婚約破棄騒動
俺の名前はケイネス・リカード、男爵家の息子だ。
今日は学園でパーティーが開かれていた。
令息や令嬢だけでなくその親や関係者達も参加している。
豪華な料理がたくさんあるから俺は遠慮なく旨い料理を食べていると何やら会場の真ん中あたりで誰かが大声で叫んでいる声が聞こえた。
その声に気づいたのか周りもそっちの方に顔を向けて様子を見ていた。
「どれも旨いな、さてと肉はどこだ?」
しかし、俺には関係ない事なので気にせずに肉料理を探しているとお目当ての物を見つけた。
「おお、旨そうな肉だな、焼いてもらって良いですか?」
「え?」
俺は肉を焼く担当の人に頼むがその人は何故か困ったような顔をしていた。
「どうしました?」
「どうしたも何も、この状況で焼くのですか?」
「何か問題でも?」
「いえ、あの、その、向こうが騒がしいですので」
「俺には関係ない事ですからね、何か言われたら俺に焼けと言われたって言えば良いですよ、無理なら俺が自分で焼きますよ」
「わ、わかりました、ただ今焼きますので」
担当の人が大きめの肉を焼いていく。
周りが静かだからか肉の焼ける良い音が会場中に響く。
「旨そうな匂いだな」
焼ける肉の良い匂いを嗅いでいると急に俺に声が掛けられた。
振り向くと俺に話し掛けてきたのはこの国の第一王子であるエドウィン・ガルドム殿下だった。
「ん? 何ですか?」
「何ですかではない!! 貴様、何のつもりだ!!」
「何のつもりだって、肉を焼いてもらっているんですよ、殿下も食べますか? 俺の次になりますけど」
「いらん!! この私が大事な話をしていると言うのに肉を焼くなどありえん!!」
「だって、俺には関係ない事ですし、だったら肉を食べた方が良いかなと思いまして」
「ふざけるな!!」
殿下は凄く怒っている。
どうやら自分が話している時に俺が無視して肉を食べたのが気にいらないようだ。
でも俺には関係ない事なんだが殿下のこのお怒りは簡単に収まりそうもないなと思い俺は話を聞くのだった。
「そもそも、殿下は何をそんなに騒いでいるのですか? 何も知らないからその説明をお願いしたいのですが」
「無礼な奴だ、だが知らないなら教えてやる、よく聞け」
殿下は俺に何があったのかを説明する。
話を聞くと殿下の婚約者である公爵令嬢、アンリエッタ・ウィスト嬢が殿下の隣で怯えた表情をしている男爵令嬢、リリン・アリンス嬢に嫉妬して悪質ないじめをしていたとか何とかで婚約破棄をしているそうである。
正直に思う、お前マジかよ。
マジで婚約破棄する気かよ。
「あのー、公爵令嬢であるウィスト嬢との婚約を破棄して新たに殿下の隣にいるアリンス嬢と婚約をするとおっしゃるのですか?」
「そうだ」
「はあ」
殿下の目、マジで本気だわ。
正直に言う、この国終わったんじゃね?
「何だ貴様、何か言いたそうだな?」
「いや、言いたいというか何と言うか」
「言いたい事があるならハッキリ言ったらどうなんだ?」
「え? 本当に言って良いんですか? 後で無礼だと言われても困るんですが」
「構わん、私が話している間に肉を焼いてる時点で無礼な奴だからな」
「はあ、そうですか、じゃあ確認しますけど、この婚約破棄はこの国の陛下や王妃は承知しているのですか?」
陛下と王妃は後でパーティーに来ると聞いているのでその二人が知っているのかどうかを聞く必要があった。
もし知っているならさすがにこの国はもうダメかもしれないと思うからだ。
「父上と母上には後で伝える、まあ二人も私達の真実の愛を認めてくれるに決まっている」
「エドウィン様~、私とても嬉しいです~」
「ああ、リリン、私もだ」
何だか二人だけの世界に入ってるが、とりあえず陛下と王妃は知らないようだな。
ならまだこの国は大丈夫なのか?
まあ、今はそんな事より確認を取った俺は思った事を言うのだった。
「あの、言わせてもらいますけど、殿下、頭は大丈夫ですか?」
俺がそう言うと会場にいた人達が全員青褪めた顔をするのだった。
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