ある日同じクラスのお姫様を拾ったら
たった一日だけなのに、人生が大きく変わってしまった
そんな経験をした事はあるだろうか、僕は無い。
恋をしたら心を突き動かされる、なんて言うけどあいにく僕には無縁だった。常に日陰者の存在、それが僕――松本弘樹
僕のクラスには対象的な、光り輝くお姫様がいる。
それが目の前で突っ立ってる水口愛華
お姫様といってもセレブのお姫様とかではなく、学校の中のお姫様。僕の通う旭ヶ丘第2高校のお姫様こと、水口愛華。
その水口さんが大雨の中公園の前で突っ立ってる訳だが…
「そんな所で傘もささずに何やってんだ姫さまは。お節介であれだが、風邪ひくぞ?」
「別に。気にする事はないですよ、私は平気ですから。松本さんもお気にせずに。後姫さまなんて呼び方はやめてください、恥ずかしいです!」
わー、頭の上にぷんぷんマークが見えるわ。
こいつの怒り方可愛らしいんだよな、なんかぷんぷん!って感じで。
「雨の中びしょ濡れで立ち尽くしてる奴が平気なわけないだろーが。良かったら傘買いに行くか?」
「その、お言葉は嬉しいのですが…今手持ちがなくてですね…」
「なんだ、そんな事かよ。ビニール傘くらい奢ってやるから、一緒に行くぞ」
「すいません…迷惑をかけてしまって…」
「別にそれくらいいいっての。こういう時はありがとう、って言われた方が嬉しいもんだからさ?すいませんじゃなくてありがとう、で。」
何だかなぁ。明らかに様子が変なのは見て取れるけど。現に肩も震えてるしさ。
「じゃあ…ありがとうございます、松本さん…。」
「はいよ、どーいたしまして。なんか他に買いたいものとかないか?体冷えただろーし買ってやるよ」
「そんなそんな…あんまりにも申し訳なさすぎるので大丈夫です……」
「おう、そうか。それじゃ気をつけて帰れよ〜、風邪ひくんじゃねーぞー」
そういって振り返って歩き出そうとすると、突然腕を掴まれた…
「まって…待ってください……お願いします…」
と、急に目を潤ませながらお願いされたわけだ…正直この表情グッとくるな、可愛すぎんだろ…。大抵の男子なら即刻惚れてるレベルってやつだな
「な、なんだ…?どうかしたのか?」
「そ、その……」ふー、っと息を吐くとはっきりとした綺麗な声で言った。
「おうち……おうちとめてください!」
?????え、今この子なんて言った?俺の聞き間違いじゃなければ今とんでもないこと言った気がするんだけど…
「なあ水口、俺の頬抓ってくれないか?なんだか今とんでもねー事聞いた気がするんだよな」
「紛れもない事実です!ほんとに、お恥ずかしながら…。」
「身の危険とか感じねーのか!?俺これでも一応男なんだけどさ。ほら、泊めてくれそうな女の友達とかいねーの?」
「知っての通り私お姫様、だなんて呼ばれ方してるじゃないですか…そのせいもあって、みんなと仲良くはさせてもらってるんですけど、一緒に遊びに行くようなお友達が居なくてですね…誰も頼れないんです…。」
これだけ聞くと自意識過剰ここに極まれたり、なんて感じだけど紛れもない事実なんだよな。第1高校にもなってお姫様、なんて呼ばれ方することなんてないもんだよな。
「それで俺の所に来た、と。まあいいですけど…まあいいや、ここで話すのもあれだし、続きは俺の部屋でってことで。」
「ほら、着いたよ。ここが俺の家、一人暮らしだからあんま大きくないけど。」
「わぁ…ここが松本くんの家、ですか…すごい綺麗ですね…、男の子の一人暮らしってもっとこう…雑なものかと思ってました…」
「まあ俺も汚いのは嫌いだしな。あー、そのもし良ければだがな、風呂でも入ってくか?服ビッショびしょでこのままなら風邪ひきそうだし…。」
「あ、ありがとうございます…、お願いしてもいいですか?」
「はい喜んで、なんてな。お風呂ためとくとして、着替えどーするんだ?」
「……考えてませんでした、どうしましょう…。。
なにか松本くんの服で借りれるものがあれば、お願いしてもいいですか?」
「服かぁ…ほんとに学校の体操服とかしかねーかもだけど、それでいい?元々の服は洗濯機の中ぶち込んどくからさ。」
「それでお願いします…。」
「お風呂沸かしてる間にさ、ちょーっと不躾だけど、聞いてもいい?何かあったんだろうしさ、もちろん、言いたくなきゃ言わなくてもいいからさ。」
「私、どうしようもない気分になって、家出してきたんです。
あんたなんか要らない、どうして同じことが出来ないの、って。毎日のようにお母さんから怒鳴られました。
こないだ、模試が帰ってきたじゃないですか。その、酷い出来で…私あんまり頭良くないんですけど、お姉ちゃんがすっごく頭良くて…。MINAって、知ってますか?あれが私の姉ちゃんで…芸能界のスターで、頭も良くて。
でも私は頭も悪くて、何も出来なくて…お母さんが私の成績見て言ったんです…。あんたなんか要らなかった、MINAだけで良かった、って。」
なんというか、ひでぇ話だな……勝手に産んどいて、要らないなんてさ。あー、イライラしてきた、ほんっと良くねーな、この性格。
「あー、なんだ。とりあえず俺はお前の味方だ。お前が要らないことなんか絶対にないから、安心しとけ。水口は水口だし、大体成績だけで決まるようなもんじゃねーだろ?」
「……なんか、救われました…うぅ…あれ、涙が…少しだけ胸貸してください…」
「いいよ、それくらい、いくらでも借りてってくれ」
「すいません、お借りします…」というと、ぎゅーっと胸元に抱きついてきた。
こんな時に感じるべきじゃないのは分かってるけど、柔らかい…いい匂い、なんか変な気分になる……。
「うぅ……っ……辛かったよぉ…ねぇ、弘樹くん…私生きてていいんだよね…要らない子じゃないよね……」
「大丈夫、ちゃんと要る子だぞ…、生きてて大丈夫だからね。」と、頭を撫でてみる。
うわ、髪サラッサラ…てかホント綺麗な髪。
ほんと、めっちゃ可愛くて綺麗な女だな…。泣き顔まで可愛いとか、どうなってんだか。
「ねぇ、もう1回撫でて……今の、すっごく心地よかった…落ち着く。」
「んー?こうでいいか?今まで良く頑張ったな、よしよし。」
ほんと、気がどうにかなりそうだわ。こんな美少女に抱きつかれて、頭撫でて。今までじゃ有り得なかった事だし、そもそも女に抱きつかれたこともないし。
「ありがとう、弘樹くん…。暫くこのまんま、居てもいい?すっごく落ち着くの…。」
あー、ダメ。こんなんされたらすぐ好きになりそうじゃん。
非リア男子がこんな美人に抱きしめられたら、すぐ好きになっちまうに決まってんだろ…なんなんだほんと。
「いいよ、いくらでも。満足するまで抱きしめといていいから。」…時間が経てば経つほど、どんどん意識してきちまうんだよな、俺に抱きついてきてる水口のこと…。
身長はそんなに高くなくて、胸は意外とあって、髪は綺麗なロングで、少し切れ目のクール系な顔立ちで。でもめちゃくちゃ可愛い……ほんと、こんな時間続けば続くほど意識して仕方なくなってくるじゃん。
あったのが俺じゃなかったら、他の男にもこうしてたのかな……なんかそう思うと複雑…てか水口が苦しんでるのにこんなの考えてるなんて、ホント嫌な奴…。自分のことが嫌になるわ…
「ほら、風呂湧いたぞ。風邪ひかれたら後味悪いから、入ってきな」
「ねぇ弘樹くん…一緒に入っちゃ、ダメ…?まだ弘樹くんのこと離したくない…」
?!?!?!?!?頭の中がショートしそう
なんだその破壊力は!てかなんだよ、ほんと……
頭おかしくなっちまうって……
「お、お風呂はまずいんじゃないか……その、色々見えちまうだろうし…」
「うぁっ……何言ってんだろ、私……ねぇ、その代わりに1個お願い聞いてくれる……?」
「さすがにさっきなのみたいはあれだが、できる範囲なら聞いてやれるぞ」
「やった……その、愛華って呼んで欲しいな…。ダメ……かなぁ」
ほんっと、いちいち可愛いやつ……
「あ、愛華……これでいい……?」
「えへへ……へへ…いってくるね、弘樹くん」
………………弘樹くん呼びやばいんですけど!
女の子から下の名前で呼ばれる機会なんか今までの人生で1回たりともなかったのに、あんな美人に…しかもあんな照れながら言われてるの……ほんっとテロだろもう…どんだけ可愛いんだっての……ったく。
あ、シャワーの音だ……今頃水口はシャワーか…扉1枚隔てて、裸のお姫様……ダメだ、すっごいムラムラしてくる…。
すごい状況だもんな、ほんと。仕方ない……よな?
皆だって、こうなっちまうもんだよな…。
「弘樹く〜ん!シャンプーってどこですか〜!」
あーびっくりした、なんか変なことでも考えてるのばれたかと思った…こういうのって関係ないことでもビックリしちゃうよね…
「左から2番目のやつだぞー、隣がリンスな〜」
「分かりましたー!」
ほんと、すっげー事になったな……
「改めて、お風呂ありとうひろきくん。弘樹くんが居なかったら私…どうなってたかわかんないや…。」
「おう、それはどういたしまして。」
いやそれにしても……体操服の破壊力がやばい……主に胸元…。胸こんなでっかかったんだな……てか髪がえろい……
「弘樹くん可愛い…♡視線がバレバレですよ?」
「うぁ……それはほんと、すまん…」
やばいバレたやばい!!
人生一の恥だ……死にたい……
「許します、ふふ♡その代わり、私だけ……ですよ?弘樹くん…。私ならいくらでも、いいですからね…」
「っっ…それ、何言ってんのか分かってんのか?水口だってその……」
「愛華、でしょ?
シャワー浴びながら考えたんです、私はなんのために生きるのかなー、とか。なんで生きてるんだろう〜、とか。お母さんにも捨てられて、行き場のない私を泊めてくれて、お風呂まで入れてくれて。私には、私には多分弘樹くんしか居ないんです……。私を私でいい、って言って認めてくれたのは弘樹くんだけで、こんなボロボロな私を助けてくれたのも、元気にさせてくれたのも弘樹くんなの。
だからさ、弘樹くん。……暫く、私を隣に置いて欲しいな……なんて。ダメかな、私なんでもするよ?」
……急にこんな可愛いこと言われて、NOと言える男子がいるのかよ…こんだけ可愛くて、美人で。性格も良くて…
「当たり前だろ、気が済むまで俺の隣居てくれ、いくらでも泊めてやるからさ。」
「ありがとう……ありがとう、弘樹くん…。」
「どういたしまして…すっげー照れくさいけど。
そろそろ晩御飯だし、ピザでも頼むか。
好きなの選んでいーぞ」
「すいませんじゃなくて、ありがとう、だっけ。いい言葉だね。私はこの…チーズがいっぱい乗ったやつ食べたいな…」
「はいよ、注文しとく。俺も一旦風呂入ってこようかな、適当にくつろいでていいからね」
「わかりました〜!ほんと、ありがとうございます、弘樹くん」
「どういたしまして、んじゃ行ってくるわ」
やっぱお風呂は落ち着くな……自分で言うのもあれだけど、今日1日だけで色々ありすぎだろ……。
お姫様拾って、なんやかんや家に招いて
そこから抱きしめられたり…ほんっと、パンクしそ。今までの人生と密度が違いすぎるわ…
今までなんて、ただ普通に学校行って、一応いる、位の友達と喋って、授業受けて帰る、そんな彩りのない日常だったのに、気づいたら暫くあんな美人と住むんだもんな……。
さっきまでここに愛華が居て、風呂はいってたのか……
あーもう、ほんっとわけわかんね、頭洗ってさっさと風呂出るか…。
ドライヤー……めんどくさいしいっか、どーせそのうち乾くだろーし
「もう、ダメですよ?ちゃんと髪は乾かさないと…。私がドライヤーしてあげるので、こっちに来てください?」
「はーい、いっつも結局面倒くさくてしないんだよなー」
「ダメですよ〜?弘樹くんのサラサラな髪が傷んで欲しくないので〜!嫌なら私がやります!」
「あはは、ありがと。ほんとそういう所女子ってすげーよな」
「いつだって女の子は可愛くいたいものなんです。おかゆい所はございませんか?なーんてね」
「ああ、すっげー心地いいよ。ありがとう」
「本当ですか〜?とても嬉しいです、へへ。」
なんだかちょっと眠くなってくるな、心地よすぎて…
「ありがと…、なんか嬉しいわ」
「どういたしまして、ピザ届いたみたいです、とってきますね!」
…なんか、奥さん持った気分だな…。スラリとした足に、美しい髪に…ほんと綺麗すぎるだろ…
「弘樹くん……?食べましょ、ピザ。ちょっとお腹すいちゃいました…あはは。」
「それもそうだな……じゃあ」
「「いただきます」」
「ん〜っ!これすっごく美味しいです!チーズもトロットロでなんか深い味がします〜!」
「うお、ほんとだ。まじ美味しいなこれ。愛華のおかげだな」
「そんな事ないですよ〜、買ってくれてるのは弘樹さんですし。そういえば、お金大丈夫なんですか……?」
「あー、言ってなかったっけ。気にしなくていいよ。まあ色々あって、お父さん社長でかなりお金持ちだから。まあ、そのせいで家にはあんま帰ってこないんだけどな。」
「しゃ、社長……凄いですね…。いつか返しますから、お言葉に甘えさせてもらいます…。」
「それは父さんに言ってあげてくれよ、少ししたらこのことも話すつもりではあるからさ。」
「ぅぁ…なんか緊張しますね…頑張ります。、」
「はいよ、頑張れ。きっと受け入れてくれると思うからさ。」
「そうだと……いいなぁ…。」
「大丈夫だから……ふわぁ……っ、なんか美味しいもの食ったら眠くなってきた…。俺はここで寝るから、愛華は俺のベットで寝ていいぞ。」
「嫌です、弘樹くんは自分のベットで寝てください!
私こそこっちでいいので!」
「いやいや、女の子にリビングで寝かせる訳にはいかないなろ。諦めて俺のベットで寝なよ」
「そういうんだったら……一緒に寝る、とかどうですか?」
「はぁ!?ささ、さすがにダメだろさすがに!」
「ダメじゃないです、合意ですから。…弘樹くんだけですよ」
……狡いだろ、それはよ。。完璧に男の落とし方分かってるやつじゃん…。
「はいはい、それでいいよ。」
「はーい♡行きましょうか、ベット。弘樹くんの部屋にも興味ありますしね〜」
「別にそんな変なもの置いてないからな。ただ寝るだけ、いいな?」
「はいはい、わかってますよー…ベット、失礼しますね?」
「おう……自分のベットに誰か居る、ってなんだか変な感じ…。なんか暖かいし」
「私も、ですよ?…弘樹くんが隣にいてくれて、安心してます。」
「そうか……おやすみ、愛華…すんごく眠くなってきた…」
「弘樹くん……寝ちゃったかな?」
「寝ちゃったみたいです……愛してますよ、弘樹くん……ちゅ♡」
読んでくれてありがとうございました。
拙いところが多いと思いますが、評価してくれると幸いです