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ケチャップウサギ

 窮屈なミサイル基地破壊からの帰り道、ヒロアキのF-16とメイブのタイフーンは白い尾を引く四発の対空ミサイルとすれ違った。

「こちらグリズリー、掩護するで。」

「お疲れ様。」

 グリルズとルキから労いの通信が入る。

 どうやらミサイルを放ったのはこの二人らしい。

 そして、MiG-29とJF-17が前方から真横を通り抜けていく。

「グリズリー、新しい機体か?」

 グリルズが乗っているであろうMiG-29にヒロアキが問いかける。

「代車やで。」

「敵は相当お怒りらしい。さらに二十の機影が接近。交戦は禁止する。撤退を開始せよ。」

 空中管制機から新たな命令が付与される。

「了解。グリズリー、ウシャンカ、後方につけ。」


「注意!敵のレーダー照射を受けている。」

 作戦空域からもう少しで離脱という所で管制官からの警告とともに警報装置がけたたましく鳴り響く。

「追いつかれましたわね。」

 平静を装うメイブだが、その口調からはどことなく緊張が見え隠れしている。

「各機、散開して作戦空域を離脱せよ。」

「もう一度言うが、交戦はするな。」

 指示を出すヒロアキに念を押す管制官。

 そして、ルキは僚機の進路を見極めつつ編隊から離れていった。


「ロシア帽は居るか?私と勝負しろ!」

 敵機のものと思われる女の声が混線してくる。

 ロシア帽?

 確かにルキの機体の垂直尾翼にはTACネームであるウシャンカ(ロシア帽)のイラストが入っているが・・・

「・・・。」

「機体番号776!居るのか!?」

「・・・え?俺!?」

 沈黙を決め込み様子を見ていたルキだったが、機首に書かれた番号を名指しされうっかり反応してしまう。

「やっぱり居た!私と勝負しなさい!」

「・・・いやです。」

 少し間を開けたルキだったが率直に述べる。

「何ですって!?勝負から逃げようっていうの!?」

 なおも女はまくし立てる。

「あー、交戦せずに帰ってこいをわれてんだ。だからまた今度な。」

「な・・・!・・・見てなさい。」

 その言葉を最後に女は沈黙した。


「シーニー小隊、敵戦闘機が一機貴隊を追尾している。」

 帰還コースに入った直後、管制官から通信が入る。

「どうやらウシャンカに気があるらしい。」

「そいつは羨ましい。」

 ヒロアキが茶化すと管制官はそれに乗っかり鼻で笑った。

「勝負しなさい。ロシア帽。」

「・・・。」

「ウシャンカ、レディーがお呼びだ。」

 無視を決め込むルキに管制官が呼び掛ける。

「・・・さっきも言った筈だ。勝負はしない。防空ミサイルが飛んでくる前に引き返せ。」

 迷惑そうに意思を表明する。

「なら、防空ミサイルが来る前に勝負しなさい。もしかして、一騎討ちを申し込んでる相手を見殺しにする気?」

「レディーがここまで申していますのよ。無下にするのは無粋ですわ。」

「これはもう逃げられまへんで。」

「ウシャンカ、相手してやれよ。」

「お前ら何敵の肩持ってんだよ!?ポラリス、こいつらに何とか言ってくれ!」

 四面楚歌状態のルキは管制官に助けを求めた。

「了解した。シーニーリーダー、グリズリー、アールグレイの三名は手を出すな。ウシャンカ、単機での交戦を許可する。」

 そして、あっさり梯子を外され完全なる四面楚歌となる。

「わかったよ。やりゃあいいんだろ?」

 ルキは天を仰ぎ全てを諦めたように言うとJF-17を一八〇度旋回させた。


 両機がすれ違う。

 相手はF/A-18。垂直尾翼を見て自分が狙われることに納得した。

 口元を血に染めたウサギが描かれている。

 グリルズ救出作戦のときに撃墜した機体にも同じ物が描かれていた。


 追いつ追われつ複雑な軌道を描く二機。

 シーニー小隊のその他三機は周囲を大きく旋回しながら、一騎討ちを特等席で観戦している。

 

 何度目かの急激な旋回の後、JF-17のコクピットに警告音が響く。

 ルキがルームミラーを確認すると、そこにはF/A-18が映っている。

「私の勝ちね。」

 女が勝ち誇ったように言う。

「・・・ここだ!ギアダウン。」

 しかし、ルキはタイミングを見計らいランディングギアレバーを下げた。

 するとモーター音とともに格納されていたギアが展開し、空気抵抗の増大によって急激に速度が落ちる。

 そして、一気にF/A-18の後方に・・・つく筈が機体全体に衝撃が走り激しい振動がルキを襲う。

「ちょっと!何すんのよ!」

 どうやらF/A-18が追突したようだ。

「こっちのセリフだ!ケチャップウサギ!」

「何ですって!」

 怒鳴り合いをしている間に推力を失った機体がバランスを崩し降下を始める。

「ウシャンカ、機体損傷。ベイルアウトする。」

 ルキはコールし両手で足の間にある脱出レバーを思い切り引いた。

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