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【書籍化】異世界に聖女として召喚されましたが、私はただのアラサー女です   作者: ユタニ


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12.無自覚天然たらし

***


その日の夕方、サイファが「出来ました、奥様」と例の悪い笑みで私に報告しに来た。

その笑顔は完全に「ぐへへ、奥様、あの若造に一服盛る準備が出来ましたんで、今夜は楽しんでくださいね」みたいな笑顔だけど、もちろんサイファの報告は、ぐへへ、、、ではなく、ロイ君の部屋に中からかけれる鍵を付けた事だった。


よし、まずは一歩ね。


物理的な抑止力というのは大切だ。

人間は間違う生き物だもの。システマチックに防止しよう、それが安全だ。


さて、次だ。

そろそろロイ君が帰ってくる時間だ。私は玄関で仁王立ちで、ロイ君を待った。


がちゃり、と玄関の扉が開く。

「ただいま戻りまし、わっ、どうしたんですか、アンズさん」

帰って来たロイ君が、いきなりの私の仁王立ちにびっくりしている。


ワンコめ、可愛くびっくりしやがるな。

ほんとに可愛い奴め、鍵付けて良かった。


「ロイ君、お話があります。あなた、フローラちゃんに、私の事を素敵な女性とか言ったらしいわね、私にそういうおべっかは不要です、止めましょう」

私は単刀直入に、非常に分かりやすくそう注意した。


ロイ君はぽかんとしている。でも少しぽかんとした後に、むっとした顔になって何とこう言いやがった。


「おべっかじゃありません、アンズさんは素敵です」


、、、、、、ん?


「まるで少女のような、少年のような無垢な様子なのに、中身はしっかり大人の女性で、とても素敵です、まるで野生の百合のようです」

真っ直ぐな強い眼差しでロイ君は告げる。


その目に、恋に浮かれる熱っぽさはない。とても真摯に私という1人の女性に向き合っての発言のようだ。

大分、フローラちゃんとよりを戻させてくれた恩人フィルターはかかってるように思うけど。


「僕の妻には、あなたは本当に勿体無い方です」

強い眼差しのままにロイ君は続ける。ちょっとその眼差し、ドキドキするぞ。


「フローラもサイファも、もちろん僕も、今やすっかりアンズさんの虜です」

この言葉に私の心臓が、どくん、と脈打つ。

これは、いかん。虜なんてダメだよ、ドキドキするよー。

なんて事をさらりと言いやがるんだ、ロイ君。


「ロイ君、ストップ。そこら辺で止めよう、私が勘違いするから、、、、、、いやはや、君は、、、危険な子だ、、、、、さては、無自覚天然たらしだな」

どうやら、そうだな。

これは、フローラちゃんが不安になる訳だ。

鍵付けて良かったあ。


「え?たらし?」

「そうだよ、ロイ君、今のはアウトだよ。たらし確定です。そして、ロイ君、他の女の事をそんな風にフローラちゃんに言ったら、フローラちゃんが不安になるよ。現になってたよ、知ってた?」


「フローが不安に?」

途端に、ロイ君の瞳がゆらゆら揺れる。

うむ、良かった。やっぱりフローラちゃんの事となると輝きが違うね。見よ、数十秒前の私よ、これが恋するロイ君の瞳の輝きだぞ、勘違いすんなよ。


私は今日の午後にあった事を話した。ロイ君の顔がどんどん曇る。


「100歩譲って私を褒めても良しとしても、その後、しっかりフローラちゃんに、君がベストだと伝えるべきだと思う。

“あれは所詮、野山の百合だよ、フローラ、僕の心の斜面には君という花しか咲いてないよ、ベイビー”くらいは言わないとダメよ」


「えっ?」

かあっとロイ君の顔が赤くなる。

もしかして、好きな子には大分奥手なんだろうか、触れるだけのキスしかしてないらしいし。


「という訳で、ロイ君は今から、ライズ商会行って、すぐにフローラちゃんの不安を取り除いてあげて。そしてついでにフローラちゃん父に4人での面会の約束を取り付けて欲しいの、私は暇だからロイ君とフローラちゃんと、お父様とで日取りを決めてね。

そして帰って来てから、もう一個伝えたい事あるから、心づもりしててね。こうなったら早めにフローラちゃんを合法的に我が家に迎えるわよ」


私はぐっと拳を突き上げる。

17才の愛らしい乙女が、恋人と他の女が1つ屋根の下で暮らしてて不安だ、と泣いたんだぞ、早急に何とかしなくては。

私の横で、いつの間にか来ていたサイファも拳を突き上げている。


「よく、分からないけど、分かりました」

ロイ君も付き合って、拳を突き上げてくれた。

ほんといい子。




***


そして、一刻ほどしてからロイ君は戻ってきた。

「フローラちゃんは何て?」

「、、、、どうせ、アンズさんにそう言えって言われたんでしょって言われました」

ロイ君が暗い。


「ロイ君、何て言ったの?」

「そのまま言いました」

「僕の心の斜面には君という花しか咲いてないよ?」

「はい」

「そのまま言ったのかあ」

「はい、でも、フローは、怒ってたけど最後は笑ってはいました」

「そうなの?じゃあ、上手くいったのかな?」

「どうでしょう、あ、ライズさんとの面会は3日後に取り付けましたよ」

「ありがとう、さて、じゃあ私の作戦をお教えしよう。あ、そうだ、忘れる前に言っとくね、ロイ君の部屋に鍵付けておいたから、今晩から寝る時は鍵かけてね」


「鍵?何故ですか?」

「ふふふ、物理的抑止力よ」

私はどや顔で言った。



お読みいただきありがとうございます。

よいお年を。

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