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48.侯爵家への誘い

短めです。夜にもう1話、投稿出来ればと思ってます。



結婚式の宴会は夕方早くから始まったので、夜が深まる前には一旦お開きとなった。

ロイ君とフローラちゃんの乗った馬車を皆で「お幸せにいー!!」と見送り、ローズとも、またね、と言い合って別れる。


騎士団の方々や、ライズ商会の従業員さん達はまだ、飲み足りないようで、もう少しお店に居座るようだ。


さて、私もまだ飲めそうだけど、あんまり遅くなっては、今夜の宿に困るしそろそろ、と思って身支度していると、お隣にカサンディオ団長がやって来た。

しっかり飲まれていたようだけど、その様子はほとんど変わっていない。お酒、強いみたいだ。


「帰るのか?」

「はい、まだ飲めるなあ、くらいで帰らないと」

対する私はほろ酔いくらいかしらね、心地好いフワフワ感で、へらっとしながら答える。


「帰るなら送ろう。なぜ、アンダーソン達と帰らなかったんだ?」

「なぜって、今夜は結婚初夜ですよ?」

「また、あんたは、そういう事を簡単に」

「大切な夜でしょう?お邪魔虫が一緒に家に帰るなんて不粋な真似はしません。私は宿に泊まるつもりなんです」


ロイ君が、この日までどんだけ我慢してきたか!

やっとだよ、やっとここまで来たんだよ。そんなロマンチックな夜に、下宿の大家さんみたいな私は絶対にお邪魔だ。


今夜もだけど、明日の朝もさ、気を遣うじゃん?

もうちょっとイチャイチャしたいけど、アンズさん起きてるみたいだし、起きようか、みたいな事になるじゃん?

新婚の朝のイチャイチャを奪う訳にはいかないよ。


という訳で、私は外泊なのだ。


「はあ、とにかく送ろう。どこの宿を取ったんだ?」

「あ、まだ宿は取ってないんですよ、これから探すんです」

「は?明日は花市で休日なんだぞ、都の主要な宿は全て埋まってる」


「らしいですねー、大丈夫です。そんなに立派じゃなくても、そこらの安宿でいいので」

「安宿って、あんた、聖女だろ?自覚あるか?大体、そういう所は治安も悪い。なぜ早めに宿を、」


カサンディオ団長は、そこで言葉を切ると、ぴたりと止まった。


「、、、、、」


「あれ?カサンディオ団長?」

私は、突然フリーズしたカサンディオ団長に呼び掛けるけど、反応はない。

しっかりと固まっていらっしゃる。何やら考え込んでいるようにも見える。


「カサンディオ団長?」

おーい、と顔の前でひらひらと手を振ってみるけど、やっぱり反応はない。


カサンディオ団長は、しばらくじっくり考えてから口を開いた。


「今日は、侯爵家(うち)に泊まればいい」

「へっ?」

「治安の悪いような地区で、あんたを寝泊まりさせられる訳がないだろう」

「えっ、いやでも、突然それはご迷惑ですよ、ご家族もびっくりしますし」


「家族は領地にいるから、屋敷には俺と使用人だけだ、気にする必要はない」


ええっ、そうなの?そういえば、建国祭の時もそんな事を聞いた気がする。


えっ、でも、それって、むしろ、、、、気にしてしまうような。


まさに、「俺の部屋来るか?」みたいなさ、感じにならない?


そうすると、アレコレ、するのかしら?ってならない?

私は大人の女ですもの、そのあたりの機微は心得てましてよ。


「客間ならたくさんある。たまには使った方がいい」


あ、「俺の部屋来るか?」じゃなかった様子。

善意の宿の提供ですね。

アレコレ、を想像してしまった自分が恥ずかしい。


そういう事なら甘えてもいいかなあ、、、侯爵家、きっと広くて豪華だろうし。


「いいんですか?」

「ああ、構わない」

カサンディオ団長が優しく笑う。


その笑顔を見て私は、別にもう何かのきっかけで、今夜手篭めにされてもいいな、なんて考えてしまう。そっちの方がこの人を諦められるかも、とも思う。

その場合、もちろん、アレコレの前に私の決意は伝えなくちゃならないけど、、、、


おっと、ほろ酔いで、ちょっとタガが外れているみたいだ。いかんな、しっかりしなくては。

間違っても、私がカサンディオ団長を押し倒すような事にはならないように気を付けよう。

それは、本当に気を付けよう。


そんな決意を胸に、私はカサンディオ団長と侯爵家の馬車に乗った。





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