衣食足りて礼節を知る
ハリーくんの発言を、苦笑いでスルーして水を運ぶ
台所で、大きな鍋を見つけていたので、湯を沸かしたい
「お湯を沸かしたいのですが?」
「ここです」
何かをシュッとして、ぽっと火がつき
その火が、小さな炎となって連なって、かまどのような物ができた
『きれい、だな』
大きな鍋に水を入れて、湯を沸かしながら
調味料を探す事にした
まぁ、塩と砂糖だな
求める物は経口補水液だ
『あった!』
このザラザラ感、
しかもふたつ、バラバラに置いてある
少しだけ舐めて確認する
危ない物ではなくてよかった
塩と砂糖だな
塩少なめ、お砂糖は少しテキトー
沸いてる湯に入れて…冷ます
味を見ますよ
「くう」
声出ました
味覚なんてどうでもいいけど、 染み渡るなー
ただの水より浸透圧の関係で、体に優しそう
糖分は脳味噌の餌
興味深そうな2人に差し出す
「飲んでみる?」
喉を鳴らして飲む、男の子たちは可愛い
甘味に飢えてた昔の子みたい
みんなにもっていうほど親しい間柄ではないが、持っていってやろう
コップもあるし
思いの外時間が過ぎてたようで
「遅い!」
フェルトさんの叱責
でも、お前出てくんなよ、ダリウス
何睨んでんねん、鬱陶しい
「お待たせして、申し訳ありません
ステキなお庭を見つけてしまって」
と、さりげなく友好的に
「皆さんの分もありますよ、お飲みになってみますか?経口補水液」
「ケーコー?」
「白湯に砂糖と塩を入れて、身体に優しい飲み物にしてみました
毒見は…飲んでみますね」
コクコクコク、プハー
『ああ美味し』
「というわけで、いかがですか?」
「私ももう一杯飲んでいいですか?
「…あ、あの、できれば私も…」
ハリーくんもハンスくんも、いい子だね
試食品販売の人になった気分だよ
「どうぞ」
あら、美味しそうに飲むこと
「さて、どうします?」
沈黙か
どっちでもいいや
「いただこうか…」
フェルトさん、何その諦めたような顔
男は度胸、ファイト一発、フェルト一発?フェルト様
毒を食らわば皿までさ
いや、毒じゃねーし
「これは…なかなか」
どーもです
「お口汚しですが」
「ふん!逃げ出したかと思えば
こんな物を作って、媚びへつらっても、お前のことは、誰も信用しない!」
「うるせーな」
心の声が出ちゃったよ
でも、ダリウスめ…
「どこに逃げるって?
これ自身が、わたしの最強の檻だろうが?違うか?」
小さい胸に人差し指を向けて言う
「わたしが何を信じてると思う?ここにある、記憶だけだ」
アホみたいなピンクの頭を指して言う
「数学とか、経口補水液の作り方とかな
だから、お前がどれだけ正義を振りかざして、この身体の元の持ち主を責めて悦に入ろうとしても
そんな事は、知った事じゃねー!」
ダリウスが、怒りで顔を赤くしているが止めようもなく…
「…ベス?お腹空いてるの?」
ハリーくん、当たり…でも今は言ってほしくなかった
「ほほぉ…前の性別は男か?」
『女じゃ!ボ○』
と叫びたい気持ちを抑え
「フェルト様、残念ながら女性だったようです」
「そうなのか?…それはまた…」
下品で悪かったな
ダリウスもフェルトも
ハゲ散らかればいい