636/725
此処にいるものへのケアと共に
「嫌なものを見せてしまいましたね」
と、ヨミは言い
「ムク、温かいものを…」
と、伝える
「はい」
と、無表情なムクが少し表情を緩めた
飲み物は、それぞれの体感に応じて、熱過ぎず、
かといって物足りないようなぬるさではなく美味しいものを
そして、ひざ掛けと包まる事の出来る毛布を用意した
ムクの心ばかりのもてなしは、本来持っている気配りと
他の人を見る目があっての事だが、前世では有効活用されなかっようだ
ひとりひとりが、このような状況でも
「「ありがとうございます」」と、伝えてくる
『…あ…』
と、何かを思い出しそうになるムクだったが、ただ、遠くを見つめた
懐かしく、情けなく…痛みを伴う思い…
ムクは、それを飲み込む
言葉は、まだ返す事はない




