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「・・・朝か。」

 一人用の簡易テントの中で目を覚ましたグリルズ。

 眠い目をこすりながら身体を起こしテントを出ると、森の木々の隙間から見える昇ったばかりの太陽がグリルズを照らしスキンヘッドをより輝かせた。

「良い天気やな。」

 そう呟くと固形燃料を使って湯を沸かしコーヒーを入れる。

 山岳地帯に存在するこの森は幾分か標高が高く、普段目にするジャングルとは違って害虫も少なく湿度も低い為非常に快適だ。

「まあ、この状況じゃなければ最高なんやけど・・・」

 グリルズはそうぼやくと湯気の沸き立つ入れたてのコーヒーをすすった。


 その頃、シーニー小隊のいるヌンソーン航空基地ではブリーフィングが開かれていた。

「あれ、グリルズは?」

 数十人のパイロット達がひしめくブリーフィングルームの後方で、巨漢のスキンヘッドを探し視線を左右に向けるルキが聞く。

「昨日の偵察任務で撃墜されたらしいよ。」

 前方のスクリーンに注目したままヒロアキが答える。

「は!?」

 ルキが驚き隣のヒロアキを見る。

「知りませんの?」

 ヒロアキの逆隣りに立つメイブは怪訝な顔をした。

「今知った・・・」

「・・・あ、言うの忘れてた。」

 唖然とするルキに対し、ヒロアキは思い出したように言う。

 次の瞬間、ルキは左手でヒロアキの胸ぐらを掴み右手の指二本で眼鏡を眼球に押し付けていた。

「てんめぇー、あれほど情報伝達しっかりやれと言っただろうがぁ!」

「昨日は色々忙しかったんだよ。てゆうか眼鏡に指紋をつけるな。」

「静粛に!」

 いつの間にかスクリーン脇に立っていた中年の参謀が声を張る。すると、ざわついていた室内が一気に静まり返った。

「では、これより昨日、敵領内において撃墜されたグリルズの救出活動に関するブリーフィングを実施する。」


 山岳地帯の街道を前進する政府軍所属の装甲車が四輌。

 それを崖の上から不敵な面構えで見下ろすグリルズ。

 その風体は完全に敵側の強キャラである。

「敵の捜索がここまで来はったか・・・お?」

 グリルズの頭上にジェットエンジンの爆音が降り注ぐ。


「こちら空中管制機ポラリス、作戦空域に入った。警戒を厳にせよ。」

 戦闘機隊に随伴してきた空中管制機から指示が飛ぶ。

「グリルズ一人の為にこの戦力を持ち込むとは・・・」

 大編隊を構成する数十機の戦闘機を見てルキが呟く。

「それほどやばい物を見てきたってことだろう。」

 呟きにヒロアキが答える。

 シーニー隊が組み込まれた大編隊の任務は、山岳地帯の制空権の確保とグリルズを救出するヘリ隊の護衛だ。

「レーダー照射!ミサイル接近、回避!」

 管制官が叫ぶ。同時に三機が機体から激しく燃焼するフレアとチャフをばらまき、編隊が蜘蛛の子を散らすように散開する。

「敵も大編隊を繰り出してきたようだ。交戦を許可する。」

「よほど見られちゃまずい物がこの先にありますのね。」

「らしいな。」

「とにかく、うるさい蠅どもを追い払おう。」

 ヒロアキのF-16を先頭にJF-17とタイフーンがあらかじめ指定された空域に向かう。


「こちらグリズリー、ピックアップポイントに到着。追手が近いで。」

「了解。現在、攻撃ヘリとともに救出部隊が急行中。どうにか持ちこたえてくれ。」

「グリズリー、了解やで。」

 空中管制機とのやり取りの直後、無線から銃声が響く。

「おい、野郎銃撃戦をおっぱじめやがったぞ。」

「まあ、彼なら問題はないでしょう。」

 呆れたように呟くルキに対し、涼しそうに言い放つメイブ。

「戦闘機隊、ヘリに敵を近づけるな。・・・シーニー隊、前方より敵機接近。注意!」

「了解。シーニー隊、散開!」

 通報を受けたヒロアキが小隊に指示を出す。


「ん?」

 分散し単機になったルキの前方に黒い点が出現する。

「・・・っ!」

 瞬時にその点が何かを察したルキは操縦桿のトリガーを引き、機関銃弾をばらまいた。

 点は一瞬にして敵の戦闘攻撃機F/A-18を形作り、後方にすっ飛んでいく。すれ違う瞬間、口元を血に染めたポップなウサギのエンブレムが描かれた垂直尾翼が目に入る。

 ルームミラーを確認すると機銃弾が命中したのかF/A-18は黒煙を噴いており、まもなくパイロットが脱出した。

「ウシャンカ、一機撃墜。」

「ナイスキル!」

 管制官の発表にどこからともなく賞賛のコールが飛ぶ。

「こちらドール、ピックアップポイント付近に到着。救出部隊を掩護する。」

「こちらポラリス、了解した。フレンドリーファイアに注意せよ。」

 攻撃ヘリからの報告に管制官が淡々と答える。

「こちらバリー、グリズリーを収容した。怪我や衰弱等は見られない。これより離脱する。」

「バリー、こちらシーニーリーダー、小隊を代表して感謝する。ありがとう。」

 ヒロアキが救助ヘリに礼を入れる。

「礼には及ばん。これが我々の本業だ。」


 そして、そのままヘリ隊は問題なく離脱。その後、制空権を確保していた戦闘機隊にも撤退命令が出されるのであった。

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