脳出血後のリハビリ習作・400字詰め原稿用紙1枚で何が書けるか(43)
脳出血後の失語症状リハビリとして、400字詰め原稿用紙(+α)に手書きしていたものです。
恥ずかしいミスがあってもそのままテキスト化しているので、誤字脱字やオチ不明等はご容赦を。
なお、リハビリは現在も継続中です。
一月四日執筆
三題:過疎、巨大、インターフォン。
『食べ物を戴きに来ました』
過疎村に引っ越して初めての正月は、正直に言って地獄だった。都会と田舎の差を舐めていたせいだ。
まず、正月に食べるおせちの算段を間違えた。二軒しかない料理屋は、三日になっても空かないままだ。二日から仕事をすると言っていたくせに、玄関のインターフォンを鳴らしてもなしのつぶて。近所の村人たちも出て来なかった。
「都会では、元旦から仕事するのが当たり前なんですよ」
大晦日に料理屋で話したことを後悔した。きっと、村を馬鹿にしてしまった私を無視しているのだろう。だが、風習を知らないという理由で、無視をされてはたまらない。
結局私は、無視している人々への対応を諦め、村長の屋敷に向かった。
「すみません! 食べる物がないんですけどっ!」
何度呼んでも、誰も出て来ない。またも私は無視されたらしい。いい加減腹が立ち、無理を承知で屋敷に突入した。
「………………あ」
人々はいなかった。巨大熊に食われている肉塊があるだけだ。
たしかに、私は都会と田舎の差を舐めていた。
だが、少なくとも田舎の巨大熊は、私を無視などしないだろう。
(終わり)