別れ
「なんでエレベーターの中で変なことしてるの?」
「・・・あ」
(ついやってしまった)
彼は一人になるといつも変なことをしてる。
わたしはそんな彼が好き。
「なんかさ、一人でいると・・・誰も見てないって思うと奇功に走りたくなるんだ」
変な人だけど、すごく愛おしくおもう。
色んな人間を見てきたけど、こんなに苦しいものを抱えている人は見たこともないって同時に思う。
自覚してないのが苦しく思う。
こういうのを自閉症スペクトラムっていうらしい。
「バイト、退屈だなあ」
「早く帰って、したい?」
恥ずかしそうに彼はうつむく。
分かりやすい反応。
「でも、死にそうに具合悪いから今日はやめとく」
「やだ!」
具合が悪いのは、私のせいだと思っているみたいだった。
言わないのがすごく愛おしい。
でもわたしは悪魔。
契約で魂を奪っていることを彼は気づいていない。
「契約は怖い?」
「契約って何?」
「ううん、なんでもない」
ミキって名前を付けたことで悪魔である私を縛っている。
契約関係になっているのを気づいていないようだった。
ホントのことを話せないのが辛かった。
わたしを愛しているのが分かっていたから。