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「時計屋」

「時計屋」の少年


実はもう一作あったりします

「時計屋の老人」


 その少年は軽い足取りで廃旅館を後にした。


夏の夜の午前二時、人通りのない道を歩いて行く。


「ふふんっ、今回は楽勝だったな」


『時計屋』と呼ばれる霊媒師がいた。


禿げ頭の枯れた老僧とチャラそうな少年の二人組。


主に不動産屋から事故物件の除霊依頼を請け負っている。


その日は、風光明媚な丘の上にある邪魔な廃旅館で除霊を行っていた。




「爺さんの腕は確かだぜ」


不動産屋から除霊の仕事を探して来るのは少年の仕事だ。


色合いの薄い髪と肌、整った顔にモデルのようなスラリとした身体付きをしている。


そして、彼には生まれつき恐ろしいほどの霊感があった。


その界隈では有名人だが、金にしか興味がない。


「ふうん」


ある日、紹介されたホームレスの老人。


その手に持つ黄金の四角い時計を一目見て感じた。


こいつは金になる。


「爺さん、これ着て」


コスプレ屋から探し出した袈裟けさを着せると、驚くほどさまになった。


「数珠なら持っておる」


「へえ、爺さん、モノホンか」


ちゃんと修行した僧侶だったようだ。


「この時計は、その魂の時間をさかのぼるのじゃ」


生前の行いを見るための秘宝だそうだ。


「仏の前で自らを晒け出し、悔いて信心することで成仏が叶う」


僧侶は扱い方を知らぬ者たちに悪用されることを恐れ、寺から持ち出した。


そのために放浪の身となったのだ。




『時計屋』は特に身元不明の事故物件を扱っている。


魂の過去から遺体や恨みの引き取り手を探せるからだ。

 

「ここか」


住宅街の中にある白い壁の家。


老僧が、今日の相手から取り出した記憶の場所である。


「お邪魔しますよ」


少年は、ひらりと音もさせずに塀を越える。


 しばらく待っていると白い長毛の猫がふわりと窓から降りて来た。


「ほら、お前さんの子だろ」


廃旅館の中に落ちていたピンクのリボン。


白い猫は、首の鈴をチリンと鳴らしてリボンをくわえ、丸く青い瞳で少年を見上げた。


「大丈夫だ、今頃はちゃんと成仏してるよ」


ふわりと振られた白い尾は二本に分かれていた。




 町の外れの丘の上。


朝方、少年は異様な雰囲気の廃旅館に居た。


「ありゃあ化け猫の子だよ」


浮遊霊の巣になっていた古い建物に迷い込み、亡くなった子猫。


運の悪いことに、妖力を持っていたため悪霊化しようとしていた。


 霊感は有っても祓うことの出来ない少年は、ある老僧と手を組んでいる。


「祓い方はアンタに任せたけど礼金は折半な」


綺麗に祓われた建物の中には、もう何モノも存在しない。


これが二人組の祓い師『時計屋』である。



お付き合いいただき、ありがとうございます。

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