最強無敵の輝石使い(ジュエルマスター)と召喚されたおっさん
久しぶりの投稿です。
長編の設定の一部を使って簡単な短編を書いてみました。
輝石使い(ジュエルマスター)
貴石・輝石・奇石・鬼石
様々な石を用いた召喚術式。
この世界・・・ガーネットに存在する唯一の魔法。
ガーネットに重なるように存在する異相の世界より召喚する術式。
ガーネットに存在する全ての輝石使いの中でも最高最強のジュエルマスターとその仲間が長い旅のはてついに魔神との決戦。
「レイル、私達の輝石じゃ役にたてそうにないわ」
「大丈夫だ。ここまで、皆が頑張ってくれたお陰で俺は全ての力を出せる」
「頼むぞレイル」
「どのような者を召喚しようと我には敵うまい。人よどれほどの抵抗ができるか我にみせよ」
「リヴァイアサン・バハムート・玄武・青龍・白虎・朱雀・皇亀・麒麟・蒼竜・鳳凰・グレモリー・アスモデウス・フォルテウス・黄龍・メタトロン・リリス・シヴァ・大暗黒天・マーラ・ベリアル・モロク・アテナ・摩利支天」
次々に召喚されるもの。
「ミカエリス・ルシフェレス」
そして全てが召喚される。
「なるほど、人でありながら世界を滅ぼせるほどの召喚か。クク、この時を待ったぞ」
「感謝するぞ人の子らよ」
魔神はよろこびに顔を歪め軽く腕を振るう。それだけでミカエリス、ルシフェレスの2柱以外の全てのものが消滅した。
「そんな!たったひと振りでなんて」
「久しぶりにまともな食事だ。さて残りはミカエリスとルシフェレスだけか」
「主よできるだけ離れていて下さい。なんとか封印を試みてみますが・・・ルシフェレス、今回は同じ主に召喚された身不本意ながら協力しましょう」
「ふざけるな。と言いたいが相手が相手だ、時間稼ぎぐらいはしないとな」
「ミカエリス、確か〈神のごときもの〉だったか。ルシフェレスは〈神に叛くもの〉だったな。面白い神亡き世界でその名を名乗るか」
「エリス合わせろ〈ワールド・エンド〉」
「偉そうに言わないで下さい〈アブソリュート・ゼロ〉」
世界すら滅ぼす力、それが二つ同時に絡み合い幾重にも重なり敵を討つ。
「レーシング・グレイプニル」
「カタラ・スフラギダ」
さらに呪いと封印すら行使する。
「驚いたな。これ程のダメージ久しく感じなかったぞ」
そこにいたのは無傷の魔神。それにはその場にいた全ての者が絶句した。
「バカな。世界最強の召喚神だぞ」
「落ち込むな人よ。確かにあの魔法で我は死んだ。久しぶりの痛みと死を感じたぞ。だが、その程度では我を滅することも封じることも叶わぬ」
魔神・・・それは殺した相手の命と能力を全て喰らうもの。ゆえに最強にし
て最狂。もちろん、今召喚され一瞬で殺したものの命と能力も喰
らっている。
「だからこそ人よ、感謝したのだ。我から逃げ姿を消した食べ残しを召喚してくれたことにな。弱いとはいえ我の糧になるのだから、きっちり喰らわねば。ミカエリスとルシフェレスも我が喰らおう。それこそ主らの希望でもあろう?なにせ神を滅ぼし喰らったのは我なのだからな」
「「貴様!」」
「たかが神程度を喰らったからとそう興奮するな。」
魔神は嗤いながら二柱の額にそっと指を添える。それだけでミカエリスとルシフェレスは恐怖に震え座り込んでしまう。
そればかりか、護るべき召喚主がいるにもかかわらず本能で下がってしまった。
「ミカエリスとルシフェレスを名乗れど神の位階には程遠いか、しかしこの二つを喰らえば、あちらの世界の力在るものはほとんど喰ったか?」
「レイル様、他の輝石はありませんか?」
「無い。仮にあったとしても今さっき以上の力在るものは存在しない」
「どうするレイル。魔神は私達が思ってた以上の存在だが。・・・はっきり言って勝てるどころか封印や逃げれるイメージすらわかないんだが」
「ああ、俺もまさかここまでとは思わなかった。せいぜい魔王より少し強い程度だと思ったんだがな」
「レイルさん、これを」
レイルの手に渡されたのは、何の変哲もないただの石。
力在るものを召喚する輝石はその存在の力が強ければ強いほど、貴重なもの。現に先ほど召喚したものは全てこの世界に唯一の輝石から召喚した。
それと比べると今渡されたのは本当にその辺にある石と何ら変わらない。
「これは?」
「私の御守りです。初代勇者様のものらしく我が家に代々伝わっています。きっと私を護ってくれると。・・・」
たとえ召喚したとしても時間稼ぎにすらならないかもしれない。
けれど、他に何もない。だからこそレイルは召喚した。
「たのむ、せめてミカエリスとルシフェレスを送還する時間ぐらいはかせいでくれよ」
しかして召喚されたものは。
一言でいえばおっさん。良く言えばおじさんだろうか。
何の変哲もない普通の人間にしか見えない。
魔神のほうもその召喚に動きを止めてしまっていた。この状態であえて召喚するほどの存在に期待をしたが、召喚されたのは人間のおっさんではさすがの魔神も呆れて思わず苦笑してしまう。
「此処は、ガーネットか。・・・・・・久しぶりだな」
「くく、くははは、何を召喚したかと思えば人間だと」
男は周りを見回すとだいたいの状況を理解した。
あきらかに異質で強(狂)大な力と存在をもつものとそれに恐怖するもの、対峙するもの。
そして一人の少女の姿を見つけ召喚されたことに納得し間に合ったことに安堵し表情をゆるめた。
「レティ、レティシアの家族か?」
「その名は初代勇者の名前です。私はその子孫になります」
「・・・そんなにたったか」
「あのっ」
「いい、だいたいは理解したつもりだ」
「で、俺の相手はあんたか?」
「人があまりに存在が違い過ぎて我の力がわからぬか」
魔神が虫を振り払うように手をふるも、男はいつの間にかミカエリスとルシフェレスの傍にいた。誰にもその動きを知られること無く。
「あんたらもレヴィリアースから召喚されたのか」
「我を無視するか。人間ごときが」
「うっとうしい」
誰もが信じられないでいた。男の無造作な蹴りが魔神を吹き飛ばす。
「邪魔だから下がってろ。それとそこの3人もだ」
「いけません、貴方が敵う相手ではありません。今は逃げなければ」
「貴様、ホントに人か?今の一撃で我が命を数十も奪うとは」
「俺は人だよ」
そして一撃、それだけで魔神は再び吹き飛ばされる。
「お前、ホントになんだよ。エ、エリスは知らないのか?」
「フェレス。貴女こそ何か知らないのですか?」
もちろん二柱は何も知らない。神の代理として神に仇なすものとして世界の安定をはかってきた二柱にして、その男の存在はあまりに異質すぎた。
そして召喚したレイルとその仲間も戸惑っていた。
本来ならあの程度の石から召喚されるものは普通なら一般人と変わらないか、せいぜいが騎士などの存在が精一杯のはずが、出てきたおっさんは普通なのに普通じゃなかった。神に等しいもの達ですら一撃で喰われ、レイルにとって、いやこの世界で最高最強のミカエリスとルシフェレスですら相手にならない魔神相手に蹴りとばす。
そこであらためて、レイル達は男に説明した。復活した魔王を倒したこと、そして新たな脅威の魔神の復活を知り討伐に来たこと。
最高戦力の召喚獣達ですら一撃で喰われてしまったこと。
一通り話し終わると今度は男について聞いてきた。
「そうだな、レティの初代勇者の元護衛かな」
男・・・名を夜月、只の人間にしか過ぎない。才能も何もなくレヴィリアースに生まれた普通の子供でしかなかった。ただ、生まれた時と場所が悪く魔神が神と戦い喰らった地のそばにおり、神が最後に魔神を世界から追放した際に周囲の土地と一緒に狭間に封印された人間達の最後の一人。
「あの時の人間達の生き残りか?あれから幾億の時が過ぎたが人の子が生きているとはな」
「おかげさまでな、レティに護衛として召喚された数年以外は狭間に封印されたが修行する時間はあったからな」
魔神がその姿を変えていく、あらゆるものに似た姿でありなからなにものにも似て無い姿、これこそが魔神の本性。刻々と姿を変えていく。
総てを喰らい尽くす殲滅の唯一神。
この世界ガーネットを創世した魔神の目的は総てを喰らい尽くす。その目的に立ちはだかると認め、神にすら見せなかった本性と全力を只一人の人間に見せる。
「さて、俺もやるか」
一振の剣を鞘から抜き放つ。何の装飾もない長剣、ただ美しい輝きのみがその剣の素晴らしさを表す。
〈星剣エストレージャ〉
初代勇者レティシアが佩いた剣。魔王封印後はその行方は不明とされていた。
「魅せてやるよ。唯一名をつけた技を」
光が閃く。
「極光」
総てを喰らい尽くす殲滅の唯一神はその姿を消した。何の抵抗も言葉もなく消滅する。あまりにも呆気ない最後。
その場にいる全員がその美しい軌跡に魅せられ、魔神が消滅したことにすら初めは気づかなかった。
「これで終わりか」
その言葉にやっと周囲も状況を飲み込んだ。あらゆるものを喰らう魔神が只のおっさんに倒された。
それはそのおっさんが神殺しを成したということ。
少しでも気になれば評価でも感想でもよろしくお願いします。