パスワードに想いを込めるのは間違っているのだろうか
なろうラジオ大賞5の投稿作品です。
今回も頑張ります。
私は天才と呼ばれる魔術士リリス。魔法に目覚めたのが5歳、その後30年間魔法の探求をしてきた。そして、今は大量の魔族の軍勢に囲まれ、極大魔法ファイヤーストームを撃とうとしている。
「パスワードを詠唱して下さい」
目の前に展開された魔法陣から無機質な声が聞こえる。これが私が長年開発した魔術の制約。長い詠唱で展開される魔法陣に更にパスワードを設けることで威力を極限まで引き出す。
嫌よ……言いたくない……
「リリス!魔法を急げ!こっちも長く足止めできない!」
わかってる……でも……あーもう!
「舐めてると物理的な方法で股間無くすぞ?この豚野郎!」
私が言葉をつむぐと魔法陣から無機質な声が発せられた。
「パスワードが解除されました」
その瞬間、魔法陣の輝きが増して炎の渦が巻き上がる。膨大な炎が魔族の軍勢に向かい、辺り一面が焼き払われた。我ながら凄い制約だと思うが、この制約の欠点は自分が恥ずかしいと感じる言葉でないと魔法の威力が上がらないことだ……
「いつも思うけど、リリスからそんな言葉を聞けるなんていいねー」
私だって恥ずかしい。私は冷静さを売りにしているのに……この時に限って仲間は嬉しそう。彼等は人を辱めて喜ぶ変態よ……
そのように思っていた瞬間、絶望的な魔力量を前方から感じた。おそらく仲間も感じている……これはマズいわ。この魔力量は魔王の四天王達……魔王と四天王を一度見たことがある私にはわかる。
「私がなんとかする……」
私は覚悟をして、極限魔法インフェルノの詠唱を開始した。
ここを乗り切っても私は死ぬことになるはず。できれば、クールビューティと言われるままでいたかったわ……
「パスワードを詠唱して下さい」
魔法陣から無機質な声が聞こえた。でも、仲間は逃げていなかった……そう、こういう奴等よ。でも、今回だけは逃げて欲しかった。私は覚悟を決めて言葉をつむいだ。
「ちゅき、ちゅき!魔王様ちゅきちゅき!一目見た時からキュンキュンしちゃった。その唇をペロペロしたーい!」
静寂の中で私の言葉は響いた……
「パスワードが解除されました」
無機質な魔法陣からの言葉の後、魔力は爆発的に跳ね上がり、辺り一帯は更地となった。だが、私は見た……四天王達の「はあ?何を言ってるのだ?」という冷めた顔を……そして、仲間の残念そうな悲しい顔を……
私は社会的に死んだ……そっと後ろから肩に手を添えられたのを感じたが、私は振り返ることはできない……
巽 悠衣子様に「ちゅきちゅき」って言わせたいと思ったら、ポイントを入れてください(笑)
皆様が良い小説に出会えることを……
茂木多弥