はい、お前UNOって言ってない
「どっちを出すかな・・・」
ルキが神妙な顔つきで手札を吟味する。
目の前には山札と捨て札が乗ったテーブルと、それを囲むヒロアキ、グリルズ、メイブ。
本日、シーニー小隊の四人はスクランブル待機についており、いつかかるやも知れない緊急発進に備えつつUNOに興じていた。
「リバース。」
ルキはそう宣言し、相反する方向を指し示す矢印の描かれた青いカードをテーブルの上に弾き出した。
「はあ!?そういうことする?もう三回目なんだけど。」
隣で自分の番を今か今かと待ち望んでいたであろう大量の手札を持つヒロアキが嘆く。しかし、眼鏡の奥の瞳は楽しそうに笑っている。
「んなこと言ったってこれしか出せるのがなかったんだよ。」
ルキがうるさそうに突っぱねる。
「ルキさん、UNOって言ってまへんで。」
巨漢のスキンヘッド、グリルズが指摘する。
ルキの手札は残り一枚だ。
「あ・・・」
ルキが固まる。
「ざまぁ。」
「クソ・・・っ!」
ヒロアキの煽りに舌打ちをしながら山札からカードを二枚引く。
「油断大敵ですわね。」
その様子を見て細身で小柄な金髪美女のメイブがクスクス笑う。
その楽しそうな雰囲気をホットスクランブルを知らせるベルが破壊する。
弾かれたようにカードを放り出し、部屋を飛び出す四人。
外に出るとそれぞれの愛機に向かって全力疾走し、コクピットに飛び込むとエンジンを起動する。
そして、誘導員と管制塔の指示の元F-16、JF-17、グリペン、タイフーンの四機が爆音を轟かせながら滑走路から青い空に駆け上がっていく。
「対象は当基地に対する襲撃を企図した敵攻撃機隊と見積もられる。」
離陸後、通信司令室から詳細な情報が伝えられる。
本来なら未確認機を肉眼で確認するのだが、敵方から八機ずつの編隊が複数こちらに向かっているとあれば敵と判断するのはごく自然なことだ。
「現在、バックアップが発進中。シーニー小隊はアクティブミサイルを発射後、離脱を実施。」
「シーニーリーダー、了解。」
小隊長の肩書きを持つヒロアキが返答する。
「ミサイルの射程圏内に入った。シーニー小隊、攻撃を許可する。」
敵との距離をカウントしていた管制官が告げる。
「シーニーリーダー、了解。全機、FOX3。」
「ウシャンカ、FOX3。」
「グリズリー、FOX3。」
「アールグレイ、FOX3。」
ヒロアキの指示の元、ルキからメイブがTACネームとともにコールし、操縦桿の発射スイッチを押す。
傘型編隊を組む四機からそれぞれ二発ずつ発射されたレーダー誘導ミサイルが白い尾を引いて飛んでいく。
「よし、お返しが来る前に散開して進路を転身。」
ヒロアキのF-16が急降下を始めたのを皮切りに編隊が散っていく。
「楽な仕事だ。というか、こうも楽で良いのかね?」
ルキが編隊から離れながらぼやく。
「現代戦はこういうもんでっせ。」
「早く戻ってカードゲームの続きを致しましょう。」
正論を言うグリルズに先を見据えるメイブ。
「いや、まだ帰還命令出てないからな。」
そして、現実に引き戻すヒロアキ。
こちらへ向かっているバックアップがさらにバックアップを必要とする可能性を見据え、シーニー小隊には上空待機の任務が付与されていた。
その後、到着したバックアップは無事任務を遂行し、帰還命令が出されたシーニー小隊は再びUNOの待つ待機室に戻るのであった。