どう思っているか
「シェフィーネ、お前に聞きたい事があるんだ」
私はシルフィスタ・バハムス。
バハムス王国の第二王女だ。
どちらかと言うと皆が思っている王女とは思えないような性格をしていると思っている。
「何?」
私の言葉に答えたのは私の妹でバハムス王国第三王女のシェフィーネ・バハムス。
私と違ってあまり表情が変わらず見た感じ無表情に見えるが私にとってはかわいい妹だ。
「シェフィーネ、エドウィンの事をどう思っている?」
私はシェフィーネに聞く。
エドウィンとはガルドム王国と言う国の第一王子であり、まあ色々あって現在はシェフィーネに勉強を教えている、シェフィーネの先生のようなものだ。
そして何故私がシェフィーネにこんな質問をしたのかと言うとだ。
昨日ケイネスがエドウィンがシェフィーネを好きだと言うのにエドウィン自身がそれを自覚していないそうだ。
そんなバカなと思っていたが、ケイネスがこんな嘘をつく理由もないし本当なんだろう。
私から見てもエドウィンはシェフィーネに好意を持っていると思う。
いや、ハッキリ言ってシェフィーネの事が好きだと思う。
最初に会った頃のエドウィンのままだったらすぐに反対したが、今のエドウィンは悪くない、むしろ好感が持てると言っても良いかもしれない。
だからこそ私はシェフィーネがエドウィンに対してどう思っているのかを聞くべきだと思いこの質問をする事にしたのだ。
姉と言う立場でも王女と言う立場でもだ。
「エド様? どう思ってるって?」
シェフィーネは首を傾げて聞いて来る。
いちいちかわいい仕草だな。
おまけにその無表情がかわいく見えてしまうぞ。
っと、そんな事考えてる場合じゃない。
「どう思ってるかと言うのは、あれだ、エドウィンの事が好きなのかだ、ちなみに人としての好きじゃないからな?」
「人としての好きじゃない? じゃあ、どんな好き?」
「異性としての好き、つまり男としての好きだ、私とケイネスみたいな感じだな、恋人としてエドウィンの事をどう思っているかだ?」
ケイネスとは私の婚約者だ。
とても頼りになるし私よりも強いしカッコいい男だ。
正直ケイネス以外との結婚など考えられない。
ケイネスが死んだら、私もすぐに後を追うだろう。
それくらいケイネスが好きなんだ。
っと、私のケイネスに対する思いなど今はどうでも良かった。
今大事なのはシェフィーネのエドウィンに対する恋愛感情だ。
「恋人? エド様が?」
シェフィーネは考え出す。
そして口を開いて言う。
「シル姉様、恋ってどんな感じなの?」
「どんな感じとは?」
「恋の感情がよくわからない、今まで男の人とは会って来たけどわからない、お父様やシグ兄様、ケイ兄様の事は好きだけど、その好きとは違う好きなんだよね?」
「ああ、その通りだ」
「じゃあ、わからない、エド様の事は好きだけど、それが恋愛の好きなのか、ただ人としての好きなのかわからない」
そうシェフィーネは言う。
確かに考えた事なかった事をいきなり聞いてもわからないのは当然だ。
「シェフィーネ、想像してみるんだ」
「想像?」
「そうだ、エドウィンと二人で一緒にいて楽しいか?」
「エド様と一緒に?」
「そうだ、毎日勉強を教えてもらってるから想像はできるだろ?」
「うん」
シェフィーネは目を閉じる。
おそらくエドウィンと一緒にいるところを想像しているんだろう。
「エド様と二人で一緒にいるところ、想像してみた」
「うん、どうだ?」
「一緒にいて楽しいと思う、エド様といるのは楽しい、嫌じゃない」
「そうか、ならエドウィンと一緒に話をするのは?」
「嫌じゃない、エド様との話は楽しいよ」
「うん、ならエドウィンが他の女性と一緒にいたらどう思う?」
「他の女性と?」
「そうだ、シェフィーネの知らない女性、令嬢とかで良いだろう、その令嬢とエドウィンが二人で楽しそうに会話とかしていたらどう思う?」
「エド様が知らない令嬢と会話」
シェフィーネは考える。
この答えでシェフィーネがエドウィンの事をどう思ってるのかが大体わかるだろうな。
「シル姉様」
「ん?」
「何かおかしい」
「何がおかしいんだ?」
「エド様が知らない令嬢と一緒に楽しそうに会話とかしているところを想像したら、胸が苦しくなってくるの」
シェフィーネは自分の胸を押さえて言う。
「どうしてなのかわからない、エド様が他の令嬢と女性と楽しそうにしていると胸が苦しくなる、仲良さそうなところなんて見たくないって思う、私、おかしくなったの?」
「何もおかしくない」
私はシェフィーネに言う。
そう、お前は何もおかしくないんだ。
「お前がエドウィンが他の令嬢と女性と楽しそうにしていると胸が苦しくなる、仲良さそうにしているところなんて見たくないって思えるのは、お前がエドウィンの事を恋愛対象として見ているからだ」
「え?」
「私だってケイネスが知らない女と仲良さそうにしていると嫌な気分になる、まるで私の恋人を取られたかのような気分になるからだ、私の婚約者なのだから私を見てほしい、私だけを見てと思うのは当然だ」
そう、それは本当に相手の事が好きなら抱いてしまう当然の感情だ。
相手によってはそれが重くて嫌だと拒絶されてしまうだろうが、そう思わずにはいられない。
だってその人の事が好きで好きで仕方ないんだから。
「じゃあ、私のエド様に対するこの感情って」
「シェフィーネ、お前はエドウィンに弟のような感情や兄上のように兄のような感情を持っているか?」
「え?」
「エドウィンが他の女と仲良くしているのが、かわいい弟が取られるのが嫌なのかカッコいい兄が取られるのが嫌なのかって言う感じだ、いわゆる兄弟愛のようなものだ」
そう、世の中には兄弟愛を恋愛の恋と間違えてしまった者もいるからな。
今回は間違えずにちゃんと確認しておかないとな。
「? エド様は弟でもなければシグ兄様のような兄でもないよ?」
無用な心配だったようだ。
「ならシェフィーネ、お前の抱いているその感情は、間違いなく恋だ」
「恋?」
「そう、恋、愛だ」
「恋、愛、エド様に感じているこの感情が」
シェフィーネは何かを考えているのか下を向いている。
「・・・・・・っ!!」
するとシェフィーネの顔が真っ赤になっていた。
え? 何その顔?
お姉ちゃん、シェフィーネのそんな顔知らないよ。
そんなかわいい顔見た事ないよ。
「え? え? 私、エド様の事、好きなの? え?」
シェフィーネは両頬に手を当てる。
「シル姉様、どうしよう、私、エド様の事、好きなの?」
両頬に手を当てたまま尚も顔は真っ赤のままのシェフィーネ。
すまない、私も今のお前の表情がかわいくてどうしたら良いのかわからん。
ただ、これでハッキリしたな。
シェフィーネはエドウィンの事が好きだ。
間違いない。
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