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αは面白い その2
その場にいた者たちは、エベスの次の言葉を黙って待つ
「そうだが?」
と、こともなげに、エベスは答える
そして、続ける
「ただ、『婚約者』がいるので、断ろうと思うけどな!」
と、強めにエベスは言い切った
「なので、普通に『ルイ』と、結婚するつもりだと、応えようと思う」
「ううぅ…」
呻き声なのか、何なのか
野太い男性の声が響く
そのあまりの大きさに、皆がその方向を見た
泣いている
酷薄βが、男泣きなのか何なのか
αに傅いて泣いている
…αが、一瞬呆然としたのだが、βの男泣きにすぐに気付いて宥めている
『『へ⁈』』
と、その場にいた者は思う
「おかんやなくて、乳母かい?」
ピンクは、声に出すつもりはなかった
『…そっちですか?』
と、レッドは突っ込みを扇で隠し、動揺を抑えた
グリーンは『エベス様、考え直して…』と思い
シルバーは、目を閉じた『エベス様…しゅみわ(る)』と言いそうになり
口を覆った
『『ギリギリギリギリ…』』
歯噛みする音にいち早く自ら気付いたダリウスは
それでもなお続く、その嫉妬の音に驚いて視線を移す
元廃嫡王子であった




