその時の事を思い出す。
ジョルジュの言う通りあの時から何となく皆も気づいていたんだろうな。
「他には?」
「ああ、シェフィーネ王女が風邪をひいた時、確認するために彼女に手を当てたんだが、その時、一瞬ドキッとしてしまって」
『あー』
俺達は納得する。
むしろその気持ちはわかる。
恋愛小説とかでよくあるよなぁ。
熱を出した女の子に男が手を当てて熱を確かめたりする場面。
あれは恋人同士ならドキッとするな。
「他には?」
「そうだな、シェフィーネ王女って眼鏡をしているだろ?」
「ああ」
「そのさ、時々眼鏡を外す時があるんだが、眼鏡を外したシェフィーネ王女の素顔を見たら、その、眼鏡越しでもわかるんだが綺麗な瞳をしているなと思って、ドキッとしたな」
「なるほど」
眼鏡を外した時の素顔か。
何となくわからなくもないが。
「そう言えばフレイアも眼鏡を掛けているな、ルート、フレイアが眼鏡を外した素顔を見た事あるか?」
「はい、何度もありますね」
「で、実際どうなんだ?」
「そうですね、正直エドウィン様の気持ちはわかります、私も眼鏡を外した彼女の素顔にドキッとする事があります、普段から眼鏡を掛けているからこそ外した時の眼鏡を掛けている時とは違った別の顔を見られてそれが魅力的に感じてしまうと言ったところでしょうか」
「なるほど」
普段とは違う別の顔って奴だな。
確かにシルも普段は頼れる女性って感じの顔をしているが俺の前では時々恋する乙女のようなかわいい顔を見せたりするもんな。
あれと似たようなものだな。
「それでエドウィン、まだあるだろ?」
「いや、そのだな」
エドウィンが動揺している気がする。
なんかあるな。
「あったんだな」
「う」
「ここには男しかいないから大丈夫だ」
「えっとな、その、シェフィーネ王女に勉強を教えていた時の事なんだが」
「うん」
「わからないところがあると言うので私はシェフィーネ王女の隣に座りその問題を見ようとしたんだ、その時にだな、うっかりと言うか、不慮の事故と言うか、シェフィーネ王女の、その、胸が、私の腕に当たってしまったんだ」
「お、おおう」
思ったより結構深いところいったな。
「まあ、そりゃドキッとなるわな、シェフィーネ王女って、結構胸大きいよな」
「あなたねぇ、せめて発育が良いと言いなさいよ」
リックが言うとユーリが呆れた顔をして言う。
確かに、シェフィーネ王女もシルと同じくらい胸が大きいんだよな。
さらに言うと王妃様や他国に嫁ぎに行った第一王女もそうだったな。
「それで、そのシェフィーネ王女の胸が当たって、お前はドキッとしてしまったんだな?」
「あ、ああ、でも仕方ないだろ、だって女性の胸が腕に当たるなんてそんなの何も感じない方がおかしいだろ」
「うーん、確かに」
否定はしたいが実際俺もシルの胸の大きさに何も感じないかと言われれば、嘘になる。
「いやいや、若、そこは否定しなさいよ」
「けどユーリ、さすがに大きな胸の女性を見たらそこに目がいかないなんて事はないと思うし」
「もう、やっぱり若も年相応の男の子の反応をするんだから」
「いやいや、お前達だって男ならそうなるだろ?」
「私は心は乙女よ」
「関係ない、お前達本当に胸の大きな女性を見たらそこに目が行かないって言いきれるのか?」
俺が問うとルート達は何も言わずに沈黙を貫く。
お前らな。
「じゃあさ、口に出さなくて良いからせめて手を上げてくれ、お前達胸の大きな女性を見たら胸に目が行くか?」
俺が改めて問うと全員が何も言わずに手を上げるのだった。
「ほら、やっぱり大人になっても大きな胸の女性を見たらそこに目が行くじゃんかよ、ていうかユーリ、お前だって手を上げてるじゃないか」
「男でも女でも胸の大きな女性を見たらそこに目が行くわよ」
「どっちにしろ目が行くんじゃねえか」
「まあ、確かに胸の大きな女性が目の前にいたら、胸に目が行きますね」
「大きな胸って目立つからな、目立つものには自然と目が行くものだよな」
「まあ、否定はしないけど」
「そんな事もありましたな」
ユーリ、ルート、リック、シオン、ジョルジュが顔を背けながらも言う。
やっぱり目が行くんだよ。
「ていうかさ、さっきから女の胸の話をしている俺達って完全に変態じゃね?」
シオンが言う。
わかってるけど言わないでくれよ。
男しかいないからそう言う話にもなるんだよ。
「話を戻して、エドウィン他にはないのか?」
「あ、ああ、そうだな」
その後もエドウィンからシェフィーネ王女でドキッとした瞬間を聞く。
「なるほど、エドウィン、やっぱりお前はシェフィーネ王女の事が好きだな」
俺が言うとルート達も頷くのだった。
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