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スコーピオの女王 その2
それはとても、昔の話
友人を踏み潰した勇者に
『お前、それはないだろう‼︎』
と、普通に思った、スコーピオの女王に罪はない
「その足を、どけて」
と、伝えたかった
勇者に、踏み潰された蟹は
スコーピオの女王の友人であり
体格的には大きかったが
柔らかな心根を持つ、蟹であった
「おお!我は、皆が恐れる大蟹と
毒持つ蠍を、一挙に倒す機会に恵まれた」
誇らしげに、大声で語る(誰が聞いているのだろう)
「我こそは勇者…」
『喧しい』
ほんの少し、毒のある
尻尾の棘に
力を込めたのは意識している
しかし、
彼女と同じ様に踏み潰される気は無かった
勇者は、蠍の毒も知らず踏み潰そうとし、勝手に我らの毒を踏み潰し
亡くなった




