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【書籍化】異世界に聖女として召喚されましたが、私はただのアラサー女です   作者: ユタニ


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14.新しい生活

***


フローラちゃんのお父様の許可も下り、養子縁組の提案をした1週間後には、フローラちゃんは正式にアンダーソン家の養子となった。

これでもはや家族だし、堂々と引っ越してきてもらう。


フローラちゃんは、今までやっていた“実家の手伝い”から正式にライズ商会の従業員としての採用となり、我が家から商会へ出勤する事ともなった。


騎士団で、ライズ商会で、バリバリと働くロイ君とフローラちゃんに、細々と手紙代筆の内職でお小遣いを稼ぐ私、、、、、。

頑張ろ、私。


さて、フローラちゃんが引っ越してくるにあたり、私とロイ君は再度、部屋割りについて話し合った。

私はロイ君に、フローラちゃんと2人で主寝室を使うように提案してみたけど、それはすごい勢いで却下される。


それならと、一番広い客室を一緒に使うように勧めると、ロイ君が、ぐぐいと詰め寄ってきた。そして初めて見る怖い笑顔で言う。

「僕に毎日生殺しになれって言うんですか?」


むう、、、、

ロイ君め、ここまで来ても、手を出さないつもりだな。

「結婚まで待つの?」

「待つつもりです」

「えー」

「残念そうにしないでください」

「えー」


あんまり焦れったかったら、サイファと共謀して何とかしよ。

まずはロイ君とフローラちゃんが酔うとどうなるか確認して、その具合によっては2人を酔わせて、お風呂上がりのフローラちゃんをロイ君の寝室に放り込んでしまえば、きっと、、、、


「アンズさん、悪い顔になってますよ。変な事考えてるでしょう」

「えっ、な、何を言ってるんだね、考えてないよ」

「止めてくださいよ、僕、フローラとはちゃんと段階を踏みたいんです」

「ふぁーい」

でも、あんまりだったら、絶対酔わそう、と私は固く心に決める。


そして、フローラちゃんは私の隣の部屋と決まり、本日、アンダーソン家にフローラちゃんを迎えた。



「何だか、変な感じですね」

てれてれしながら我が家の玄関ホールへ入ってくるフローラちゃん。

可愛いなあ、、、、もはや新妻みたいだ。

ちらり、とロイ君を見てみると真っ赤になって俯いていた。


「ロイ君、何なら今からでも部屋を」

「一緒にはしません」

「部屋?」

「何でもない、フローの部屋こっちだよ」

ロイ君は、私が余計な事を言わない内にと、フローラちゃんを引っ張って階段を上がって行った。


フローラちゃんの荷物を持ったサイファがその後を追おうとして、はた、と立ち止まる。

そして私の顔を窺ってくる。

私は、こくり、と頷いた。

サイファも、こくり、と頷いて後を追わずに玄関ホールにて私と待機する。


、、、、、、。


しばらくして、


ぱたぱたと、駆け足の音がすると、


「サイファ?フローの荷物は?」

そう言いながらロイ君が少し上気した顔で階下へ降りてきた。

前髪も少し乱れてる気がする。


チューだな?

私は素知らぬ顔でやり過ごしてあげる。


チューしてたな?

サイファも、口笛を吹きながらあさっての方を見ている。


「これだね、僕、運ぶよ」

ロイ君はサイファから鞄を取り上げると、また、ぱたぱたと駆け足で階段を昇って行った。


「フロー!荷物、あったよ!」

「あ、ありがとう、ロイ!早速片付けるわ!」

「う、うん、何か手伝うよ!」

「あら!ありがとう!」

大声で白々しい、ぎこちない会話が聞こえてくる。


「チューですかね?」

サイファが例の悪い笑顔で聞いてきた。


「チューでしょうねえ」

「そうですよねえ」

私達は何だか痒い思いをしながら、夕ごはんの準備へとかかる。

こういう痒い感じがこれから増えるんだろうなあ、ふふふ。


その夜は、牛ほほ肉のシチューに、マッシュポテト、海老とブロッコリーのオイル炒めに、チーズにオリーブのピクルスに、バゲット、といつもより豪華な夕食を4人で楽しく囲み、私達はめいめいの部屋へと引き揚げた。





***


翌朝、爽やかな陽光降り注ぐダイニング。

「おはようございます、アンズさん」

可憐な笑顔のフローラちゃんが顔を出す。


「おはよう、フローラちゃん」

にっこり挨拶を返す私。


「あ、お、おはよぅ、フロー」

そして、ぎこちなく恥ずかしそうに挨拶するロイ君。

「、、、うん、おはよ、ロイ」

こちらも、少し照れながら挨拶するフローラちゃん。


うん、分かるよ、何か照れるよね。一線を越えた訳でもないのに朝から一緒に過ごすって妙に照れるよね。分かるよー。


照れる2人を、どす黒い笑顔で見守るサイファ。

相変わらず笑顔が黒いぞ。


サイファの黒い笑顔も含めて、私の頬は緩む。

何とも素敵な朝だ。フローラちゃんを養子で迎えて良かった。ちょっと変わった構成の家族ではあるけれど今のベストはこれだと思う。


残る気掛かりとしては、この養子縁組をローズに報告する事くらいだ。


そうだ、リサちゃんにも報告しなくては、瘴気を払う遠征から帰ってくるの、いつだろう?

何せ、リサちゃんは、ロイ君との結婚についても知らない筈だし驚くぞ。「人妻っすか!?」とか言うぞ。


にこにこしながら、私は、いただきます、をした。





一旦完結です。ここまでお読みいただきありがとうございました!

ブクマや評価、いいね、本当に嬉しいです。ありがとうございます。


年末年始のお休みに短編でも、、、というつもりが長くなってしまった。

アンズさんの恋まで行けずで申し訳ないです。相手はちらっと、本当にちらっと登場させてたんですが、、、、

また、まとまれば投稿しようかなと思っています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王子はほんと腹立たしい。どうせ監視の意味も兼ねて結婚させれば一石二鳥とか思って結婚させたんでしょうね。ロイくんの婚約についてろくな調査もせずに。なんなら自分はいい事をしたくらいに思ってそう。…
[一言] 初々しい。ニヤニヤしますね。 ジャンルは恋愛だけど、主人公じゃない人が恋愛してもジャンル恋愛になるはず。 ただここに、旦那さん(?)の渋い感じの先輩?上司?がディナーに参加して主人公に一…
[気になる点] オマケの召喚だからって、アンズさんに何のケアもしなかったヤツらはハゲれば良い。 [一言] 続き!続きをぜひお願いしますです! アンズさんにはぜひともステキなダーリンと出逢って欲しい!…
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