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微力説

 ここバツィランドに来てから驚かされた事は、生活様式とか文化とかよりまず先に内戦が始まった原因だ。

 その原因というのは伝統の継承を王子が拒否したことに端を発している。更に詳しく言うと王子が拒否したというのが王家代々伝わる髪型らしい。

 俺も現国王の写真を見たが、あの髪型は凄かった。何と言うかオブジェ感があると言うか、重力が仕事をしていないと言うか・・・とにかくセットに何時間掛かるんだよってくらいすげぇ髪型だった。確かにこれは拒否りたくもなるわ・・・

 だが、そんなくだらない理由で殺し合いをし、たくさんの命が失われているのだから世の中というものは恐ろしいものだ。

 まあ、大した理由もなくその殺し合いに加わっている俺も大概だが・・・


 ルキは一つ息を吐くと格納庫内に目を向けた。

 そこでは整備員達が愛機のJF-17を急ピッチで組立てている。

「やっぱりここにいたか。」

 壁によりかかるルキの横からヒロアキが声を掛ける。

「ヒロアキか・・・どうした?」

「ブリーフィングだ。」

「ブリーフィング?俺の機体はあの状態だぞ?」

 今まさに主翼が取り付けられようとしているJF-17を顎で示す。

「大丈夫。代車を借りた。」

 ヒロアキは親指を立て、駐機場でスタンバイしているMiG-29に向けた。

「新しい機体のテストに付き合ってくれよ。」

「わかったよ。」

 ニヤリと笑うヒロアキにつられ、ルキも微笑みを浮かべた。


「シーニーリーダー、グリズリー、離陸を許可する。」

 管制塔から指示が出され、滑走路上で待機していたヒロアキのF-2とグリルズの乗るMiG-29が轟音とともに走り出す。

「ウシャンカ、ケチャップウサギ、ランウェイで待機せよ。」

「了解。ランウェイで待機する。」

 ルキは管制塔の指示に復唱をすると借り物のMiG-29を前進させ、フィオナの乗るF-16とともに滑走路に侵入した。

 ちなみにメイブは管制室で今回の訓練の監視をしている。

「行ってきまーす!」

 ヒロアキの楽しそうな声がし滑走路上空に目を向けると、F-2とMiG-29が低空のまま左に急旋回していくのが見えた。

「無茶しやがって・・・」

 ぼやきながら機体を停止させ離陸許可を待つ。

「ウシャンカ、ケチャップウサギ、離陸を許可する。」

「ウシャンカ、離陸する。」

 ルキはそう言ってスロットルレバーを押し上げた。

 するとMiG-29は加速を始め、Gによって身体がシートに押さえつけられる。

「ついて来なさい。ロシア帽。」

 ギアが地面から離れる瞬間に通信が入り、ミラーを見ると後方でF-16が垂直に上昇していた。

「上等!」

 ルキは口元に笑みを浮かべると操縦桿を引き、フィオナの後を追った。


「この間の続きをしない?」

 高高度で水平飛行に移るとフィオナが提案した。

「断る。借り物の機体まで壊したくない。」

「あれは急減速したアンタが悪いんでしょ。」

 勝負の申し入れを即答で断ったルキにフィオナは反論した。

「戦闘行為にどっちが悪いとかないだろう。」

 ルキは溜息混じりに正論を放つ。

「う、うるさいわね!とにかく、私はあなたと決着をつけないと気がすまないの!」

 正論によってフィオナの言葉に動揺がうっすら混じる。

「じゃあ、尚更今日はダメだ。」

「なんでよ?」

「今乗ってるのは愛機じゃなくて代車だ。つまり俺は万全の状態じゃない。」

 ルキが微妙に力の入った説明をする。

「・・・まあ、それもそうね。わかったわ。勝負はまた今度にしましょう。」

 少しの思考の後、フィオナはルキの微力説に納得した。

「わかって頂けて光栄だ。」

「ウシャンカ、ケチャップウサギ、機動テストが終わったら。直ちに合流。今回のテストは出来るだけ詰めたい。」

 ヒロアキから無線で指示と要望が入る。

「ウシャンカ、了解。ケチャップウサギ、機動テストだ。ついて来い。」

 そう言ってルキは機体を反転させ、急降下を開始した。

「望むところよ。」

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