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【書籍化】異世界に聖女として召喚されましたが、私はただのアラサー女です   作者: ユタニ


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43.聖女リサちゃんの激怒


そして私は、洗いざらいぶちまけてやった。

結婚の話は寝耳に水だった上に、翌日には結婚させられた経緯を話し、それによって悲劇の恋人達となったロイ君とフローラちゃんの事を話し、私の素晴らしいアイデアにより、今は3人の家族として、暮らしている事を話した。



「養子だと?メイドではないのか!?」

愕然とするフェンデル王子。


ええ、人形劇では住み込みメイドとして暮らしてますものね。違いますわよ。私がそんな不安定な立場にフローラちゃんを置くと思うてか!片腹痛いわ!養子だわ!


「アンズさん、、、、それ、大丈夫っすか?騙されたりしてないすか?」

リサちゃんは、すごく不安そうだ。


「騙されてないわよ、2人とも、とてもいい子よ」

「騙そうとする奴らって、いい人そうなんすよ?」

「いや、マジでそこは大丈夫。てか、リサちゃん、会ってるのよ、ロイ君。ほら、飯ごうくれた騎士の男の子居たでしょ?」


私の言葉にリサちゃんが記憶を辿る。



「、、、、、、、」



「、、、、、、、ええっ、マジっすか!?えっ、あっ、だからかあ!だから、あの人、米炊いてたんすね、しかも飯ごうで!」

「そうよう」


「うっわ、めっちゃ、爽やかなイケメンでしたよ!米のくれ方も、すっげ、スマートだったんす、“早くしないと、冷めますよ”みたいな。カッコよ!ってなりましたからね!

えー、あの人が夫、、、、」


「そうなの、大丈夫そうでしょ」


「まあ、カッコよかったっすけどねえ、、、って、違いますよ、大丈夫じゃないです、たとえ爽やかイケメンでいい人でも、大丈夫ではないっす、好きじゃないんですよね?あの爽やかイケメンの事。しかも爽やかには、恋人居るんすよね?」


「そうだけど、恋人もいい子なのよ。だから、まあ3人で楽しく暮らしてるのよ。という訳で、フェンデル王子からの結婚の話には、引いたけど、一件落着はしてるの」


「何言ってるんすか、してないっす」

「そう?」


「そうっすよ、それ、アンズさんに好きな人出来たらどうするんすか?」


リサちゃんの言葉に、


私は、ちらりと、黒髪の人を想い、でもすぐにそれは振り払う。

あの人は、今や侯爵。こっちは将来、離婚歴のある平民の女。想いを募らせても辛いだけだ。

恋してるなあ、、、くらいが、ちょうどいいんだ。


「いないもの、そんな人」

「出来た時っす。本当に好きな人が出来た時に、その人と結ばれないんすよ?」


「そんな都合良く好きな人なんて出来ないから大丈夫よ。それに、いずれは、ロイ君ともちゃんと離縁出来るだろうし」


「は?何言ってるんすか?」

「穏便に離縁出来る一番早い段階で離縁して、ロイ君はフローラちゃんと結婚するのよ」


「アンズさん、馬鹿なんすか?こっちで、離婚歴があって、身分もなければ、ほぼ普通の結婚出来ませんよ?」

「リサちゃん、結婚だけが生きてく道じゃないの。私は職業婦人として、生きていくの、わりと活躍してるのよ」


「新聞読んだから、活躍は知ってます、知ってますけどね。アンズさん、、、、何やってるんすか」

途方に暮れるリサちゃん。

何だかデジャヴだわ。



「リサ!何にせよ、アンズ殿は元気だし、もう良いではないか」

ここで、フェンデル王子が息を吹き返した。


「第二王子殿下は喋らないでください。そもそも、あなたが強引に適当に、アンズさんに結婚をさせたから、こんな事になってるんです」

一気に底冷えするリサちゃんの声。


「そんな、リサ」

「今すぐ、アンズさんの結婚を撤回してください」


「撤回したら、機嫌を直してくれるのか?」


フェンデル王子のこの言葉にリサちゃんがキレた。


「いい加減にしてよっっ!!」

リサちゃんが、ドレスをぐっと握って、だんっと、床を蹴る。


「何で、私の機嫌の為に、ころころ、適当に決めるんですか?

そういうの、嫌です、と前にも言いましたよね?

普通に扱ってください、と何度言えば分かるんです?浄化魔法が使える事がそんなに偉いんですか?聖女だけど、前の世界では平民なんです、高貴な生まれでも、育ちがいい訳でもないんすよ!

それを、聖女だから、あんな卑しい奴とはしゃべるな、とか、不用意に人目につくな、とか、挙げ句の果てには、花をくれようとした男の子まで平民だからと突き飛ばして、そういうの止めてって、言ってんすよ!

私の機嫌だけ見てんじゃねえよ!!!

私にだけ、優しくて周りに配慮ゼロとか、嬉しくないんだよ!!」



しーん。



絶句する私とフェンデル王子。



部屋を静寂が包む。



すごい迫力だ。

リサちゃん、ひょっとして、前の世界では少しやんちゃしてたのかしら。


私は、フェンデル王子を見てみる。もはや青い顔で立ち尽くしている。

うん、うん、今のリサちゃんは怖かったもんね。


でも、フェンデル王子は、果敢にも口を開く。

何としても、リサちゃんを失いたくないみたいだ。


「リサ、、、、しかし、子供とはいえ、男がお前に花を贈るのは許せなかったんだ」

フェンデル王子は、何とか声を絞り出してそう言った。


第一声、それかあ、、、。

フェンデル王子の言葉に私は遠い目になる。


そして、それで突き飛ばしたのかあ、子供を、、。

愛が重たいというか、一方的で変なのは分かった。

ひょっとして、卑しい奴としゃべるな、じゃなくて、本音は、他の男としゃべるな、だろうか。

人目につくな、も要は、男の目につくな、なんでしょうね。



「意味不明です」

リサちゃんが、絶対零度の丁寧語に戻る。


「リサ、その話し方は、本当に止めてくれ。とても辛い」

本当に哀しそうなフェンデル王子。

なんか、可哀想にも思えてきてしまう。


「第二王子殿下が辛くても、私には関係ありません」

「リサ、、、、」

フェンデル王子は、ちょっと涙目だ。


うーん、可哀想だ。

可哀想だけど、うーん。まずはご自分を見つめ直した方が良いのでは。


「アンズさんの事、きちんとした待遇をして下さい、と言いましたよね。それがどうして会った事もない人との結婚になるんですか?おまけに、その人には婚約者まで居たなんて、信じられないです。準備も配慮もアンズさんを思う気持ちも、何ひとつ感じられません。最低です」


トドメのリサちゃんの冷たいお言葉。

フェンデル王子は真っ白だ。


フラれろ、とは思っていたけど、ここまで燃え尽きてるのを見ると、何だか申し訳なかった気がする。



「アンズ殿っ」

うわっ、こっち来た。


「アンズ殿、お願いだ、リサを説得してくれ!結婚をして不幸になった訳ではないのだと言ってくれ。私は、私はリサに捨てられたらっ」

フェンデル王子が、ちょっと危ない目で、私に縋ってくる。

この目、知ってる、娘を心配するあまり変になってたナリード伯爵の目と似てる。


私は、思わず後ずさるけど、フェンデル王子は尚も縋ってくる。

両手を取られて、ぎゅう、と握られ、距離を一気に詰められた。


「お願いだ、アンズ殿、そなたならリサを説得出来るだろう?」

うわお、近い、近い、近い。

顔が近いよ。

確かに申し訳なかったな、とは思ったけど、鬼気迫ってて、怖い。


「あのっ、で」

私が何とか身をよじって逃れようとして、リサちゃんが「何してんすか、離れて!」と助けようとしてくれたその時、また部屋の扉が、ばーん、と開けられた。



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― 新着の感想 ―
第二王子盛大にフラれろ!わはははは
[一言] これ以上、ばーんってやったら部屋の戸が壊れないか心配よw とりあえず王子落ち着いてw
[一言] もうすぐ終わりなのは寂しいですが続きは楽しみです 盛り上がる所ですし 王子様…好きな子が嫌がってる所治すとか見せない様にするとか主人公氏に口だけで謝るみたいな発想ゼロでぶれませんね… どん…
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