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エベス的とりかえばやの始まり その1
「お前ら如きに、我らの思いは理解できぬ!」
と、ジェミニの妹王は叫ぶ
被せるように
「できない」
と、エベスは応える
「同情される為に来たのか?
協力を求めて来たのか?」
と、
「それとも、我が『自治区』を蹂躙する為に来たのか?」
と、
「残念だが、力及ばずか?」
真っ直ぐに見つめるエベスの瞳に、ジェミニの妹王は…
「お願いだ!兄の…兄の髪を…!!」
泣き崩れる妹王の
その後は、言葉にならない嗚咽が漏れる
「…(ララ)…」
と、兄王は、死を覚悟した自分を少しだけ恥じた
そして、ひれ伏す
「…願いを…叶えては頂けないだろうか…」
と
エベスは、悪そうに笑う
「暫し、時間を…」
と、言う
このまま、待たされるのかと思いきや
「まあ、気楽に座っとけや」
と、妖精エベスが2人の回りを飛び、促す
立ち上がり、促された場所に座ると
その瞬間、2人は微妙な形の繭で包まれていく
ひとつの形に繋がりそうで、繋がらず
ふたつに分かれそうで分かれない、そんな形の繭だ
『とりあえず、寛いでいてな?』
と、いうエベスの労いの声が遠くで聞こえた
気付くとそこは、湯殿だった




