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(ダリウスめ)
それは、とても野太く
元歌の方とは全く違う歌声だった
「私…その歌を鼻歌で…?」
と、告げながら
エベスは土下座したい思いになって、崩れ落ちた
ダリウスが駆け寄り
「エベス様、御不快な思いをさせて申し訳ない‼︎」
と、叫ぶ
これは、何処に何を謝罪したら良いのか分からないまま
エベスは混乱していた
「…素晴らしい、素晴らしいのです」
『あの歌』を、この世界で歌える人がいて…とても嬉しい
でも…
込み上げてくる思いに、エベスは涙を流す
元の世界に戻りたいのか
懐かしいだけなのか
この曲の恒久の美しさに、流れる涙なのか
エベスは分からない
そう思うと、笑える
その、泣き笑いの中
(それなら…あの歌も…)
と、エベスは笑う




